水中探検家・伊左治のフツーではないダイビングガイド(第3回)

メキシコ・セノーテ:水中探検家・伊左治のフツーではないダイビングガイド

さて、みんな大好きメキシコ、セノーテ!
日本人の方は本当にセノーテが大好き。

私にケーブトレーニングを受講しに来ていただく方の半数は、「セノーテで潜るのが目標です!」とおっしゃいます。

それに対して細かいことを言うとややこしい男になるので、「そうですね!頑張りましょう!」と返事をしてきたわけだが、これまでずーーっともやもやしてきた。
せっかくなのでここでぶちまけようと思う。

セノーテは、いっぱい種類があるねん!!

そう、「セノーテに行きたい!」というのは、実際には「沖縄でダイビングしたい!」くらいの解像度のことしか言っていない。

せっかくなのでセノーテの基礎知識と、なかなか他ではネットに落ちていないような知識を提供しようかと思う。

セノーテとは特定エリアの
「泉」全般を指す言葉

まず、セノーテというのは、ざっくり言うとメキシコのユカタン半島という石灰岩の地層のエリアにできた、陥没穴に地下水が溜まった「泉」のことである。

セノーテ

セノーテ

石灰岩の地層なので地下には元々鍾乳洞があり、それが過去の地盤沈下によって水没し、その水没した鍾乳洞同士が互いに地下水脈で複雑に結びついているというわけです。

セノーテの場所を示す地図。一部を切り取ったものだが、このエリアだけでもたくさんのセノーテが存在しており、それらは地下水脈で繋がっている

セノーテの場所を示す地図。一部を切り取ったものだが、このエリアだけでもたくさんのセノーテが存在しており、それらは地下水脈で繋がっている

このメキシコのユカタン半島の地下水脈は世界有数の大きさで、世界一位の長さの水中洞窟も、二位の長さの水中洞窟もこのメキシコのエリアに存在しており、ケーブダイビングのメッカとなっている。

2023年1月時点で、「Ox(オシュ) Bel(ベル) Ha()」というメキシコのTulum(トゥルム)の南側の水系が、調査された水中の総延長が、435.8㎞(約東京-京都間)で世界最長であり、Ox(オシュ) Bel(ベル) Ha()のすぐ北側のエリアにある「Sac(サク) Actun(アクトゥン)」という水系が世界で第二位の長さだ。

Ox(オシュ) Bel(ベル) Ha()に含まれるセノーテは「Mayan(マヤン) Blue(ブルー)」や「Naharon(ナハロン)」など日本人にあまり馴染みのないセノーテが多いけれど、Sac(サク) Actun(アクトゥン)にはセノーテが好きな人なら知っていそうな、「Dos(ドス) Ojos(オホス)」や「Pit(ピット)」などのセノーテが含まれている。
※これらに関する情報はWikipediaにも載っているが、古い情報のままになっているので注意!

開拓済みのセノーテと
未調査のセノーテと

これらの各セノーテは水中探検家たちによって探検され、また、彼らと地図作成者という役目の人たちによって各セノーテの地図が作られている。

セノーテ「タージマハ」の水中マップ

セノーテ「タージマハ」の水中マップ

メキシコの水中探検家として日本で知名度がある人はほとんどいないが、あえて言うならRazorの創始者のSteve(スティーブ) Bogaerts(ボガート)だろうか。

ちなみに、「Underwater Cave Survey」という水中マップ作成の講習もあるので興味がある方は私にお問合せをお願いします。

さて、上で名前があがったような「整備されて観光地化されたセノーテ」と、「現在調査中のセノーテ」、そして「まだ誰も内部に入っていないセノーテ」はそれぞれまったくの別物です。

エントリー口が整備され、美しい水を湛えるセノーテ「エデン」

エントリー口が整備され、美しい水を湛えるセノーテ「エデン」

現在測量中のセノーテ、「Mundo Escondido(ムンド エスコンディード)」。一般の人は入ることはできない。水は腐敗した落ち葉などの影響で茶色く濁っている

現在測量中のセノーテ、「Mundo Escondido(ムンド エスコンディード)」。一般の人は入ることはできない。水は腐敗した落ち葉などの影響で茶色く濁っている

探検がはじまったときの入り口。人ひとりが通れるだけの大きさしかない

探検がはじまったときの入り口。人ひとりが通れるだけの大きさしかない

セノーテの「カバーン」と「ケーブ」

さらに、「太陽光が入って洞光が見えるエリア(カバーン)」と「外光が入らないエリア(ケーブ)」、そしてケーブの中でも、人が頻繁に往来しているエリアと、だれも入っていないようなエリアはすべて別物だ。

カバーンエリア。美しい外光が差し込む

カバーンエリア。美しい外光が差し込む

ケーブエリア。ライトを消すと真の闇になる

ケーブエリア。ライトを消すと真の闇になる

ケーブエリアの中の誰も通っていない通路。このような場所では、天井に付着したシルト(粒子が細かく、粘土に近いような砂)が呼吸の泡によって降ってくることで、あっという間に視界が失われる。上の写真の靄のようなものがシルト

ケーブエリアの中の誰も通っていない通路。このような場所では、天井に付着したシルト(粒子が細かく、粘土に近いような砂)が呼吸の泡によって降ってくることで、あっという間に視界が失われる。上の写真の靄のようなものがシルト

さて、みなさんのいうセノーテはどのセノーテだろうか?

もちろん私が大好きなのは、まだ誰も内部に入っていないセノーテだ!

綺麗な、みんなが思い描くセノーテの写真と解説は、ネットにたくさん転がっているので是非そちらをご覧下さい(綺麗なセノーテが嫌いなわけじゃないよ!)。

というわけで、何回かにわたって、よく写真に上がっている外光の入るカバーンダイビングや、普通のケーブダイビング(普通とは言ってもケーブダイビングの資格を持っている最上級者ということになるが)ではあまりいかないセノーテを紹介しようと思う。

もちろん、完全なヴァージンケーブ(まったく誰も入っていないケーブのこと)ではないがお許しを。

インスタライブ

本連載ではインスタライブでみなさんの質問にもお答えしながら、記事で紹介したポイントのことや現地の様子を伊左治さんにお話しいただきます。
ぜひお楽しみに。

日時:8月23日(金)20時〜
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PROFILE
1988年に生まれ、12歳からダイビングをスタート。
冒険をライフワークとして求める中でテクニカルダイビングに出会い、水中探検に情熱を燃やすことに。
それ以来、水深80mを越える大深度から前人未踏の水中洞窟まで、多岐に渡る探検を実践。
現在では水中の未踏エリアの探検とともに、その現場経験を伝えることのできる唯一無二のテクニカルダイビングインストラクターとして指導にもあたっている。
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