串本の定番ポイント・グラスワールドは冬もやっぱりおもしろい!魚の群れや珍しいマクロ生物に会いに行こう

こんにちは。水中カメラマンの堀口です。
前回の記事でご紹介したABECUP2019(アベカップ2019)終了後、紀伊大島の須江から橋を渡ってすぐの串本町へ向かいました。

紀伊半島の先端に位置し本州最南端でもある串本町は、カツオの「ケンケン漁」発祥の地としても知られ、昔から漁業で栄えている町です。また、岩柱がそそり立つ橋杭岩(はしぐいいわ)も観光名所のひとつ。

夜の橋杭岩(撮影/堀口和重)

夜の橋杭岩(撮影/堀口和重)

海の中は、言わずと知れた関西を代表するダイビングのメッカ。

黒潮が直撃し、冬でも平均して水温が16~18度という、温帯と亜熱帯が入り混じった独特な海中景観が広がっています。

今回はそんな串本のメインポイントのひとつ「グラスワールド」に潜って来たので、その魅力をお伝えしたいと思います。

串本といえばこの海景!
テーブルサンゴとアザハタ

まずは、串本と言えばこれ!といった、特徴的な海景をご紹介します。
2016年11月、初めて串本の海を潜ったときの印象は、今でも忘れることができません。

ビーチポイントでは、本州にこんな場所があるのかというくらいの量のテーブルサンゴ

遠くまで広がるサンゴの群生の上には、さまざまな種類のチョウチョウウオの仲間の幼魚たちが元気よく泳ぎ回っていました。

串本のテーブルサンゴ

2016年に撮影した、ビーチポイントからのサンゴの群生(撮影/堀口和重)

ボートポイントでは、まるで串本の“主”かのような豪快な姿がかっこいいアザハタや、主を取り巻く魚たちのものすごい数の群れが心に残っています。

串本のアザハタ

ポイント「備前」で出会った、アザハタと小魚の群れ(撮影/堀口和重)

しかし、今回お世話になったマリンステージ串本店の谷口さんに話を聞いてみると、ここ数年は黒潮の蛇行の影響なのか冬場の水温も例年より低く、越冬できなかった魚も多いようで、全体的に魚種も少な目とのこと。

ブリーフィングでその話を聞いたときは、少し残念な気持ちになりました。

とはいえ、そこはポテンシャルの高い串本の海。
今シーズンは珍しい魚も流れてきているとのことで、当初の残念な気持ちを吹き飛ばすようなすごい世界が広がっていたのです。

今が楽しいグラスワールド

「グラスワールド」は港から船で約5分ぐらいで到着できるボートポイント。平均水深も15mほどと浅めで、初心者から上級者まで楽しめる、串本の定番ポイントです。

ブリーフィングでは、「今はアカヒメジやカゴカキダイがたくさんいる!」と谷口さん。
カゴカキダイは伊豆でもおなじみの魚ですが、アカヒメジは亜熱帯域に生息しており、伊豆にも流れてくることはありますが、数はそれほど多くはありません。

エントリーすると、カゴカキダイの群れがどっさりと泳いでおり、少ししたらアカヒメジの群れもやってきました。ブルーの海に黄色い魚は、写真に収めても最高な場面です。

串本のカゴカキダイ

ブルーの海に、黄色いカゴカキダイがよく映える(撮影/堀口和重)

また、浅場のソフトコーラルも美しく、上がり際まで目が離せません。

ビーチポイントではテーブルサンゴ、ボートポイントではソフトコーラルがどっさりといった風景も、串本の魅力ですね。また、同じエリアなのに、ポイントによってこんなに違うのかとも驚かされます。

串本のソフトコーラル

上がり際のソフトコーラルも美しい(撮影/堀口和重)

小さな生き物の観察もおもしろく、ソラスズメダイが泳ぎ回る中に1匹だけ混ざっているカンザシスズメダイの幼魚も紹介してもらいました。
こちらはとても珍しい魚です。

串本_カンザシスズメダイ幼魚

珍しいカンザシスズメダイの幼魚(撮影/堀口和重)

谷口さんも串本で見たのは久々のようで、前回出たのは3年前とのこと。わざわざこのカンザシスズメダイを見るために、神奈川から日帰りで来る人もいるそうです。当然私も、今回初めて見る魚でした。

また、クマドリなどを含めたカエルアンコウ類も数種類いる聞いていたのですが、今回の取材時は移動中だったようで、イロカエルアンコウのみの確認となりました。

そのイロカエルアンコウですが、とても小さくてかわいい個体。海藻の影などに隠れたりして探しづらい場所におり、ガイドさんなしでは見ることが困難です。

串本のイロカエルアンコウ

身を隠すようにしているイロカエルアンコウ(撮影/堀口和重)

取材時には会えませんでしたが、このほかにも、潮通しの良さからカンパチやツムブリなどの回遊魚が見られたりするそうです。

串本の海
冬から春の見どころは…?

これからの串本のお楽しみは、海藻類のケヤリ。

串本_ケヤリ_海藻

美しい花のような海藻ケヤリ(撮影/堀口和重)

このフサフサの毛が特徴的なケヤリが、「グラスワールド」のほか、「住崎」や「備前」といったポイントでどんどんと生え、増えてくるとのことです。この時期から少しずつ生え始め、7月ぐらいまで楽しめるとのこと。

串本_海藻_ケヤリ

色鮮やかな蛍光色がフォトジェニック(撮影/堀口和重)

ケヤリ自体分布域が狭いので、日本では紀伊半島や八丈島などで見られるのですが、海外ではニュージーランドなどでしか見ることのできない珍しい海藻です。

色もキレイでおもしろいので、ぜひ写真に収めてみてください。

ケヤリのほかにも谷口さんいわく、春に向けて、大型のミカドウミウシに付くウミウシカクレエビや、アヤニシキに乗るサガミアメフラシやクロヘリアメフラシ、アヤニシキの胞子放出など、マクロが楽しめるとのこと。また、カスザメとの遭遇率もアップするそうです。

串本には「グラスワールド」のほかにも、内海、外海とそれぞれ素晴らしいダイビングポイントがたくさんあります。

次はいつ出会えるかわからないというカンザシスズメダイの幼魚や、かわいいカエルアンコウの仲間たち、そして冬ならではの透明度がいい海を狙って、ぜひ串本に行ってみてはいかがでしょうか?

撮影協力/マリンステージ串本店

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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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