本当に“安全”な遊び?続けて起こる夏のシュノーケリング事故について考える

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毎年、夏になると必ずといっていいほど発生してしまう「シュノーケリング事故」。2022年もすでに続々とニュースになっている。ここでは実際に発生したシュノーケリング事故の事例と、シュノーケリング事故に遭わないための対策をご紹介。

事故事例

まずは、今夏発生したシュノーケリング事故の事例を見てみよう。

69歳女性死亡 鹿児島県瀬戸内町の海岸
7月1日午後1時ごろ、鹿児島県瀬戸内町西古見の海岸で、東京都町田市の女性(69)が海底に沈んでいるのを知人男性が見つけ、女性は搬送先の病院で死亡が確認された。死因は溺死の疑い。  古仁屋海上保安署と消防によると、女性は観光で訪れ、海岸の沖合20m、深さ2mの海中で知人男性とシュノーケリングをしていた。途中で見当たらなくなり、沈んでいるのを男性が見つけ、近くの岩場に引き上げた。ウエットスーツと水中マスク、フィンを着けていた。目立った外傷はなかった。

南日本新聞社

60歳男性死亡 沖縄県名護市の沖合
7月6日午前10時30分ごろ、沖縄県名護市の沖合に男性(60)がうつぶせで浮遊しているとマリンレジャーの関係者から118番通報があり、男性を引き揚げたが、死亡を確認。遺体はTシャツに水中マスク、シュノーケル、フィンを身に着けており、シュノーケリング中の事故の可能性があるとされている。利用していたレンタカーは、発見現場から直線距離で10キロ以上離れた恩納村の万座毛近くで見つかった。

中日スポーツ

67歳男性死亡 小笠原諸島・父島の海岸
6月30日午前9時10分ごろ、東京都小笠原村父島の海岸近くで、遊泳していた千葉市美浜区の男性(67)が溺れているのを島の住民が見つけ、小笠原海上保安署に通報した。男性は救助されたが、死亡が確認された。保安署によると、男性は1人でシュノーケリングに来ており、ライフジャケットは着用していなかった。当時の気温は29度で海は穏やかだったという。

産経新聞

過去には20代の事故も

福岡の海で男性2人が行方不明 シュノーケリング中に
2018年7月24日午後3時半ごろ、福岡市東区西戸崎の海岸で、キャンプをしていた男性から「シュノーケリングをしていた友人2人の姿が見えなくなった」と118番通報があった。福岡海上保安部などによると、行方不明になったのはともに大学生で、福岡県新宮町の槇本渉さん(22)と福岡市東区の江頭宏俊さん(21)。2人は、男女10人ほどのグループで沖合数百メートルにある岩場まで水上バイクで移動し、シュノーケリングをしていたとみられる。おぼれた江頭さんを数人が助けようとしていたが、その間に槇本さんの姿も見えなくなったという。

朝日新聞

では、なぜこのような悲しい事故が起こってしまうのだろうか。どうしたら減らすことができるのかを考えてみた。

気軽さの中の落とし穴。自然への無知識が招く事故

夏になると、やはり海で遊びたくなる。とはいえ、海水浴じゃ物足りない・・・。そんな時、一般的に“海で遊ぶスポーツ”として思い浮かぶものといえば、サーフィン、ダイビング、シュノーケリング、ジェットスキーなどだろう。そして、それらのスポーツの中でもお手軽に楽しめるということで、真っ先に頭に浮かんでくるのが「シュノーケリング」。

体力を使わなそう。どこでもできそう。道具さえ準備すればできる。お金も比較的かからない。資格もいらない。教えてもらわなくてもできそう。シュノーケリングは他のマリンスポーツと比べ、“お手軽”“安全”というイメージがあるのではないだろうか。

一般的に“とっつきやすい”マリンスポーツというイメージがあるシュノーケリング。

では、本当に“安全”なのだろうか?去年の警察庁による水難発生状況のデータを見てみよう。実は、ダイビングよりシュノーケリングの方が水難者が多いと出ている。

2021年 水難による死者・行方不明者の行為別数
シュノーケリング 20名
スキューバダイビング 8名
サーフィン 18名
その他 20名

令和3年における水難の概況(警察庁)

なぜこのようなデータになったかその理由を考えるときに、まず忘れてはいけないのが、シュノーケリングは“海などの自然の中で遊ぶアクティビティ”だということ。自然で遊ぶということは、それなりの「知識」と「準備」が必要なのだ。

シュノーケリングで事故が起こる原因は「知識」と「準備」不足?

シュノーケリングは、マスク・シュノーケル・フィンの3点セットで水面に浮かぶだけで誰でも水中世界を自由に体験できるスポーツ。極端にいえば、この「3点セット」と「シュノーケリング遊泳を許可している海」があればできる。しかし、海はプールと違い、毒のある水中生物もいるし、時によっては波もあるし、流れも起こる。そして、予想だにせぬ出来事に遭遇したときに、人は「パニック」に陥ることがある。パニックになり、そのまま力つきて溺れることも事故原因のひとつだ。

たとえば、「ライフジャケットを抜いた3点セットのみをつけてシュノーケリングを楽しんでいたら、気づかないうちに流れに巻き込まれていて、そのまま沖まで流され戻れなくてなり、パニックに陥り溺水」、という事例があったとする。もし「知識」を持ち、「準備」をしていたら?それぞれのケースを想像してみよう。

「知識」を持っていたら…
気づかないうちに流れに巻き込まれているとき、流れに対する知識があれば、流れが発生していることに早く気づけるかもしれないし、正しい方法で逃れられたかもしれない。
ダイバーなら知っておきたい離岸流とその対処法

「準備」をしていたら…
3点セットに加えて、浮力体(ウェットスーツまたはライフジャケット)を着用していたら、最悪、流されてパニックになったとしても浮いていることはできる。これは、海で遊ぶには非常に重要なこと。

このように、知識と準備があるとシュノーケリング事故を少しでも減らすことができるかもしれないのだ。海で遊ぶためのルールとマナーは、しっかりと心得ておく必要がある!

ルールとマナーを確認しよう!シュノーケリングを安全に楽しむための6か条

シュノーケリングを安全に楽しむためには、予期せぬトラブルへの対処や環境への配慮やなど、事前に知っておくべきことがある。特に安全に関わるルールは遵守しよう。

1. 必ずバディを組んで行動しよう

最低二人以上を単位として行動しよう。一人だけの場合、身につけている器材や体に思わぬトラブルが起こった場合に、対処が難しくなる。特にお子さんの場合は、大人が一緒にバディを組むようにしよう。

2. お酒・アルコールは厳禁

飲酒運転が危険なのと同じように、アルコールが入った状態でのシュノーケリング(磯遊び)もリスクが高くなる。何か起こった場合の判断や対処が鈍くなるため、「飲んだら海に入らない、海に入るなら飲まない」ことを徹底。

3. 遊泳区域の範囲を守ろう

海によっては、遊泳区域が決められていることも。ブイとロープで区切られた遊泳区域外は、流れがあったり、漁場になっていたりする。現地の海のルールを守り、シュノーケリングが許可されているところで遊ぼう。

4. ライフジャケットで浮力を確保しよう

シュノーケリングをする際は、基本的にライフジャケットやウェットスーツなどの浮力体を身につけることを強くおすすめする。特に、子どもや泳ぎに自信のない方は、マスト。これによって浮力が確保され、安定して水面に浮かんでいることができる。マスク・シュノーケル・フィンの3点セットに浮力体をプラスした4点セットを基本装備として覚えておこう。

5. 海のコンディションをよく見よう

ガイドと入らず、自分たちだけで入る場合は、必ず事前に情報収集を。まずは波がなく穏やかかどうかを確認。海況はほんの数十分で変わることもあるので、潮の流れや天候にも要注意。砂浜なのか砂利なのかなど、足場も要チェック。

6. 自然環境と生物を尊重しよう

海で遊ぶ際は、そこに息づく生物たちを尊重する気持ちをもとう。ごみは必ず持ち帰る、むやみに生物には触らないなど、自然環境への配慮を。思わぬけがをしたり、毒を持つ生物に接触してしまう可能性も。

7. 海のコンディションをよく見よう

ガイドと入るか、自分たちだけで入る場合は、必ず事前に情報収集を。まずは波がなく穏やかかどうかを確認。
海況はほんの数十分で変わることもあるので、潮の流れや天候にも要注意。砂浜なのか砂利なのかなど、足場も要チェック。

Attention!こんな場合はシュノーケリングを避けよう

どんなに楽しみにしていても、状況によってはシュノーケリングができない場合もある。そういう時は潔く中止し、日程変更、場所変更をするなどしよう。下記は、シュノーケリングを中止した方がいい場合の例。

1、海の状況が悪い

波が高く白波が立っていたり、潮の流れが速いときは、迷わず中止しよう。

2、シュノーケリングが禁止されている

シュノーケリングが禁止されている海水浴場では、もちろん禁止。

3、体調が悪く薬を服用している

体力を消耗しやすいほか、何か起こった場合の判断や対処が鈍くなる可能性が。

自然で遊ぶには準備が何より大事。万が一のときにそなえよう

シュノーケリングは自由性が高いスポーツ。海の世界を自由に楽しむのは本当に楽しい時間。それが悲しい思い出にならないように、何より大事なのは、まずはしっかりと準備をすること。何かが起こってからでは遅いので、何か起こらないように準備しておくことは、自然で遊ぶためには最低限のマナーと言える。正しく、そなえて、楽しくシュノーケリングしよう!

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