福田朋夏のフリーダイビングライフ(第1回)

[連載]フリーダイバー福田朋夏連載開始! 親子クジラと出会った日のこと

みなさん、はじめまして。フリーダイバーの福田朋夏です。今回からオーシャナさんで連載をスタートさせていただくことになりました。私の日々の生活の中で体験したこと、感じたことなどを毎月書いていけたらと思いますので、お付き合いいただけると嬉しいです。

福田朋夏

フリーダイビングと私のこと

何年も前になりますが、沖縄の海でスキューバダイビングをしている時に洞窟の中を何も付けずに素潜りしている人を見た時に、「あれ?もしかしてタンクいらないかも」と思い、さっそく次の日にタンクなしで潜ってみました。すると、スキューバダイビングで感じていた閉塞感が何もなく、海との一体感をより強く感じられたのと海の中の生物になったような感覚がありました。
それをきっかけに、「海の中に自分の力だけでもっと長く、もっと深く潜りたい!」水面から底が見えない海をみると、「その先に行ってみたい!」とワクワクするようになりました。

そのような体験を経て、2011年から本格的にフリーダイビングを始め、大会に出場したり、トレーニングするために世界中の海に潜ったりしてきました。そして現在は、沖縄を拠点にフリーダイビングをしています。

フリーダイビングの魅力は、深く潜った時に見られる自分だけの青い世界を堪能でき、海の中を魚のように自由自在に泳げること。陸にいると日々考え事をしてしまいますが、海に潜っている時は頭の中を空っぽにして、ひたすら海と自分の体に集中していく贅沢な時間です。

この時間が私は何よりも大好きです。

フリーダイビング

海に深く潜っていると地球と一体になったような、包まれているような、不思議な安心感があります。そんな感覚を一度味わってしまうと、「また海に潜りたい!」、「あの深い世界にまた行きたい!」とフリーダイビングの魅力にはまってしまうのです。深い海の世界を味わうためには、日々のトレーニングは欠かせませんが、頑張った先にある世界は本当に素晴らしいものです。

冬の沖縄の海中で
ザトウクジラの声に包まれる

先日も海へフリーダイビングのトレーニングにいきました。沖縄といえども冬は水温が低くなりトレーニングは寒く厳しいものになりますが、それでも冬の楽しみといえば、ザトウクジラのホエールソングを聞きながら海に潜ることです。クジラの声は水面では聞こえませんが、海に潜るとお腹に響くくらい大きく聞こえることもあるんです。このホエールソングを聞くと、今年も無事に沖縄の海に来てくれたんだなと、思わず嬉しくなります。

この日は「クオーン」という高い声と、「グゴゴゴゴー」という低い声が聞こえてきました。きっと親子クジラが何か話しながら側を泳いでいるんだな。もしかしたらクジラに遭遇できたりして…と想像しながら潜りました。残念ながらこの日は叶いませんでしたが、この声を聞いてからどうしてもクジラに会いたいという気持ちが抑えきれず、先日ホエールスイムに行ってきました。

クジラに会いにホエールスイムへ

今回お世話になったのは那覇から出港してホエールスイムができるバグースダイビングサービスさん。去年の冬もバグースさんにお世話になり、出港した途端に親子クジラとホエールスイムができたので、今回も期待大です!

那覇発のホエールスイムは、クジラに刺激やストレスを与えない様に泳いで追いかけたり、海に潜ったりしないことなど、きちんとルールが決められています。海の生物たちの暮らしを邪魔しないように海に入るのはとても大切なことですね。ちなみに、ロングフィンの使用も禁止されています。なので今回は私も久々に普通の長さのフィンを履きました。普通のフィンって履きやすいですね。いつもはモノフィンやロングフィンみたいな少しクセのあるフィンばかり履いているのでちょっと感動しました。

フィン

この日はあいにくの雨模様。海も結構荒れて白波も立っていたので、クジラを見つけるのも一苦労です。なんとかクジラを見つけて海に入ってみるも、クジラがいない…。

なかなかタイミングが合いません。

こんな日もあるよね…残念だけどまた次回に期待しようかな…と、諦めかけていたその時!やっと一緒に泳いでくれそうな親子クジラを発見!早速海に入りました。

親子クジラとの出会い

海の中を覗いてみると、私たちの真下にお母さんクジラがドーーーーン!

大きな体にはたくさんのコバンザメを着けています。休憩中なのか、お母さんクジラはずっと同じ場所に止まっていました。やっぱりクジラは貫禄があって神々しい…。人間ってなんてちっぽけなんだろう…クジラを見るといつも感じますね。

大きなお母さんの脇から、子クジラがこちらの様子を伺うように出てきました。子クジラにはまだフジツボが付着していなくて、お肌がツルツル。顔も何か笑っているみたいで、可愛い〜!!
子クジラといっても私たちより何倍も大きいのですが、こんなに体が大きくても子どもはやっぱり無邪気で愛らしく感じます。

写真:バグース 山口 直人さん

写真:バグース 山口 直人さん

流木のように水面にプカプカ浮いている私たちに子クジラは興味を持ってくれたようで、私たちの周りを泳いで、またお母さんの脇に戻ってを繰り返しています。子クジラからしてみたら、「何だこの浮いてる変なやつ?」って感じなのかな。

写真:東迎 高誉

写真:東迎 高誉

だんだん慣れてきた子クジラは私たちと距離をどんどん縮めて泳いできます。この近さでクジラを見られるなんて何という幸せ…。

子クジラちゃんありがとう!

その時の感動の映像がこちらです!
       ↓

動画 東迎 高誉
撮影機材 GoPro10

感動ですよね…!私は、何度もこの映像を見返してはニヤニヤしています。クジラは人を幸せにしますね。

ザトウクジラは冬に温かくて安全な沖縄近辺の海域で、繁殖や子育てをしに来ます。お母さんクジラが子どもを大切そうに世話をしている姿は、本当に心が温かくなります。来年はこの子クジラも大きくなってまた沖縄の海に帰ってきてくれるのかな?来年の冬も会えるのを楽しみにしています。

こちらのホエールスイムは3/21まで開催しているようなので、この感動を味わいたい方はぜひ参加してみてくださいね!

福田朋夏

取材協力:Bagus diving service

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PROFILE
2011年から本格的にトレーニングを始め、日本代表の『人魚JAPAN』の一員として金メダルを2回獲得。個人としても世界各国の大会で好成績を収め、メダルを獲得。
コンスタントウェイトウィズフィンと言うモノフィンを履いて自分の泳力のみで潜る競技ではケイマン諸島で-100mの記録を出す。
現在は沖縄を拠点にフリーダイビングをしている。
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