サイドマウントで変わる!? 5つの可能性
皆さん、クリスマスはいかが過ごされたでしょうか?
イルミネーションの明かりがとても綺麗でしたが、流行りの青いLEDは、綺麗なのですがちょっと寂しい感じもします。
やはりピンクや赤でハートをイメージさせる色がいいですね。
ハートといえば……、バレンタインデー!
あ、バレンタインデーまで2ヶ月を切りました!!
男性諸君! もう少しです!! 希望を胸にお互い頑張りましょう!
さて、このサイドマウント連載もいよいよあと2回となりました。
今回はサイドマウントの可能性についてお話させていただきますね。
もともとはテクニカルダイビングのペネトレーション(内部侵入)のために生まれたサイドマウントというスタイル。
それがオープンウォーターで使用されるようになったのは本当にごく最近のことです。
サイドマウントでは、水中や陸上での快適性、自由な使用方法、安全性の増大など、さまざまなメリットを感じることができると思います。
オープンウォーター環境でのサイドマウントは、それ独自の進化をしているといえるでしょう。
でも、サイドマウントの楽しみ方はレクリエーションダイビングのスタイルが変わるだけではありません。
私はいろんな可能性を秘めていると思います。
今回は、思いつくサイドマウントを生かした今後の可能性についてお話しいたしますね。
減圧ダイビング
サイドマウントダイビングの可能性として、大深度などの減圧ダイビングが挙げられます。
「サイドマウントはテクニカルダイビングから生まれたんだから、そんなの当たり前じゃん!」と思われるかもしれないですが、実は日本の環境を考慮すると、とても大きなメリットがあります。
皆さんはテクニカルダイビングにどのような印象を持たれますか?
バリバリ体育会系のごっついお兄さんでしょうか?
それともメカメカしたよくわからない器材で潜るイメージでしょうか?
いろいろな印象をもたれていると思いますが、一番大事なことはガス(空気やナイトロックス、トライミックスなど)をコントロールして潜るということ。
そして、大深度の減圧ダイビングでは、ガスも大量に必要とします。
皆さんはダブルタンクって見たことがありますか?
西伊豆の獅子浜や大瀬崎で潜っている方は何度か目にする機会があると思います。
このダブルタンク、2本の10~14L程(16L以上もあります!)のスクーバタンクを専用の金具で固定し、アイソレーターという管で2つのタンクを一つにします。
そのため、日本ではかなり特殊なタンクになり、置いてあるサービスはとても少ないです。
また個人で所有している方もいらっしゃいますが、それでもタンク持ち込み規制によって使用できるポイントが国内では限られてしまいます。
さて、ではちょっと話しを戻してみましょう。
ダブルタンクは10L以上のタンクを2本を固定する、と言いました。
タンク2本? そうなんです、サイドマウントも2本同じガスを使用しますよね。
つまり、ダブルタンクの代わりにサイドマウントのシングルタンク2本で、減圧ダイビングが可能になるのです。
減圧ダイビングはガスマネージメントを重要視します。
深度にあわせて多種多様のガスを準備しなければなりません。
(使用するガスに併せて複数のタンクを使用します)
現在、サービスによってはガスの調合は難しいでしょう。
それでも、例えば、基本的なトレーニングやコンフィグの調整などはできると思います。
これは潜ることができる場所が限られるテクニカルダイバーにとっては良い事ですよね。
また、サイドマウントを始めた方であれば、複数のレギュレーターの取り扱いやコンフィグレーションの作り方、基本的なスキルが身に付いているはずです。
そうすると、今まで難しく思えていたテクニカルダイビングも、より身近に感じてくると思います。
ただ、すべての大深度ダイビングにサイドマウントが適している訳ではありません。
例えば、水深100mクラスの減圧ダイビングになると、タンクは5~6本(プライマリータンク2本、デコタンク3~4本)は必要になります。
そうなると、使用するBCの選択、コンフィグレーション、水中での姿勢や抵抗など、それらをすべてコントロールしなければなりません。
場合によっては、かえってタンクに拘束され、自由に動けなくなる場合があります。
もちろん、個人差もあるでしょう。
そこで、以前もお話ししましたが、ダイバー自身が選択しなければなりません。
今回の大深度ダイビングにサイドマウントは向いているか否かを。
テクニカルダイビングは達成すべき目標があり、それに向けてさまざまなアプローチをします。
目標を達成する方法は一つではありません。
各自が考えなければなりません。
環境、チーム、ガスマネージメント、目的達成の為の知識、必要なスキル、そして使用する器材。
それらを熟考してダイビングプランを完成させます。
サイドマウントはその選択肢の一つになります。
また、テクニカルダイビングはレクリエーションダイビングの比でないリスクが生じます。
サイドマウントを始めたからテクニカルをやらなければいけない、というわけでは、決してありません。
そこだけは誤解しないでくださいね。
テクニカルレックダイビング
サイドマウントを始めた方であれば、狭いところをくぐる醍醐味を味わったかと思います。
その先にあるのがレックダイビングなのかもしれません。
ちゃんとしたトレーニングを積めば、沈船の中に入り、数十年前の生活様相を楽しむことができます。
また、狭い船内はサイドマウントトレーニングで学んできたスキルを存分に発揮できます。
中性浮力もそうですが、ヘリコプターターン(トリムでの旋回)やバック泳法などを多用して潜ります。
楽しそうですよね(笑)。
実は私が今一番ハマっているダイビングです。
そして、サイドマウントだから潜れる場所もたくさんあります。
安全面でもレギュレーターやバルブが身体の全面にあるスタイルは非常に有利です。
常にタンクの状況が目視できるのも非常に有効です。
ただ、こちらも厳密にいうと、すべてのレックダイビングにサイドマウントが適しているわけではありません。
船の中は狭いです。
また、各扉は浸水を防ぐために狭く作られています(船に乗る方はよく目にしたことがあると思います)。
実は、サイドマウントのスタイルは、高さは抑えられていても、通常の装備より幅が広いのです。
そのため、通常の装備であればなんとか通れるところも、サイドマウントだと身体の傾きを変えるか、タンクを外さなければ通れません。
ですので、すべてにサイドマウントが適しているわけではないのです。
もちろん簡単なダイビングではありません。
大深度の減圧ダイビング同様、リスクも大きいです。
ですが、登山家が、より難しい山を目指すように、あえて難しいダイビングに挑戦するのも楽しいものです(ちゃんとしたトレーニングや資格を得たうえで!)。
先輩サイドマウントダイバーのアドバイスを聞いたうえで、ぜひ視野に入れて欲しい世界です(笑)。
ケーブダイビング
サイドマウントダイビングはケーブダイビングを潜る一つのスタイルでした。
オープンウォーター・サイドマウントのベーシックな部分はケーブダイビングがもとになっています。
そのため、オープンウォーター・サイドマウント講習で習得するスキルのいくつかは、そのままケーブダイビングでも非常に重要なスキルになります。
レック同様に狭いところもくぐれば、身体の姿勢をコントロールして泳いだり、はたまたフィンキックをせずに、這うように通らなければ行けないところもあります。
メキシコにはサイドマウントでしか入れないセノーテもあります。
サイドマウントが冒険の幅を広げてくれたのでしょう。
ケーブダイビングは、サイドマウントダイビングの究極といっても過言ではないと思います。
また、ケーブダイビングは狭いところだけではありません。
美しい水中鍾乳石のドーム状の広い空間やハロクライン(淡水と海水の境目)は水中を流れる川のように見えます。
鍾乳石の間を進む醍醐味は言葉にできません。
今では、ケーブダイバーは多くがサイドマウントで潜っていると聞いています(私もメキシコの現地で多くのサイドマウントダイバーを見ました)。
そして、レックダイビング同様に学んできたスキル、コンフィグなどをフル活用し、講習で学んだことを改めて実感・理解することができるでしょう。
ただ、ケーブダイビングは、ダイビングの中で一番危険なダイビングとも言われています。
安易にお勧めできるもではありません。
ですが、ちゃんとしたトレーニング、知識、スキル、資格を身に付けると、新しい世界を体験できます。
とても魅力的な世界です。
シニアダイビング
意外に思われるかもしれませんが、シニアの方にサイドマウントは向いていると思います。
サイドマウントを正しく活用すると身体の負担は減少します。
特に腰への負担は軽減されるでしょう。
また、重たいタンクを陸上で背負うことはなくなるので、ビーチダイビングでもエントリー・エキジットはとても楽になり、安全になります。
例えば、富戸やIOPのようなポイントも、事前に担当インストラクターかガイドの方が水深1mぐらいのところにタンクを置き、シニアの方はBCを着けてそのままエントリー、水面でタンクを装着してダイビングへ。
エキジットも同様に水面でタンクを外し、ダイバーはそのままエキジット。
あとはガイドの方がタンクを回収。
この方法だと、シニアの方はより快適に安全にダイビングを楽しむことができます。
ただ、担当するガイドの方はちょっと力仕事が増えますが……。
もちろん、事前にサイドマウントトレーニングを受講することが望ましいと思います。
ですが、私はオープンウォーター環境限定であれば、もっとシンプルに安全だけを重視した講習でも良いと思います。
例えば、シングルタンクだけのサイドマウントトレーニングなど。
そして、もしシニアの方がダブルタンクのサイドマウントを希望するのであれば、その時に改めてサイドマウントのフルコースを受講していただくのが望ましいと思います。
ハンディキャップダイバー
こちらもシニアダイビング同様に、多くの可能性を秘めていると思います。
身体への負担の軽減やタンクの取り扱いもそうですが、サイドマウントの装備だとサポートダイバーの方もフォローしやすくなると思います。
障害の種類にもよりますが、例えば、水中で曳航する際も水の抵抗が少ない分、サポートする方が楽になるでしょう。
また、サイドマウント用BCは、通常のBCよりDリングやハーネスのコンフィグが作り易いです。
そのため、サポートダイバーがダイバーをフォローしやすい個々のアレンジが可能となります。
例えば、獅子浜のように桟橋があり、スロープを利用すると海の中まで車椅子で入れます。
タンクは事前に桟橋の水際に置いておきます(あるいは手の届く水中へ)。
水の中に入ってからタンクを装着し、そのままダイビングへ。
タンクを着けたBCを水面で着用するより、楽に安全に実施できると思います。
もちろん、まだまだフォローする方法、サポートダイバーの理解やスキルなど、解決しなければならない問題は多々ありますが、それでも新しい可能性があると思います。
さて、今回のお話はいかがだったでしょうか?
他にもオープンウォーター環境でのサイドマウントの可能性はあるかもしれません。
私は、水中カメラはやらない(ビデオはやります)ので詳しくはわかりませんが、カメラマンの中には可能性を感じていらっしゃる方をいるみたいです。
流れの強いところでもサイドマウントは有効ですし、単独潜水にもサイドマウントは向いています。
ちゃんとトレーニングされたサイドマウントダイバー同士のバディ潜水もより安全になるでしょう。
ぜひ、サイドマウントを始めた方、もしくは始められる方は視野を広くもって、いろんな可能性を広げていただきたいと思います。
先日、トレーニングでフィリピンはスービック湾に行ってきました。
フィリピンの町もクリスマス一色でした。
ただ、私自身はクリスマスの飾り付けを見ていても、無意識にハートの何かを探していたようです。
もう病気ですね……。
次回、いよいよ最終回です。
あと1回頑張ります!
よろしくお願いいたします!!