帰ってきたダンゴウオ~岩手・三陸ボランティアダイバーズの3年目~
震災直後から、ダイバーの受け皿となって、代表のくまちゃんこと佐藤寛志さんの出身地である岩手を中心とした支援活動を続ける三陸ボランティアダイバーズ(通称“三ボラ”)。
この2年間、地元に根ざし、瓦礫撤去などのダイバーらしい支援活動を続け、最近ではファンダイビングや観光誘致活動にも力を入れつつある三ボラの3年目はどこへ向かうのでしょうか。
大震災1年後&三陸ボランティアダイバーズの活動レポート
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海に広がるアマモの草原とホンダワラ林
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(写真/寺山英樹)
三ボラのくまちゃんのもうひとつの顔が、ダイビングショップみちのくダイビングRiasのオーナー。
まずは、海の様子を見ようと、Riasの拠点となる海、越喜来の浪板海岸にエントリーすると、水温5~6度の海はよく冷え、そしてよく澄んでいます。
砂地からアマモがところどころに顔を出し、背の高いホンダワラは水面に達するほど伸びています。
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(写真/塩崎仁美)
なだらかに落ちる砂地を進むと、アマモが砂地を覆い、まるで草原のよう。
草原ではそこかしこにトゲクリガニがいて、見つけると慌てて、飛ぶように逃げていく様子がとてもキュート。
そして、草原のさらにその奥には、ジャイアントケルプのようなホンダワラが林立し、迫力あるシーンが楽しめます。
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(写真/寺山英樹)
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(写真/寺山英樹)
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(写真/塩崎仁美)
帰ってきた、ダンゴウオ!?
ホンダワラ林を抜け、ゴロタの壁を探すと、震災後何度も潜っている浪板の海で、初めてのダンゴウオとのご対面!
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東北の顔……というか、本当に顔みたいな魚 (写真/寺山英樹)
震災後はすっかり姿を見なくなってしまったそうですが、今年から姿を現すようになり、今では1ダイブで4~5個体見られるほどになったそうです。
一度見られるようなれば、4月くらいまでは見られるのではないでしょうか。
浪板は、堤防を挟んで左側には震災の傷跡が色濃く残り、右側は豊饒の海。
ぜひ、帰ってきたダンゴウオとともに、東北の2つの顔を見にいってみてください。
調査ダイビングでもダンゴウオ三昧
多くを奪った震災ですが、新たな絆も生まれました。
三ボラでも、一緒に瓦礫撤去作業を続けてきた漁師たちとの絆は深まり、ダイバーたちのために新たなダイビングポイントが生まれようとしています。
今日はそんなひとつのポイントに潜ってきたのですが、こちらもダンゴウオがあちこちに。
赤みがかったゴロタが多かったので、今回はすべてピンクダンゴでした。
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(写真/寺山英樹)
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(写真/寺山英樹)
迫力ある地形も見られ、今後、安全管理に問題がないと判断されればオープン予定。
今後が楽しみです。
くまちゃんに聞く! 三ボラのこれから……
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くまちゃんの愛称で親しまれる三ボラ代表の佐藤寛志さん。メディアの露出も多く、ダイバーにはすっかりおなじみの顔
Q.水中の復興状況はいかがでしょうか?
率直に言って、“まだまだ”です。
仲間たちも、潜るたびに口をそろえて「まだまだあるね」と言っています。
三ボラでは、初心に戻って、瓦礫撤去作業は地道に続けていきます。
ダイバーにしかできない大事な役目ですからね。
Q.ファインダイビングや観光も同時に行なっていくのでしょうか?
もちろん、生活がありますし、前を向くためにも、ダイビングショップRiasの佐藤寛志としては、ファンダイビングや観光なども進めていこうと思っています。
とはいっても、今、ファンダイビング1割、水中作業9割なので、ファンダイビングや観光を3割くらいにしたいという感じです。
三ボラとしては、“記録を残し、伝える”ことを柱にして活動してきたいと思っています。
特に「津波の威力」「自然の再生力」「人間の復興力」の3つのテーマを意識して、写真や映像で記録し、体験談を語り、多くの人に伝えていくのが、震災直後から海を見続けている自分たちの役目だと思っています。
Q.今でも一般ダイバーは受け付けていますか?
もちろんです!
実は、2年経った今でも、三ボラのメンバーは減るどころか、増え続けています。
これは、活動自体を楽しみ、出会いを大事にしているからではないでしょうか。
三ボラは誰でも気軽に参加できる団体です。
そのダイバーのレベルに合った活動をしていますし、まだ来たことのない方は見るだけでも貴重な体験だと思います。
1本ボランティア、1本ファンダイビングなんていう形でもいいので、とにかく一度潜ってみて、体験してみてください。
興味のある方は、ぜひお気軽にお声がけくださいね。