奄美大島ホエールリサーチ(第3回)

ついに水中でのクジラ撮影に成功! ~ゲン担ぎと幸運の女神で臨んだ奄美大島ホエールリサーチ~

この記事は約5分で読めます。

奄美大島ホエール水中(撮影:越智隆治)

1月25日、またマリンスポーツ奄美の才さんにお世話になり、朝から海に出る。
今回はスイム希望のゲストも何名か乗船していたので、自分もスイムの準備をして船に乗り込んだ。

「ウエットスーツを着てから乗船した方がいいですか?」と尋ねると、「いえ、クジラが出てからでいいです。最初っからウエット着て乗ったら、クジラと泳げませんよ」と才さん。

「え? どういう意味ですか?」と再度質問すると、「だいたい、ウエット着て気合入れて乗り込んで、泳げた試しがないんですよ。だからクジラが出て、まずはウォッチングの人に船上から見せて、泳げそうならウエット着てもらってって感じです」。

要するに、ゲン担ぎみたいなもののようだ。
いろいろとゲンを担ぐ才さん。

クジラのブリーフィングと共に出港前に必ず行うのが、お祓いをしてもらった塩で身体を清めること。
クルーだけでなく乗船するゲスト全員に、奄美の神様であるユタにお祓いをしてもらった神聖な塩を回して、身体に擦り付けてから、最後はその塩を食べる。

奄美大島ホエール(撮影:越智隆治)

出港前、お清めの塩を皆に配って回る才さん

そうすることで安全とクジラとの遭遇を祈願するのだ。

さらにこの日は、才さんの次女の愛鯉(あいり)さんがスタッフとして乗船。
「この子は幸運の女神なんですよ。今年は1月1日に初クジラが出た時にも一緒に乗ってたし」と、とにかく一緒に乗ってる時には、結構良い遭遇があるのだとか。

奄美大島ホエール(撮影:越智隆治)

目の中に入れても痛くなさそうな、自慢の娘、愛鯉さんとホエールウォッチングに出るのがとても幸せそうな才さん。果たして、幸運の女神の威力はあったのか?

ゲン担いで、お清めして、幸運の女神が乗船して……
これで見れなかったら嘘だろうってくらいに、気持ち的には準備万端で出港。

すると、出港後間もなく、沖合いでフルブリーチングするザトウクジラを発見!

さすが、ゲン担いで、お清めして、幸運の女神が乗船する今日のホエールウォッチング。
幸先の良いスタートで、期待が膨らむ。

そのクジラは何度もブリーチングしたり、テールスラッピングをしたりと、距離がある間はいろいろなパフォーマンスを見せてくれたけど、ザトウクジラにありがちな、船が近づくと静かになるパターン。
テールを上げる瞬間にID用の撮影はできたけど、行動パターンを見ているとあまり泳げそうな感じではなかった。

奄美大島ホエール(撮影:越智隆治)

最初に遭遇したクジラのテール

才さんも、「トンガではスイムはどんな感じですか?」といろいろと尋ねてくれたので、トンガではこんな感じで泳ぎますという話などしながら、「やっぱりこれは無理っぽいですよね〜?」
「トンガだと、これは入らないパターンですね」とお互い納得して他のクジラを探す事に。

そのクジラから離れて南下していたら、後方をリサーチしていた愛鯉さんが、「ブリーチング!」とクジラを発見。
さすが、幸運の女神!

位置的に、同じ個体か、あるいは別か微妙な感じ。
いずれにしても何度かブリーチングしていたので、Uターンしてそのクジラに接近。

GPSで確認すると、先ほどのクジラと最後に離れた位置から2km弱くらいだったので、同じ個体かどうかを確認するためにまずID用のテール撮影。
確認すると、違うことが判明。

奄美大島ホエール(撮影:越智隆治)

2個体目のクジラのテールの写真。1個体目と違い、テールの裏は真っ黒。

しばらく追跡すると、あまり激しく移動する感じもなく、船の前をゆっくり移動していく。
その後ほとんど移動しなくなり、潜水時間も13分くらいして、ほぼ同じ場所に浮上してくるパターンを繰り返し始めたので、準備してエントリーしてみる事に。

奄美大島ホエール(撮影:越智隆治)

ウエットを着て、スイムの準備を始めたゲストたち

1度目は、浮上してきたところで接近してエントリーするも、移動して潜行するクジラの姿を見ることはできなかった。

2度目、今度は潜行した最後のフットプリントの近くまで来ると、才さんが「越智さんだけ入って調べてみますか?」と言ってくれたので、「じゃあ、チェックしますね」と言って自分だけエントリー。

船上から才さんが指示するエリアを探してみると、背びれの白い擦れた部分がうっすらと見えた。

「いた! 海中で止まってる!」

目を離すと見失うかもしれなかったので、トンガでクジラを見つけた時にするように、片手を上げて皆にクジラがいることを知らせた。
が、よくよく考えるとこの合図を皆が知ってるかどうかわからなかったので、クジラの位置を再度確認して、顔を上げて、「います! ここに止まってる!」と船に伝えて、また見失わないように顔を海中につけて手を挙げた。

奄美大島ホエール水中(撮影:越智隆治)

皆が入水して来るころには少しづつ浮上してきて、最初は水深25m付近だったのが20m弱くらいまで上がってきたので、全身もはっきり見えるようになってきた。

船の方を見ると、才さんが潜って良いというサインを出していた。
トンガだと、とりあえず一度は浮上して来るまでは潜らずに様子を見るのだけど、ウエイトをつけているとはいえ、6半ツーピースでどこまで潜れるかも試してみたかったので、潜ってみる事に。
すると意外と潜れたのでそのままクジラに接近すると、クジラの方がそれに気づき、一度潜行して、浮上する事なく海中を移動して姿を消してしまった。

奄美大島ホエール水中(撮影:越智隆治)

「やべ、逃しちゃったな」と思い、船に戻ってから「すみません、もう少し様子見ればよかったですね」と伝えると、「いえ、いいですよ」と才さん。
「船上からはわかるけど、水中は潜らないとわからないから越智さんの判断に任せます」と言ってもらえた。

だけど、あの場はもう少し様子を見るべきだった。
トンガのクジラよりも人馴れしてないせいか、あの程度の接近でもすぐに反応してしまうのかもしれない。

結局、その後も浮上を待ったけど、1km程離れたところにブローが上がったので、時間も無かったし諦めて港に引き返した。

潜っちゃって悪いことしたかなと思っていたのだけど、「越智さんが潜った後、皆も潜っていたし越智さんが見つけてくれたから皆も水中で見れたわけだから、気にしないでいいですよ」と言ってもらった。
下船の時には、一緒に潜ったゲストの方たちから「おかげで水中でクジラを見ることができました。ありがとうございました。一緒に写真撮ってもらっていいですか?」と言われてホッとした。

ゲン担ぎと、お清めと、幸運の女神のご利益は十分にあった、奄美での初ホエールスイム。

奄美大島ホエール(撮影:越智隆治)
明日、明後日も才さんの船でリサーチに出かける。

取材協力:マリンスポーツ奄美

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

writer
PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
  • facebook
  • twitter
FOLLOW