リサーチ最終日も水中でスイムに成功! ~奄美クジラ・イルカ協会会長・興克樹さんに聞く“ホエールスイムの展望”~
奄美でのホエールスイムリサーチ最終日、奄美クジラ・イルカ協会会長の興克樹(おきかつき)さんとも一緒にスイムをする機会を得た。
普段もマリンスポーツ奄美の才さんの船に乗って、船上からの個体数の確認やホエールスイムを行い、海中でのクジラの生態観察や記録などを行っている興さん。
この日はテレビや新聞のロケとともに、調査の資金を提供してくれている環境省の関係者を連れて乗船した多忙な興さんに話を聞いた。
現在、8事業者が加入する奄美クジラ・イルカ協会。
「事業者はお互い仲がよく、クジラの状況などもLINEでグループを作って全員に伝えられるようにしたり、情報交換や連携は上手くいっています」
また、沖縄との連携もしていて、情報交換も頻繁に行っている。
才さんはその日に見たクジラの個体数などを、沖縄美ら海水族館でクジラの調査を行なっているスタッフに伝えて「今日はこっちの個体数の方が多かった、少なかった」と楽しそうに競い合っていた。
「スイムは、クジラたちへの影響は大きいと考えています。今はそんなに多くの人がスイムを行なっているわけではないからいいですが、今後、奄美大島が世界自然遺産に認められて、ホエールスイムができる海としての認知度も上がって来た場合、ある程度の制限を作っていた方が良いと考えています。世界自然遺産に先駆けて、エコツーリズム基本構想を作成しているのですが、その中にホエールウォッチングとスイミングのルールも盛り込んで行く予定です。特にスイムは、ダイビングのCカード保有者、あるいは、御蔵島などでのドルフィンスイムなどの経験者にのみ認めるという形を取っています。また、1回に入水できる人数は6名に限定しています。ルールはそれぞれの島ごとに決めますが、お互いに照らし合わせ、どこかのルールが他の島でのホエールウォッチングに悪い影響を与えないようにしていきたいと思っています」と興さんは話す。
シーズン前と後の2回、協会参加事業者で話し合いの場を持ち、毎年ルールの見直しを行っている。
また、2〜3月に加盟事業者で船を出して、モニターツアーで奄美全域のクジラの個体数調査を行ったり、教育委員会と連携して小学生へのホエールウォッチング体験などの活動も行っている。
ホエールリサーチ最終日も
水中スイムに成功!
ホエールスイムリサーチ最終日のこの日は、午前と午後で計10頭のクジラに遭遇。
まずは、シングルのクジラで同じ場所に留まっている個体にスイムをトライ。
海中に入ると、若いシングルのクジラが何度も何度も戻って来て一緒に泳いでくれた。
何度もお腹を見せてくれたので性別も確認でき、この子はオスということが分かった。
その後、3頭のクジラが1時間以上も船の周囲にまとわりついて一緒に泳ぎ続け、船首や船尾で様々なパフォーマンスを見せてくれた。
ある程度船上で観察した後、この3頭にもエントリー。
何度か一緒に泳ぐことができた。
興さんに「今日のクジラの状況はどうですか?」と聞くと、「かなりよかったんじゃないですか。特に水中はかなり良かったと思いますよ」とのこと。
才さんも「あんな風に船の周りをずっと泳ぎ続けてくれるのは過去3回くらいしかないかな」と言うくらいの遭遇。
午後も海に出て、止まってはくれなかったが穏やかに泳ぐ5頭のヒートランに、スイムで何度もアプローチ。
この日のクジラとの遭遇は、まるでトンガでホエールスイムをしているかのような遭遇状況だった。
結果、6日間のリサーチで計33頭のクジラに遭遇し、14頭のクジラと水中で泳ぐことができた。
昨年のクジラ遭遇率は1月末までで21頭だったと言うから、今現在のクジラの個体数はかなり多い。
今年の才さんのクジラ遭遇数は1月31日現在で、昨年の4倍近い83頭。
クラゲ大増殖ならぬ、「クジラ大増殖中!」と才さんが表現する、今年の今現在の奄美群島のクジラたち。
今後のクジラたちの動向が楽しみだ。
取材協力:マリンスポーツ奄美
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