岩手、水温4度の海中で、ガレキ撤去作業

3月10日、時折雪がちらつく曇天。大船渡市の泊漁港で、三陸ボランティアダイバーズ14人(潜水部隊8人(Ocean+αの2名含む)と引き上げ部隊6人)が、漁師さんに船を出してもらい、海中のガレキ撤去作業を行なった。

東北岩手のワカメ(撮影:越智隆治)

Ocean+αとしての初取材は、この海中ガレキ撤去作業取材になった。
水温は4度。一昨日まで暖かいフィリピンのセブ島でロケを行なっていた、寒さに弱い軟弱な自分にとって、この水温差だけで、精神的に堪え難い。

しかし、彼らはこんな水温でも、1年前のあの日以降、ガレキの撤去作業を延々と続けている。自分だけ弱音を吐くわけにはいかない。

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潜水作業は、水深5mと浅い湾口周辺で2回行なわれた。作業時間は60分を予定していたのだけど、40分を過ぎたあたりから、寒過ぎて、特にカメラを操作する指先が痛みで堪え難くなってきた。
撮影を続けながらも、ダイブコンピューターを見ながら早く時間が過ぎてくれと願い続けるが、10分はたったかなと再度コンピューターに目をやっても、5分も経過していなかった。

1年もたち、相当に撤去作業を行なっていても、まだまだ海中にはガレキが山のように残っている場所がある。

60分が経過。リーダーのくまちゃんが、作業を中止し、僕に目を向けた。
「これで上がれる」と思ったのだが、作業後、くまちゃんは、マクロレンズを装着した水中カメラを持つ僕のために、小さな生物を探し始めた。

うねりもあり、指の感覚が無くてフォーカスが調整できないから、置きピンにして撮影を行なった。

東北岩手のウミウシ(撮影:越智隆治)

周囲には、コンブなどの海藻が生い茂り、海中に春の訪れを伝えている。しかし、この時期が実は1年中で一番水温が低い。ドライスーツに身を包んでいても、70分も潜っていれば、この水温に慣れていない自分は、その冷たさに身も心も折れそうになった。

東北岩手のがれき撤去作業(撮影:越智隆治)

1年前、こんな冷たい水が津波となって押し寄せ、全てを飲み込んでいったのかと考えると、何とも言えない心境になった。だから、途中でリタイヤだけはしないと決めて潜り続けた。皆も潜り続けていたのだから。
1本目、70分以上のダイビングを終えて、感覚の無くなった手をお湯に浸し、港に張られたテントの中で皆で暖を取った。皆の前で「2本目、どうしようかな」と弱音を吐いていたけど、心の中では「潜る」事しか考えていなかった。
結局2本目も70分以上のダイビングになった。
3月11日の今日も、潜水作業は続く。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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