「今日は海がキレイ過ぎてダメだ…」透明度が高くないほうがおもしろい!?山口県青海島で一味違ったダイビングを

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こんにちは。水中カメラマンの堀口和重です。

美しい南の島の海などでは、透明度が高く、抜ければ抜けるほど評価は良くなると思いますが、山口県青海島(おうみしま)の一部のショップだけは少し違います。

今回、撮影で滞在している山口市のシーアゲインでは

「今日は海がキレイ過ぎてダメだ!!」

と、普通のダイバーなら頭の中が「?」マークでいっぱいになりそうな会話が飛び交います。

プランクトンが溢れ、目の前に浮遊物が浮いて、透明度がやや落ちている海。この方が、ゲストたちが喜ぶんだとか。

一体、どういうことなのでしょうか?

とても珍しいけれど
青海島では毎年恒例の生き物!?

なぜかと言えば、その浮遊物の中には、前回そして前々回のヘッドラインでもご紹介したような“お宝”、つまり、珍しい生き物が紛れているのです。

ゴールデンウィーク前後からプロカメラマンをはじめ、全国各地からフォトダイバーが集まりましたが、ミジンベニハゼなどの人気の魚はまったく見向きもされず。世間では“海のアイドル”と評されているような魚たちには、人気票が入りません。

求めるものが違えば、求める海も変わるのですね。

先日、ヘッドラインで紹介したキアンコウの稚魚や幼魚。
こちらは狙うとなるとここ、青海島でしか可能性はないと言っていいでしょう。
▶<G.W速報>山口県青海島でキアンコウの稚魚&幼魚に多数遭遇!珍しい浮遊系生物に会うなら今がチャンス?

5月5日にも2個体登場しており、7年間ゴールデンウィーク中に青海島に長期滞在し続けているというゲストの方は、1度も外さずにキアンコウを見られているそうです。(※1~2日滞在では見れる確率は低いです)

キアンコウの幼魚(撮影/堀口和重)

キアンコウの幼魚(撮影/堀口和重)

個人的に好きなのは、大きな口が印象的な、深海に住むハリゴチ科の1種。

青海島では1ダイブで数個体見られることもあり、普通種のような扱いなのですが、他の海ではほとんど見かけたことはありません。

ハリゴチの1種(撮影/堀口和重)

ハリゴチ科の1種(撮影/堀口和重)

エイリアンのような不気味な姿をしているのが、ウチワエビなどの幼生・フィロゾーマ。

フィロゾーマとは、イセエビやセミエビ類などの幼体であり、名前の由来はギリシャ語で“葉っぱのような体”という意味になります。

打ち上げられた個体を見たこともありますが、まさに葉っぱのような形をしていました。

クラゲライダーとも呼ばれるウチワエビなどの幼生(撮影/堀口和重)

クラゲライダーとも呼ばれるウチワエビなどの幼生(撮影/堀口和重)

「クラゲライダー」との愛称でも呼ばれるこの幼生は、クラゲに乗って移動して、敵が来れば隠れたり、さらにはそのクラゲを餌とする、おもしろく尚且つクラゲにとっては迷惑な生き物です。

5月1日には単体で泳ぐ、ヨコヤヒメセミエビのフィロゾーマも登場しました。

珍しいヨコヤヒメセミエビのフィロゾーマ(撮影/堀口和重)

珍しいヨコヤヒメセミエビのフィロゾーマ(撮影/堀口和重)

浮遊系だけじゃない!
青海島の魅力その1・海藻

「船越ビーチ」ではアラメやクロメ、アカモク・ホンダワラなどの海藻が踊るかのように揺らぎ、太陽光が入れば日本の海を強調したかのうような、美しい光景が広がります。

船越の浅場は海藻が美しい(撮影/堀口和重)

船越の浅場は海藻が美しい(撮影/堀口和重)

海藻畑の中をゆったり覗いてれば、青海島の人気生物の1つオオカズナギが生活している姿も見られます。

来月~再来月になれば、オス同士が大きく口を開ける喧嘩シーンも見ることができます。

これからのシーズン大人気の喧嘩シーンも見られるかも(撮影/堀口和重)

これからのシーズン大人気の喧嘩シーンも見られるかも(撮影/堀口和重)

浮遊系だけじゃない!
青海島の魅力その2・熱い生態行動

紫津浦は毎年、コウイカの生態行動の観察がおもしろいです。

今年は例年よりも生態行動自体が少し遅めで、連休中にかぶりました。

雌を巡る雄同士の喧嘩や、墨をドロッと吐いての威嚇行為、交接や、卵に砂をまぶしてからの産卵、うまくいけばハッチアウトまで、一連の流れが高確率で見られる場所でもあります。

コウイカの生態行動を狙うとなればぜひ、紫津浦をおすすめしたいですね!

雄と雌がガッチリくっついている(撮影/堀口和重)

雄と雌がガッチリくっついている(撮影/堀口和重)

卵を産み付けているところ。網についているの砂玉が全部卵(撮影/堀口和重)

卵を産み付けているところ。網についているの砂玉が全部卵(撮影/堀口和重)

また、帰りに浅場の岩肌を観察すると、かわいらしいナベカなどのギンポの仲間が求愛してたり、例年より時期が遅れてチャガラがオス同士喧嘩していたりと、エキジットするまでシャッターチャンスは続きます。

ナベカの雄と雌(撮影/堀口和重)

ナベカの雄と雌(撮影/堀口和重)

海藻の中を癒されながら泳ぐこともできて、生態行動も狙える。浮遊系では当たるか当たらないかの博打のようなダイビングですが、珍しい生き物が出たら大喜びで賑わい、笑顔でエキジットできる海。

山口県青海島でのダイビングは、透明度ではない、他の海とは違う経験ができるのです。

■撮影協力/シーアゲイン

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堀口和重さん
プロフィール

horiguchi_profile

伊豆の大瀬崎にある大瀬館マリンサービスにチーフインストラクターガイドとして勤務後、2018年4月にプロのカメラマンに転向。
現在は伊豆を拠点に水中撮影から漁風景や海産物の加工まで海に関わる物の撮影を行っている。
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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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