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SDGsの観点からダイビング業界の未来を語る〜対談:株式会社クレアン代表・薗田綾子×ocean +α代表・河本雄太[前編]閲覧無制限

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What’s SDGs

「Sustainable Development Goals」の略称。2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき持続可能な世界的開発目標のこと。17のゴールと、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを宣誓している。


ocean +α代表の河本雄太(以下、河本)が、SDGsの観点から様々な分野のプロフェッショナルとダイビング業界の未来について語る対談シリーズ第3弾。今回は、日本国内におけるSDGsの第一人者である、株式会社クレアン代表・薗田綾子氏(以下、薗田)をお招きし、「ジェンダー平等」の視点から掘り下げ、語っていただいた。

ダイビング業界の根深い問題点を考える

河本:SDGsの目標5にもある、ジェンダー平等の視点から見ても、僕はダイビング業界でもっと女性が活躍することが、業界自体がもっと伸びる要素なのではないかと思っています。

薗田:もちろん、本当にそうですよ。世界の人口の半分は女性ですからね(笑)。

河本:正直、今のダイビング業界は、相当な古い体質がまだまだ残っている現状があります。ついこの間の話なのですが、観光庁からインバウンドに向けたダイビングとシュノーケルのガイドラインが出たんですね。その検討会のメンバー表をみたのですが、そのうち女性はたったの一人でした。業界に長くいる男性がほとんどを占めていて、それで決めちゃっていいんですか?と言いたくなる状況でした(笑)。

薗田:一人だけはちょっと少なすぎますね。最低でも女性を30%は入れないと。

河本:ダイビングには女性のお客様にもたくさん来ていただきたいはずなのに、実際に話し合っているのは男性ばかりという…。ちょっと歪な形が見えてしまいました。

薗田:そのような場を見れば一目瞭然ですが、実はいまジェンダーギャップだけでなく、ジェネレショーンギャップも大きな問題になっているんです。年配の方たちが持つ経験値の重要性もちろん分かるのですが、もっと、女性や若い世代の声を聞かないと。ミレニアル世代や1990年後半に生まれたZ世代はデジタルネイティブで価値観は大きく変わってきていますからね。

河本:確かに構成メンバーは50代以上が多かった気がします。先日の現場は、薗田さんがおっしゃているジェンダーギャップとジェネレショーンギャップの縮図のような場だったんですね(笑)。

薗田:そうだと思います(笑)。すでに若者の間では、次の世代のことを考えた動きというのは、当たり前になってきています。2030年になった時に、中心にいる人たちが本当に幸せなのかどうかが重要なので、「女性の意見を聞きましょう」というだけではなく、「次の世代のことをちゃんと考えましょう」というのが本来のSDGsなんです。

多種多様な現代に求められる個性の尊重とは!?

河本:僕がダイビング業界で、女性にもっと活躍して欲しいと思うのにも理由がありまして。ダイビングは、水中で言葉が発せない分、体に触れてコミュニケーションを取ることや、支えてもらうことが意外と重要なんですね。なので、そういう場面では、女性のお客さんには女性のインストラクターがついた方がお互いやりやすかったりもして。

薗田:でもそれは、男性の中にも女性的な感性が強い方がいたり、女性の中にも男性的な感性が強い方もいらっしゃいますから、一概には言えないかしれません。指向性も含めて、本当に多種多様で、10人いたら皆んな違った個性がありますから。

河本:確かに分かる気がします!仕事へのやりがいを女性がすごく持っているにも関わらず、その気持ちを表現する方法に悩んでいうように勝手に感じてしまい、その対応にすごく難しさを感じるのもそういうことなのかも。

薗田:最近では「アンコンシャスバイアス(Unconscious bias)」という言葉が出てきているのをご存知ですか?分かりやすく言うと「無意識の偏見」です。例えば、「関西人はうるさい人が多い」や「B型はゴーイング・マイウェイ」といったような、本人たちからしたら言われのないバイアスってあるじゃないですか(笑)。

河本:ありますね(笑)。

薗田:年齢を重ねて様々な経験をすればするほど、まるっと丸めて考えた方がすぐに判断がしやすい。極端な話ですが、ここにライオンが来て襲われそうになった時に「このライオンはいいライオンかもしれない」とか、「餌を食べたばかりでお腹いっぱいかも」と色々考えているうちに食べられてしまうかもしれません。
そうではなく、本来なら「ライオンは怖い、逃げろ!」というように、すぐに判断ができるようバイアスをつけているのですが、色んな経験値を積めば積むほど単純に判断してしまうわけです。ちょっと昔ならば「女性は面倒くさい」、「怒ったらすぐ泣く」、「女性は守らなければいけないもの」といったような、自分の経験値の中の女性像から話を進めていたように。

河本:自分で話した後にその時を振り返ると、自分も同じことをしていたなと、思い出すことはありますね。要は、バイアスを持っていることを自分で知ればいいということですか?

薗田:そういうことです!私自身ももちろん急に考え方が変わったわけではありません。例えば、以前うちのスタッフ内に、大学院でMBA取得の機会があった時、男性には迷わず勧めるんですけど、女性には、「結婚したばかりだから無理かな?」とか勝手に判断していました。でもそうではないですよね。男女関係なく、同じように伝え、本人自身がキャリアアップの機会として判断できることが重要なんです。

credited by Pexels Christina Morillo

ジェンダーギャップから見える日本が持つ課題

薗田:ジェンダーギャップ指数2020で言うと日本は世界で121位というかなり悲惨な立ち位置にいます。政治家の中にまだまだ女性の比率が少ないとか、企業の管理職比率が少ないことがどういうことかというと、大切な方針や施策を決める時、そこに女性の存在がないということ。すなわち女性の意見が反映されていない、もしくはそこにいる女性が男性に忖度してしまう状況なんです。それが、今の日本社会の大きな問題。もしかしたら日本を含めたアジア圏内に多い、家父長制の名残もあるのかもしれません。

地方の問題で、男性は3〜4人に一人は地元に帰るんですが、女性は5人に一人(20%)しか帰らないというデータがあります。その理由はすごくシンプルで、「面倒くさい」ということなんです。年頃になって結婚していないと、「なんで結婚していないんだ」とか「早く子どもを産みなさい」と田舎に帰るたびに言われたら面倒じゃないですか。であれば、帰らないという選択を取りますよね。

そうすると今の地方って、高齢化もあり人口がどんどん減っていく。現実は、それが倍速で進んでいます。そこへ来て20%の女性が帰らないとなると拍車が掛かるのは必然。特に東北の方はその傾向が強いかもしれません。

河本:やはり南より北の方がそういった風習というか感覚は根強いんですかね。奄美大島なんかも何となくそういった空気感はあるんですけど、実は女性の起業家がすごく多いという。飲み屋さんなどでは酔っ払ったら奥さんの文句を言っていたりするんですど、家に帰ると実はかかあ天下みたいな光景はよく見るかもです(笑)。

後編に続く

薗田綾子 Ayako Sonoda
株式会社クレアン代表



兵庫県西宮市生まれ。1988年、女性を中心にしたマーケティング会社クレアンを設立。1997年から環境・CSRビジネスをスタート。現在、延べ約700社のCSR・統合報告書の企画制作やSDGsコンサルティング支援。日本ユニシス㈱社外取締役、内閣府地方創生SDGs官民連携プラットフォーム幹事。

河本雄太 Yuta Kawamoto

ocean+α編集長


1981年生まれ。埼玉県出身。2016年より、海とダイビングの総合WEBサイト「ocean+α」を運営する株式会社オーシャナ代表取締役を務める。ダイビングショップ経営をはじめ、自然環境保護、地方創生などをキーワードに多角的な活動を続けている。

写真:中川司
文:中村竜也(R.G.C)

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