ダイビング×SDGs対談〜SDGsの観点からダイビング業界の未来を語る〜(第7回)

SDGsとESG投資、そしてダイビングとの関係性とは? 吉高まり×河本雄太 [入門編]

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What’s SDGs

「Sustainable Development Goals」の略称。2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき持続可能な世界的開発目標のこと。17のゴールと、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを宣誓している。

SDGsやサスティナビリティ、地球環境や気候変動など、海が環境に与える影響は多大だ。たとえば、人間の活動が毎年生み出すCO₂排出量の約4分の1が海洋に吸収されると言われているが、そのティッピングポイントが近づいていると考える科学者もいるほど。そのため、最近では投資家が海洋に関心を持ち始めており、「ブルーボンド」と言われる金融商品が生み出されている。
そこで今回は、一見、交わりがなそうな投資とダイビングの関係性について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのプリンシパル・サステナビリティ・ストラテジストであり、「まだ目に見えていない価値を『見える価値』に変える」をパーパスに掲げる一般社団法人Virtue Design(バーチュ・デザイン)の代表理事を務める吉高まり氏(以下、吉高氏)にご登場いただき、海の環境の変化を水中で一番見ているダイバー視点として、オーシャナCEOの河本雄太と対談をおこなった。

※海洋関連の事業に資金使途を限定して発行される債券

吉高氏が考える、SDGsと投資の関係性

吉高まり(以下、吉高)

投資と聞くと「事業への出資」を多くの方がイメージすると思いますが、私がこれからお話しするのは資本市場の話で、「株式や債券などで資産を運用する投資」の世界の話しになります。

リーマンショック以降、世界的に金融システムの脆弱性が浮き彫りになり、その時から、単なる短期的な財務的利益だけを追求して金融機関が行動をとることに疑問が生まれました。資産運用においては、ヘッジファンドのように、短期で預かった資産を動かして運用する人たちもいますが、一方で、個人が定年後に受け取る年金の運用、不測の事態が起きたときの保障のための損害保険や生命保険など、長期的視点の機関投資家の運用などカタチは様々です。

しかし、これらの機関投資家には、お金を預けてくれる人に対しての「フィディシュアリー・デューティー(受託者責任)」という責任があります。これは、お金を預けてくれた人(受益者)に対して、受益者の利益のためだけに職務を遂行するという責任のこと。ただ、その利益が財務的利益だけが中心になると、どうしても目先の利益をあげようと躍起になってしまい、サブプライムローンのようなリスクの高い商品に目が向いてしまったんですね。

そこで、長期で考えてお金を必要とする方や、いざという時にお金が必要な方に対しては、そういう目線だけではなく、もっと長期的な視線で運用をする必要があるという考えがリーマンショック以降浸透してきました。

それが、「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」に配慮している投資先を選別して投資を行う「ESG投資」です。2006年に国連が機関投資家に対して提唱した「責任投資原則」から広まった投資手法なのですが、これは、財務以外の情報、つまりE,S,Gなどの非財務情報について、投資家がきちんと評価をはじめました。2006年制定当初は、大手の機関投資家が署名したのですが、世界的にあまり注目されていなかったのですが、やっぱりリーマンショック以降に、投資に関したすべての考えが変わり一気に注目を集めるようになりました。それほど、リーマンショックが金融業界に与えた影響は大きかったと思います。

その教訓から2010年に英国政府が機関投資家に対して、“スチュワードシップ・コード”というガイダンスを発表しました。ここで示された行動規範が、日本を含めた世界各国に徐々に広がっていったんですね。その中で、今まで機関投資家という人たちは、サステナブルな考えで投資なんてしたことがなかったわけですから、当然何からどう投資をしていいか分かりませんよね。その判断基準がパリ協定とSDGsになると、欧州を中心に言われているわけです。

※スチュワードシップ・コード(Stewardship Code)とは、コーポレートガバナンスの向上を目的とした機関投資家の行動規範。機関投資家の支配力を活かしたソフトローの一種で、企業経営の収益力を向上させたり、企業不正を監視したりもする。いまや国際標準でとなった英国発祥の制度。

自然環境の変化と投資の密接な関係

吉高

私が以前、アメリカのヘッジファンドの運用担当者と話したときには、資産運用の際にきちんと気候変動に関して考慮しないと顧客から指摘されると言っていました。つまり、アメリカの投資家たちにおいても感度が高まっているのは確実です。

アメリカでは、サステナブル投資というくくりの中に、必ず気候変動がはいってきます。これが世界観なんですね。

SDGsはご存知のとおり長期的な視点で、環境や社会への課題というものを分かりやすく整理されているものです。これまで環境(Environment)、社会(Social)といった一面で、企業の将来の評価をしたことがなかった投資家や運用会社が、「こういうのが世の中のESGの課題なんだ」、「この課題に対して企業がどのように成長していくのか」というのを一つの指標に使っているのが、SDGsと投資の関係と言えるのではないでしょうか。

―指標になるということは、ESG投資の面から見てそれは企業の価値でもあるということですか?

吉高

そのとおりです。リーマンショック以前までは、大抵、企業が環境や社会課題解決に関与することは、株主にとってコストとして考えられていました。しかし、ESG投資では、2030年にSDGsが掲げるゴールに到達する社会に向け、それらの課題を解決するために新たなイノベーションが生まれることや、今と違う生活形態ができることにビジネスチャンスを見出し評価しようとします。企業は社会課題という市場のニーズに応え本業を通じて成長していくだろう、ということを投資家が評価していくことなのです。

企業統治(Governance)は、企業のエンジンとも言われ投資家はこれまでも評価はしてきましたがさらに強化していくでしょう。一方、気候変動課題などのE(Environment)と労働環境、人権、サプライチェーン管理などのS(Social)の課題に関して、ビジネス上の将来のリスクとビジネスオポチュニティを経営層がいかに捉え、企業を10年20年後も継続的に成長させていくことをコミットしている姿勢をみたいというのが、ESG投資家が求めるところです。

通常、企業の中長期計画というと3年毎に立てることが多いと思いますが、ESG投資家が見たいのは10年単位なんですね。SDGsもちょうど10年後の2030年後の世界を描いているため、企業が投資家に対してSDGsで自社の2030年にあるべき姿は語りやすいと思います。

―実際に日本国内でもESGを指標として行う投資家は増えていますか?

吉高

国内でもESG投資は増えてきています。国連責任投資原則に署名している機関は、日本では100社以上あるんですね。この国連責任投資原則は、国連が主導しているため、必然的にSDGsも重視されています。

日本でのESG投資は、安倍元首相の日本再興戦略において重視されたことが契機になっています。資本市場では、直接、個人や機関投資家が、企業が公開している情報で評価しますが、日本企業の多くはこれまで銀行との関係が強かったため、企業の価値が十分資本市場に評価されていないと考えられていました。

これを安倍政権下の経済政策の中で、銀行やグループ内での持ち合い株の解消やESG投資など、投資家に対して、日本企業の価値を正しく評価してもらう政策を積極化しました。

さらに推進力になったのが、日本の国民年金や厚生年金を積立・管理運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連責任投資原則に署名したことです。GPIFは、運用資金が約180兆円以上あり、世界最大規模のファンドです。当然GPIFに関するニュースは世界のマーケットを動かすほどの影響力があるわけです。日本の上場企業の約3分の2以上の銘柄を保有しているため、上場企業の財務担当はGPIFの方針を大変気にします。

GPIFは法律上自身で運用ができないため、資産運用会社に運用を委託しています。すなわちGPIFのESG投資の方針は、資産運用会社のビジネスに直接影響してくるのです。

ご質問に戻りますと、まずGPIFは、資産運用会社に対して、ESG投資方針を打ち出していますが、その中で企業の評価軸の一つとしてSDGsを示しています。また、GPIF以外にも、機関投資家である生命保険や損保会社などSDGsを表明しているところは、運用部門でESG投資方針にSDGsを軸としているところが増えてきているのは事実です。

河本雄太(以下、河本)

以前、吉高さんとお話をした時におっしゃってたのが、基準、標準や規制を作ることによって欧州はマーケットを作り、新しいものをチャンスと捉えて、市場自身の判断に委ねられるような市場作りを推し進めるのがアメリカ、そして日本はどちらかというと欧州に寄り、若しくは、その中間だという話をしてくれましたよね。

吉高

そうですね。日本は、米国のGAFAのようなプラットフォームビジネスなど新しいモデルを作るよりは、基準に沿ったものづくりが得意かもしれません。国の政策に沿って、GPIFがESG投資をしたら、一変しましたし、菅元首相がカーボンニュートラルと言えば、企業は一斉にその方針を打ち出しました。ただ、国際標準を作るという点では弱いかと思います。

河本

投資的な視点からみると、どっちが良くてどっちが悪いみたいなことはあるんですか?

吉高

どうでしょうか。日本人としての気質も大きく関係しているようには感じます。もともと、出る杭になるというのは避けがちな文化がありますよね。ただ、世界は大きなパラダイムシフトが起きているので、日本は変わっていかなければいけないと感じます。

河本

僕は投資と聞くと、時価総額が10億ドルにどれだけ早くなることを目指し、短期的に利益をあげることを求められる、ユニコーン企業をはじめとしたスタートアップがまず頭に浮かぶのですが。新しくビジネスを始める方の目的地というか、そういう人になるために頑張ろうといったような、それを善とするビジネスの傾向がありますよね。でも一方では、9割くらいの会社が潰れる中、短期競争をやっているのは、ESGで言っていることからは、相反しているように感じているんです。

最近では、急成長を遂げるユニコーン企業よりは、ゼブラ企業のタイプに興味を持ちます。ダイビングに関わる仕事や海に関わる仕事って、どちらかというと持続可能性や共存性を重要視するゼブラ企業に似ているのかなって感じます。資源が製造物ではなく、生命あるものなので。たとえば、人手が足りないからロボットを作ればいいではなく、結局、人間の力が必要なことはあると思っています。それって水中生物も一緒で、稚魚がいたとして、それが成魚になるまで時間がかかるから、環境維持に関してすごく長期的に考えなくてはいけないんです。そういった部分って、いままでクローズアップされて来なかったんです。

吉高

そうですね。環境ビジネスはゼブラ企業と定義できると思います。なぜなら企業利益と社会貢献、二つの価値創造の両立を長期的視点で目指し、利益を上げようとするから。ESG投資は、長期視点で企業の非財務価値と財務価値を統合して評価することを考えると、合致していると思います。

河本

文化や宗教が違うといったような陸地の問題は、隔たれているからこそ関係あったかもしれませんが、海洋環境に関しては世界中繋がっているわけで。たとえば、沖縄のある村で抱えている海の問題が、地球の裏側でもそっくりそのまま反映しているようなことはよくあります。そうなった時、やっぱり投資家としても海で起こっている課題というの投資を考える上で大きな項目になるんでしょうか?

吉高

たとえば、SDGsの17の目標に「海の豊かさを守ろう」がESG投資の指標として入っているわけですよね。2030年の目標の到達に向け、企業が本業として取り組めば、そこには兆単位のマーケットになる可能性があるわけですよ。つまり、「海の豊かさを守ろう」に関連したビジネスが、2030年頃には成長しそうだと判断する投資家はいると思います。しかし、それには企業がこの分野での成長戦略の情報を開示していかなければ投資家は評価ができないですよね。

河本さんが考えるようなことを、SDGsを発信する企業やその目的に資金使途を絞って債券を発行する企業が、「海の豊かさを守ろう」というビジネスとどう関わるか。そして、相手に伝わる、様々なアイディアと成長のストーリーやストラテジーを描いて、情報開示し積極的に発信しなければ投資家は目覚めないということなんです。

今まで企業は、ネガティブインパクトをなるべく排除する事を目的にCSR(企業の社会的責任)の重点においていました。しかし、投資家が求めているのは、そのような情報も投資リスクの低減という点では重視しますが、加えて、中長期的な企業価値の向上に関する情報も重要です。たとえば「海の豊かさを守ろう」を企業のマテリアリティ(重要事項)とする場合、ボランティア活動ではなく、ビジネスを通して10年後20年後にリスクを回避しその事業を成長させていく、というストーリーが描けていないと評価されないと思います。

なぜなら、短期的な必達目標の積み上げだけを考えている経営で、ふと気付いたら「10年後に世の中がこんな状態になっていて対応できない」というのでは、投資家にとってリスクになりますよね。

2030年のSDGs達成年、もしくは2050年のカーボンニュートラルの世界で、我々のビジネスはこうなっているだろう、というビジョンを設定しバックキャスティングで現在のすべきことを考え、シナリオを立て、かつ、これに対応するマイルストーンも必要となるでしょう。

このようなお話をしますと、そんなのは大手や上場企業だけの話と思われるかもしれません。投資家は、投資先のサプライチェーン管理も評価します。従って、上場企業と何らかのビジネスをする中小企業がこのような動きを知らずにいれば、ビジネスリスクとなり得ます。また、これは投資家との関係だけでなく、銀行なども融資先に対しても評価しだしています。これらをサステナブルファイナンスと言います。

たとえば、マリンスポーツや海洋資源に対して何らかの関係がある企業が非上場であり小規模の事業であっても、大手企業や、銀行などと関わるのであれば、これらの動きを知らなければ、ビジネス上のリスクになり得ますよね。一方、きちんと対応していれば、新たなビジネス機会になるかもしれません。そのビジネスパートナーに、SDGsでの成長戦略にストーリーを提供できるビジネスがあれば、新たなビジネスが生まれるかもしれません。

河本

であれば、両サイドに責任が生じてくるということですよね。

吉高

おっしゃるとおりです。そして、今、このサプライチェーンのリスクとビジネス機会においては気候変動が注目されています。たとえば、アップルなどは、アップルに製品を提供する企業に対して、再生可能エネルギー100%で生産するように求めたりしていますし、一方、横浜にある大川印刷さんは再生可能エネルギー100%で事業をすることにより新規の顧客を得ているといいます。もしかして、マリン関連で気候変動の課題に対応する事業をする会社で、同様のことが起こるかもしれませんよね。

河本

サプライチェーンの管理というと少しことばが強く感じてしまう部分もあるかなと感じるのですが、これはお互いが成長していくための循環的関係ととらえていいんですかね?

吉高

もちろんです。

日本の海が秘める「ブルーエコノミー」の可能性

河本

なるほど、SDGsと投資に関してかなり整理できました。僕はこれまで、ダイビングを通じて海での仕事をしてきました。これからもその仕事に夢を持って取り組んでいきたい。だからこそ、長期的に成長していくことが重要だと改めて感じていますし、。日本の海の魅力について、イメージチェンジしてもらいたいと思っています。

今までの日本って、海の仕事、海の魅力って話になると水産の方に寄りがちだったんですけど、これからはアクティビティやレジャーの方に流れがいくと思っていて。たとえば、他の国と比べてもサンゴの状況もいいんですね。また、黒潮が入ってることから透明度も素晴らしいわけです。

そこに回遊魚も流れてきて。そのような海洋資源をうまく利用し、レジャーにお金を集めていくには、僕らはどのようなPRをしたらいいのか。また、どんなことを伝えていったてらいいのでしょうか?

吉高

海洋資源の活用によってどのように雇用を生むかという課題に応える「ブルーエコノミー」には、海洋資源をどう保存し活用していくか、そこにはマリン観光事業も含まれています。

河本

「ブルーエコノミー」って新しい言葉に聞こえますが、まさに僕たちの活動はそのど真ん中にいると感じています。なぜなら、マリン観光事業を長期的に伸ばすための経験をダイバーは持っているから。だからこそ、ビジネスチャンスもあると思っているわけです。そこで気になってくるのはやはり、地球環境からの生じるリスクですね。

以前は、台風って日本の南で発生して、列島を縦断して北に抜けていくというのがセオリーだったと思うんですね。それがここ7、8年は日本列島に沿って関東にも上陸するようになり、さらに一昨年くらいには、関東から戻って関西に上陸するようなことが現実におきはじめています。

僕らのビジネスでいうと、こういう台風が来たらクローズだけどこれならいけるよね、といった感じでビジネス面で予測していたのがまるっきり通用しないようになってきていて。気候変動によって起こる台風の大きさや時期、そして数が変化してきているのは、投資家としてリスクが大きくなっているということなんでしょうか。

吉高

先ほどもいいましたが、気候変動は投資家の最も高い関心事項です。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)というのがあります。2015年のG20で開かれた、各国の財務大臣が集う金融安定理事会で、気候変動が金融システムの安定を脅かす、リーマンショックなみのリスクであると認識され、金融機関に対し投融資先の気候変動リスクに関して把握してもらうためのチームができたんですね。

その理由は、世界で甚大化した自然災害が多発していて、保険会社の支払額が莫大になり、万が一にでも保険会社が潰れたらドミノ倒し的に金融システムが不安定になるからなんです。気候変動に関するリスクは、勿論、脱炭素社会に向けて起きるリスク(石炭火力に頼る産業の衰退や炭素税など)もありますが、すでに気温が上昇し異常気象のため自然のバランスが崩れることにより資源循環のルールが変わってきました。海洋も勿論影響を受けています。だからこそ、ブルーエコノミーという言葉が出てきたのではないでしょうか。

河本

20年前にダイビングを始めた時には、ブルーカーボンや藻場に二酸化炭素を吸収させるなんてことは、ほんの1ミリすら考えていなかったわけですよ。だけど、海に潜った時に目に見えている魚が変化していくと、こんな大きな課題に繋がっていたのかということを肌で感じ、ここ数年でようやく気付いてきまして。

しかも僕らはこれを海の中の問題としてだけ考えていましたけど、日本で言うと人口減少であったり、またそれを解決する人もいなくなっているのが加速している現状も同じことだなと感じています。

だからこそ、いま地方創生が必要なんです。オーシャナとしては、そこを伝えるだけじゃなく、解決もする為に現場にも入っていくことを日々考えています。このような海側の人間の活動に対し、長期的な投資をしてくれる可能性って今後広がってくるんでしょうか。

吉高

いま企業側もそのような情報にアンテナを張るようになってきてはいます。SDGsに関する成長戦略のアイディアを自分たちだけでは考えるのには限界もあるからです。ただし、そこで重要になってくるのが、ストーリーだと思います。

これまで、日本企業は、良いことをして儲けるということを正面で語ることは少なかったけれど、今までコストして見られたものが、将来の成長に対する先行投資であり、それをストーリーに載せて語ることにより、これで成長するんだと投資家などのステークホルダーに理解してもらうのです。そういう世の中になってきたんだと認識するマインドセットが求められる時代に突入していると思います。

河本

やっぱり世界的な気候変動をはじめとした環境の変化や海洋ゴミ問題など、自然が破壊されていく要素をなくしていくために、ある種の産業革命的なことが起こっているとも考えられるのですかね。そのきっかけにダイバーがなれると嬉しいです。

吉高

いま、ここで人類の意識が変わっていかないと、地球はとんでもない状況になり、今後、経済維持はしていけないと思います。世界の国々が今の日本と同様の生活をすれば、地球は2.9個もいると言われているんですよ。

河本

いまの子どもたちに、よりよい環境や美しい海を残していくために、投資的な観点からなにかアドバイスってありますか?

吉高

「次世代へ繋ぐ」ということは、いかなる企業にとっても、一番効力があるトリガーになるのではないでしょうか。世界最高スピードで少子高齢化が進む日本で、地球環境の変化を敏感に感じている優秀な若い世代がたくさんいます。企業側が少ない優秀な人たちを採用しようと思ったら、SDGsネイティブと言われる世代に響く経営をしていないと、彼らから選ばれなくなりますし、投資家も社会も期待しなくなります。なぜなら、企業経営において人財は成長戦略の重要な要素ですし、人材は中小企業も含めあらゆる企業の財産であることはいうまでもありません。

河本

僕もいまocean+αを通じてこのようなことをやり始めたことで、なにか一緒にできること有りませんか?って言っていただけることが増えてきました。それなのに、そこに雇用を生み出すことや海の将来にお金注ぎこんでっていうように中々ならないところにはジレンマを感じています。そこを投資で解決できたら、すごく理想だなって。そのためのストーリーをもっともっと発信していかなければいませんね。

SDGsという指標を介すことで、ダイビングがもたらす経済効果や地方創生の可能性がより大きなものへとなりつつある。そして「ブルーエコノミー」に秘められたポテンシャルが、投資のへの窓口となり、これからの地球環境の保護への一助となることが今後期待される。次世代へと海を、地球をつなぐ準備は我々が思う以上に進められていると、この対談により深く感じることができた。

吉高まり

明治大学法学部卒、米国ミシガン大学環境・サステナビリティ大学院(現)科学修士。
慶應義塾大学大学院政策・メディア科非常勤講師。
同学科学術博士。
IT企業、米国投資銀行ブラウン・ブラザーズ・ハリマン、日興シティなどでの勤務を経て、2000年、東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)においてクリーン・エネルギー・ファイナンス部を立ち上げる。
途上国での温室効果ガス削減プロジェクトの資金枠組みづくり(カーボンクレジット組成など)で持続可能な経済を推進。
環境に配慮したファイナンス分野に精通。
これらの知見を活かし、政府、地方自治体、金融機関、事業会社などに向けて気候変動、SDGsビジネスやESG投資の領域についてアドバイス・講演などを実施。

一般社団法人Virtue Design

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PROFILE
東京都在住。ストリートカルチャー、ファッション、自動車・バイク、アウトドアを実際のライフスタイルとして持ち、そこから得た経験を軸に幅広いジャンルでフリーランスの編集者・文筆家として活動。
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