自然写真家・関戸紀倫さん、動画「VOICE」公開
自然写真家として水中写真をメインに世界中を撮影する一方で、映像クリエーターとしても活躍中の関戸紀倫さんの動画『VOICE | TOKYO ISLANDS【COVID-19】』(以下、『VOICE』)が、YouTubeで公開された。日本のとある島に住む1匹のウミガメの語りから始まる本動画。ウミガメは私たちに一体何を語りかけているのか…。作品について、制作者の紀倫さんに詳しくお話を伺った。
—————-ウミガメの語りが印象的な『VOICE』ですが、どんなメッセージが込められていますか。
この動画は、1匹のカメが近年感じた環境変化や人間の日々の行動に関して、私たちに語りかけているかのような手法で作成しました。私たちが毎日を生きているのと同じように、ウミガメも一日一日を生きています。
人間は自然の中でなくても生きていけるけど、ウミガメをはじめ、自然界の生きものはその中でしか生きられない。自然から離れた生活を送っていると、環境の変化やその中で暮らす生きものたちのこと、私たちの生活と自然との繋がりを忘れがちだし気づかないこともあると思います。
でもこの状態が、すごく地球にダメージを与えているんだということを、なるべく多くの人に知ってほしいし、気づいてほしい。そんなことを日々思っていたら、ウミガメの語りという表現は自然と生まれました。
▶八丈島・底土海水浴場のサンゴ礁が突然の一面白化、貴重な現地映像あり
—————-“自然環境の変化に気づいてほしい”というメッセージであれば、ゴミの映像など自然がダメージを負っているような映像がもっと差し込まれていても不思議ではない気もするのですが…。
撮影時に常々思っていることは、動画を見てくれた人が自然の美しい姿を知って喜んでくれたら、私自身も嬉しいということ。そして願わくば「こんなに美しい光景が地球上にあるのなら、自分の子供たちや大切な人たちにも見せてあげたい。だから自然を大切に守っていきたい」そんな風に思ってくれるきっかけに私の動画がなれたならと思っています。
—————-作品をご覧になった方にこうしてほしいといった具体的な希望やイメージはありますか。
日々の生活に追われていたり、ビルに囲まれて自然を感じられないような環境で働き、生活している方なら尚更、自然がどういった状態なのか気づきにくいように感じます。誰に何をどうしてほしいというよりかは、まずは動画を通して現状を知ってもらって、自然環境の変化や自然の大切さに気づいてもらえたらと思っています。
その結果、アクションに繋がればもちろん嬉しいことです。といっても大上段から「今の生活が悪い」ということを言いたいわけでは決してないし、ボランティアに参加してほしいだとか、今の生活を無理して変えてまで何かをして欲しいわけではないんです。
例えば、毎日飲み物をペットボトルで買っていたところを、1日でもいいから水筒に変えてみるとか、ビニール袋を使わずにショッピングしてみるとか、少しずつでいいからそういった行動に結びついていったらいいですね。
—————-カメの語りはそのままに、映像が自然風景から渋谷や新宿といった都心の風景に変わっていったのも印象的で、私たちの生活と自然の関連性を考えさせられました。
都心で暮らしていると、環境的にも自然との関わりを感じにくいと思うので、イメージしやすい丁度よい表現はないかなと考えたら、こうなりました。一見関係がないように思えても、僕たちの生活は自然と繋がっているということを表現したくて。
作品の途中に森の映像を差し込みましたが、森と海も繋がっています。以前、海の撮影で三浦半島・真鶴に訪れた時に、たまたま居合わせた地元の漁師さんから教えてもらったことがあります。「魚がいっぱい居るだろう?なんでか分かるか?これだけ大木がある真鶴は森が豊かな証拠。森の栄養が海に流れ込むから、魚がいっぱい居るんだよ」って。その時にハッと気づいて。「そうだよね、陸が豊かだから魚の餌がいっぱいあるんだよな、森と海は繋がっているんだな」と。
—————-紀倫さんの作品を通して自然からのメッセージを受け取れた気がします。貴重なお時間をありがとうございました。
紀倫さんが撮影した美しい自然風景とウミガメの言葉が織りなす映像は、まるで一本の短編映画のよう。みんなにシェアして、何ができるのかみんなで考えよう!
Special Thanks 関戸紀倫
1988年7月6日生まれ。
写真家で、ダイビングインストラクターでもあるフランス人の父と、日本人の母の間に生まれ、幼い頃から父に連れられて、ガラパゴス諸島やタイ、フィリピンなど自然豊かな場所に訪れるうちに、自然が大好きになる。
2010年にダイビングを始め、翌年には沖縄でダイビングインストラクターとして活動をスタート。
2013年からは、オーストラリアのダイビングクルーズにて働くことになり、そこで船内販売用の写真を撮り始める。
2014年10月にクルーズ船の仕事を終え、帰国前に念願の一眼レフを手に入れオーストラリアを放浪。
現在は、自然写真家として水中写真をメインに、世界で活躍中。
(文:染谷遥)