【プレゼントあり】「どうしてそうなった⁉ 海の生き物」吉野雄輔氏×編集者対談
自然科学のスペシャリスト、文一総合出版の写真絵本シリーズより、数多くの図鑑や写真集を手がける海洋写真家・吉野雄輔氏著『どうしてそうなった!? 海の生き物』全3部作は、2021年10月末に全巻出揃い、好評発売中!
色、形、暮らしと3つの異なるテーマで展開されているが、一貫しているのは生き物の‟生き方の範囲の広さ”を伝えているということ。
ページをひとたびめくれば、生き物たちのビックリする生態や、想像もつかない生き様に驚き、感動し、どうして?と好奇心が湧いてくる‟写真集のような子ども向けの本”なのである。
「教科書のような‟勉強のための本”ではなくて、‟感じてもらうための本”にしました」と語るのは文一総合出版の編集者・志水謙祐氏と水中写真家の吉野氏。
オーシャナ編集部では、本のタイトル「どうしてそうなった!?」に掛けて「どうして本になった!?」のか、事の経緯や制作にあたった想いについてお二人にインタビュー。
本になったきっかけは?
オーシャナ編集部(以下、—)
「どうしてそうなった!?」シリーズが出来たきっかけは何だったのですか?
志水氏
きっかけは、息子の友達家族たちと行った海水浴だったように思います。私はダイビングも好きなのですが、子どもたちが幼いということもあり、その時はシュノーケリングや磯遊びをしました。様子を見ていて思ったのですが、大人も子どもも、海の生き物に出会っても、それが何なのかあまり知らないように感じました。海は知っているし、好きなのに。その時、生き物との距離感を感じたんです。
そんなことがあって、吉野さんの著書「世界で一番美しい海のいきもの図鑑」(創元社刊)の子ども向けの本があってもいいんじゃないかと思い、吉野さんにお声がけしたのが始まりです。コロナ前ですから、2年少し前でしょうか。
どのようにして制作していったの?
—
「どうしてそうなった!?」シリーズを本にするにあたって、どんな風に制作していったのですか?
吉野氏
まずはどんな本にするのか、考えのすり合わせから始めました。初期の頃は、自分の想いを話すのに電話で2時間くらい話していたこともありました。
志水氏
そうですね、受話器が手汗や顔汗でべちょべちょになるくらい話し込んだことも。
吉野氏
すみませんです(笑)。でも、編集者とカメラマンって、一緒に一つの方向を向いて進んでいくのが望ましいと思っています。必要な話し合いもなく、バラバラな方向のまま進めたら、何のとりえもない本になってしまうでしょう。すごく時間がかかるけど、作り出す前の話し合い、やり取りがとても大切。
作り手の想いばかり優先するのではなく、読者にとって良いものであるかどうかも重要です。独りよがりにはならないように、読者にとって何がいいのか、作り手は何を届けようとしているのか、というように疑問を解きながら作っていくのが本だと思います。
志水氏
そうですね。文一総合出版としても、いままで図鑑ばかり作ってきて、児童書は初めて参入した領域なんです。ですから、児童書とは‟こういうのがいいよな”っていう想いはあっても、一方で不安を抱えながらのスタートでした。
そんな中で、吉野さんとの意見交換で、‟これがいいんだよ”っていう強い想いに勇気をもらって、自分の不安を払拭できたので、事前のやり取りをたくさんしてよかったと思っています。
‟子どもの本”として何を意識しましたか?
吉野氏
子どもの本って世の中にたくさんありますから、既存の本と一緒だったら、わざわざ買う必要ないかなって。
‟子どもの本”っていう意識はあえて捨てて行くようにして、自分たちの特徴みたいなものを感じてくれるように意識しました。
自分たち大人が、‟これは子どもの本だ!”っていう定義を押し付けるのはどうなんだろう?っていう気持ちもありますし。
志水氏
でも、本を買ってくれるのは親御さんだから、‟親が子どもに見せたい本”であれば、子どもが見る確率も増えるかもしれないので、難しいところですね。
吉野氏
そうですね。子どもに勉強させようとする親御さんは多いですが、自分が子どもの時を思い出してみると、たいして勉強していなかったり。
志水さんにも「勉強好きだった?」って聞いたら「好きじゃなかった」っていうから、「好きじゃないものを作るのはよそう」っていう話になったんです。
志水氏
教科書は子どもたちみんなが持っていますしね。
吉野氏
だから、‟勉強しなさい!”っていう本は避けたかったんです。
大人になると目的を持って勉強する機会が増えるからこそ、子ども時代にする勉強って‟ただ見ること”なんじゃないかと思います。
見たときに心が動く本。びっくりするとかきれいだなとか、そんな風に感じてもらえる本にしようと方向性が決まっていきました。
海っていったいどんなところなんだろうっていう好奇心、きれいなウミウシを見つけたときの感動とか、そういう本が子どもにはいいのかなと思っています。
また、紙媒体の特徴である、一枚一枚めくるっていうところも制作にあたって意識しました。めくるリズムとか、めくった先にある感情について考えたり。
本を見終わった先に、「海って面白そう!」、「海って実際に行ったらどうなんだろう?」って思ってくれたらいいですね。
志水氏
ほかには、どこから開いて読み始めてもいいように意識して制作したところもポイントです。
吉野氏
大人が本を読むときは、大抵、最初から読み始めるけど、子どもは真ん中ぐらいからいきなり読み始めたりするので。自由な子どもに合わせて、一見開き一写真、一テーマを意識して制作しました。
志水氏
私なんかは、まずはカバーをめくって、裏表紙を見ます。そのあと奥付けを見てから一番最初のページをめくりますけどね(笑)
吉野氏
それは職業病かもしれないけど(笑)。子どもは面白いね。一切ルール無視だから。別にルールは一つじゃないですからね。
志水氏
「どうしてそうなった!?」というタイトルにも、世の中にはたくさんの答えやものさしがあるというメッセージを込めています。
吉野氏
‟わからない”ってことはとてもすてきなことなのに、僕たち大人は学生の頃の勉強のクセで、理屈の上で物事を理解して1つの正解を導き出すのが、得意になっていませんか?
どれが正解とか間違いだとかを議論して答えを出すことよりも、この世にはいろんな生き様があふれていることを伝えたかったんです。
本書の文章も、わからないことをわかるように書くと途端に面白くなくなってしまいますから、あえて疑問が残る形にしています。
志水氏
人間の体の造りに関しても、頭があって体があって、心臓や血液があるから生きられるということはわかるけど、どうしてそうなったのかは未だよく分かっていない部分も多いですしね。
吉野氏
心臓も二個あれば心筋梗塞で死なないのに、なんで一個しかないんだろうとかね。
志水氏
ものの見方については、写真でも表現するようにしましたよね。
吉野氏
はい。三部作目となる「海の暮らし」の最後のページは、緑色の海の写真で締められています。‟きれいな海”といえば、一般的にイメージされるのは‟透明度が高い海”でしょう。でも、緑の海ってけっして汚い海ではないんです。プランクトンが多くて魚たちにとっては良い環境でもあります。
これも、水が澄んでいるだけが「良い海」なわけでなはい。違うものの見方があるんだよというメッセージです。
たくさんの想いが詰まった「どうしてそうなった!?」シリーズ。お子さま用にはもちろん、ギフト用にも、自分用にもぜひオススメしたい。
読者プレゼント情報
今回はなんとシリーズ3部作のうち、「海の形」、「海の暮らし」計2部を、文一総合出版からオーシャナ読者の皆さまにプレゼント。欲しい方はこぞってご応募を!
応募方法は下記をご覧ください。
【応募方法】
下記のメールアドレスに指定の件名で、希望のシリーズ名をご明記の上、メールをお送りください。
応募期限は、4月30日(土)まで。当選者には、メールにてご連絡いたします。発送は5月中旬から順次発送予定。
※1週間以内に送り先等の情報についてご返信がない場合は無効といたします
※希望シリーズ名を明記されない場合は、いずれかのシリーズをお送りいたします。
■応募先メールアドレス:info@oceana.ne.jp
■件名:オーシャナプレゼント 新作「どうしてそうなった!? 海の生き物シリーズ」
■希望シリーズ:「海の形」、「海の暮らし」
海洋写真家・吉野雄輔さんプロフィール
1954年、東京生まれ。
大きな海の写真から小さな生きものまで、スチール写真を専門に、40年以上撮影している。写真集、図鑑、写真絵本、雑誌、新聞、広告などの世界で幅広く活躍。
著書に『海の本』(角川書店)『山渓ハンディ図鑑 改訂版 日本の海水魚』(山と渓谷社)、『世界で一番美しい海のいきもの図鑑』(創元社)発売6年目でもAmazonでベストセラー1位、増刷決定、8刷。
たくさんのふしぎでは『海は大きな玉手箱』(101号)、『ウミガメは広い海をゆく』(174号)、『この子 なんの子? 魚の子』(294号)、『ヒトスジギンポ 笑う魚』(328号)、『サメは、ぼくのあこがれ』(354号)、『海のかたち ぼくの見たプランクトン』(391号)、『イカは大食らい』(第426号)など多数(福音館書店)
文一総合出版:https://www.bun-ichi.co.jp/