ハナヒゲウツボ&ダイビングで見られるウツボ10選~華麗なる「海のギャング」とその仲間たち
ウツボってどんな生き物?
駆け足ですが、ハナヒゲウツボについて紹介してみました。美しいうえに謎多き生態、ダイバーに人気があるのも当然です。
ここで、あらためてウツボとはどんな魚なのか少し探ってみましょう。
ウツボの仲間は世界に200種以上!
ウツボの仲間は、その細長い体形から予想されるようにウナギの仲間です。硬骨魚類の中のウナギ目というグループに属する、ウツボ科というカテゴリーにまとめられています。世界の海には、30cm程度の小型種から2~3mにもなる大型種まで16属200種以上が確認されており、日本では72種が記録されています(2025年7月現在)。特徴は、まず体が細長く、全体は厚い皮膚で覆われ、表面にはウロコがありません。胸ビレと腹ビレもなく、鰓孔は小さな穴となっています。
ちなみにウナギ目にはウツボ科のほか、ウナギ科やアナゴ科、ハモ科、ウミヘビ科などが知られています。皆さん、やっぱり細長い。
もう一つ、卵から孵化してからは、長期間の浮遊生活を送るという共通点が知られています。浮遊しやすいよう薄い葉っぱのような形状であるため、この時期の仔魚は葉形幼生(レプトセファルス幼生)と呼ばれています。
ウツボは人を襲うのか?

鋭い牙をもつウツボの仲間、英名ファングトゥースモレイ(Fangは牙、toothは歯、morayはウツボ)。アゾレス海など大西洋に分布
ウツボの仲間は小魚やタコ、エビ・カニなどを捕食しています。どの種類も口内に鋭い歯が並び、特に大型種に咬まれたら大変危険です。ダイバーに向かって大きく口を開け、威嚇しているように見える種類もいて、ちょっとコワイ。
そういえば、ハナヒゲウツボも理由はよくわかりませんが、いつも口を開けていますね。自然界では小さなエビや小魚などを食べているようで、スカシテンジクダイなどを追って穴から身を乗り出してくることもあります。水族館ではイカの切り身などを与えているそうです。しかし、ウツボにとってヒトは食事のメニューに含まれておらず、積極的に襲ってくることはありません。海中での咬傷事故は、ウツボにちょっかいを出して反撃されたか、ウツボが潜んでいる穴にうっかり手や脚をついて咬まれた、といったケースが多いようです。
実は美味しいウツボ
ウナギやアナゴ、ハモなどウナギ目の仲間には、美味な魚がたくさんいます。「ウツボも同じウナギ目、もしかして食べられるのでは?」と思った方はビンゴ!
実はウツボはとても美味しい魚。食用とされるのは南日本で最もよく見られる普通種、標準和名ウツボです。タコやエビ・カニを好んで食べており、餌からして美味しそうですね。
皮をはぐと美しい白身で、新鮮なものは刺身や湯引きもOK。高知ではカツオならぬウツボのたたきが名物です。そのほか和歌山県や千葉県(特に南房総)などでも、干物や唐揚げ、煮付け、佃煮など様々に料理され食べられています。


ダイビングで出会うウツボ10選
南日本でよく見る2種類

トラウツボ(左)とウツボ(右)。南伊豆・ヒリゾ浜で撮影
伊豆半島などのダイビングポイントで見られる代表的な種類は、トラウツボとウツボでしょう。いずれも夜行性で、昼間は岩礁や岩の亀裂や穴に潜んでいます。

オレンジと白の斑紋が美しく、特に小さな個体ほど鮮やか(たまに赤味が薄い個体もいる)。目の上の突起(後鼻孔)が長く、よく目立つ。成長すると長さ70~80cmほどで、インド・太平洋に分布

日本では最も普通に見られる種類。大きい個体は1mに達する。夜行性だが、昼間でも岩場や砂地に這い出てくることもある。南日本、伊豆・小笠原諸島、琉球列島、台湾やフィリピンなどに分布
意外とカワイイ気がする3種類
③ワカウツボ

画像は南伊豆で撮影された幼体。インド・太平洋に広く分布し、南日本の太平洋岸、沖縄などで見られる

独特の模様が特徴。インド・太平洋の浅いサンゴ礁に生息。日本では伊豆・小笠原諸島や沖縄などで見られる

白い虹彩が目立つ。東部インド洋から中・西部太平洋に分布し、日本では南日本の太平洋岸や沖縄で見られる
サンゴ礁で出会う5種類
⑥ゼブラウツボ

インド・太平洋のサンゴ礁の浅瀬に生息。穴の中に潜んでいることが多い。日本では沖縄、八丈島でたまに見られる

黄色の頭部、尖った口が特徴。ハワイを除くインド・太平洋のサンゴ礁に分布し、日本では沖縄などで見られる

体中の黒白の斑紋が特徴(口内にもある)。1.2mほどになる大型種。インド・西太平洋に分布

サンゴ礁を代表する大型種で、インド・太平洋に広く生息。鰓孔の周囲が黒い。写真はエビのクリーニングを受けているところ

斑紋は個体によって多少変異があるが、口の中が白いことで本種と識別できる。インド・太平洋の浅いサンゴ礁に生息
華麗なるハナヒゲウツボ、いかがでしたか。そのほかにも、海には様々な種類のウツボがいます。特にウツボとトラウツボはタイドプールや浅い岩礁でも見られるので、磯遊びでも会えますよ。ただし、絶対に手は出さないよう、ご注意ください。