耳抜きはいつどれぐらいすればいいのか?耳抜きのタイミングと頻度とは

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セブ島の魚の群れ(撮影:越智隆治)

これまでは、一回一回の耳抜きを訓練したり治すことについてお話ししてきました。

さて、実際のダイビングの現場で快適に耳抜きができる様にするためには、次の段階として、「どういうタイミングと頻度で耳抜きを行わなくてはならいのか」ということになります。

よく抜ける耳抜きができるようになっても、耳抜きをするタイミングが遅かったり、耳抜きを行なう頻度が足りなければ、それだけで耳が痛くなってしまいますし、耳が抜けなくなってしまいます。

最初の5mまでが重要!

みなさんは、ダイビングのCカードを取るためのエントリーレベルの講習で、下の図を使って、気圧と気体の体積について学んだと思います。

水深と気圧の関係

これはボイルの法則に基づくもので、温度が一定という条件下であれば、「圧力と気体の体積の積は一定」というものです。

海面での気圧が1気圧で気体の体積を1とした場合、水深10mでは2気圧となり、気体の体積は2分の1になることがわかりますが、この表がテキストとちょっと違うのは、一番右側の「気体の体積の差」という部分で、私が書き加えたものです。

実は、この「差」が分かってないと、このボイルの法則を学んだ意味がないのです。

気体の体積に注目してみてください。

水面から水深10mに潜ると、水面で1リットルだった風船は1/2、すなわち半分の500mlもしぼんでしまいます。

でも、同じ10m潜降する場合でも、水深20mから30mの場合では、1/3が1/4になるので、差し引き1/12リットル、すなわち83mlしかしぼんでいないのです!

そう、気体の収縮率は浅いところほど大きいので、逆に言えば深くなればなるほど耳抜きはいらなくなってくるのです。

すなわち、特に収縮率が高い水深5mまでの耳抜きが重要になってくるのです。

私がテクニカルダイビングで水深100mに潜るとき、最後の90mから100mは、耳抜きは1回するかしないかです。

テクニカルダイビング(ハイポキシア トライミックスダイビング)(モデル:三保仁)

水深100mのハイポキシア トライミックスダイビング(モデル:三保仁)

耳抜きをする具体的な頻度

テキストには、「耳に不快感を感じないように定期的に頻繁に」という理解しにくい言葉で書いてあります。

不快感とは、耳が痛くなってしまうのはもちろん不快ですが、耳に圧迫感を感じては、もういつもの状態ではないので「不快感」なのです。

圧迫感を感じない前に行なう理想的な耳抜きのタイミングと頻度はというと、以下のようになります。

  • 水面で1回目の耳抜き
  • 水深5mまでは50cmごとに耳抜き(できれば2回目は水深30cm)
  • 5〜10mは1mごとに耳抜き
  • 10m以深では、適当に

もちろん、これはビギナーのやり方で、いちいち止まっては耳抜きをする場合の話です。

ベテランになると潜降しながら耳抜きをしているので、水深5mまで10回も耳抜きはしていませんよね?
潜降速度にもよりますが、ゆっくりと耳抜き動作をするのであれば、3回ぐらいでしょうか。

ですから、潜水医学を知らない耳鼻科医もそう思っていますが、「深くなればなるほど水圧が増すので、耳抜きが頻繁に必要」というのは都市伝説です!

言い方を変えれば「浅いところほど耳抜きが必要」なのですから、「耳抜きが悪い人は、浅いところで潜ればよい」と考えているダイバーや耳鼻科医がかなりいますが、それは大間違いです。

耳抜きが悪い人は、浅いところほど危険!が正解なのです。

※さて、次回は耳抜き治療が終わった人の、テストダイビングについてお話しします。

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PROFILE
医大生時代にダイビングと出会いのめり込み、ダイビングのために時間とお金を捻出するために、他の趣味をどんどんやめてしまう。
クリニック開業後、好きが高じてダイビングインストラクターになり、現在は、テクニカルダイバーとして、ケーブダイビング、リブリーザーダイビング(rEvo)、大深度ダイビング(-100m越え)などの潜水を行なっている。
また、全国から潜水医学の講演依頼があり、ダイバーおよび耳鼻咽喉科医へ正しい潜水医学の普及をすべく活動。
その後、58才で耳鼻科開業医を引退し、第2の人生でメキシコ移住。メキシコセノーテを潜り三昧の日々を送る。
 
潜水歴30年、潜水本数約3000本。
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