日本人ダイバーために一部公開! ~深海への旅「The Deep展」〜

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The Deep展(提供:ボニー)

Grimpoteuthis sp. Dumbo octopus © 1999 MBARI

海の最深部へ潜った人より月面を歩いた人の方が多い!?

深海といえば、光がない暗闇の世界と思われがちですが、実はかなりの幻想的世界が広がっています。

2015年6月6日にシンガポール、マリーナ・ベイ・サンズ(Marina Bay Sands)のアートサイエンスミュージアム(ArtScience Museum)で「The Deep」という、深海に基づいた展示会が開催される予定です。

標本40点以上、神秘的な写真や特別映像を含むこの展示会は、美しい深海生物の種類、深海の多様性など、このほとんど知られていない世界について学ぶ機会です。

生きた化石、発光生物など初めてカメラに収められたものも展示されます。

展示会をリードしているのがフランス人のクレール・ヌヴィアンさん(Claire Nouvian)。

2001年カリフォルニア州モンテレー湾の水族館で4,000mに生存する植物の映像を見たきっかけで、深海生物の写真や見本の膨大な保存記録を作るため、世界の最も尊敬される研究者と協力し、深海の写真集を出版しました。

この写真集の成功を元に、クレールさんは同じ研究者と過去20年から25年にわたって採取された海洋生物の見本を集め、初のThe Deep展をパリの自然博物館(Natural History Museum)で2007年に開催しました。

海の最深部へ潜った人より月面を歩いた人が多いと言われています。
The Deepの狙いは、深海の神秘を明らかにする事です。

展示されている生物からは、深海で生命がどのように進化しているのか貴重な科学情報を得る事ができます。

この展示会を通して深海の生態系に対する認識を高め、深海保護の重要性に焦点を当てたいとArtScience MuseumのHonor Hargerさんは言います。

そんな展示会の一部を、シンガポールまでいけないダイバーのために一部ご紹介します!

The Deep展(提供:ボニー)

Tiburonia granrojo, The Big Red © 2002 MBARI

ユビアシクラゲ

この大きな柔らかい生物はモントリーベイ水族館研究所(MBARI)の研究者が発見しました。

他のクラゲとあまりにも違っていたので、研究者達は発見に使われたロボットTiburonの名をとり、新しい亜科Tiburoniinaeを作ったそうです。

ユビアシクラゲの特徴は、触手ではなく、4本から7本の立派な太い口腕で餌を捕まえる事です。

The Deep展(提供:ボニー)

Deep Coral Reefs: Out of Sight, Out of Mind © Les Watling for the Mountains in the Sea Research Team, IFE, URI-IAO, and NOAA.

深海サンゴ礁

深海には、数百平方キロメートルに渡るサンゴの森があり、そこには非常に豊かな植物が眠っています。

サメや頭足動物はそこで産卵し、海綿は魚や貝類を歓迎します。
まるでグレート・バリア・リーフの様ですが、ここで生存する生物は熱帯海では一切存在しません。

深海サンゴ礁は、40~2,000mもの深さで様々な生物を保護しています。

The Deep展(提供:ボニー)

Grimpoteuthis sp. Dumbo octopus © 1999 MBARI

ダンボオクトパス

あの有名なディズニーアニメにちなみ、「ダンボ」という愛称を持つこの小さな面白いタコは、まるで日本の漫画キャラクターのようです。

学術名グリムポテウティス(Grimpoteuthis)のダンボオクトパスはこれまでに14種ぐらいが確認されています。

海底に座った状態でよく見つかるそうですが、暗闇の中海底でじっとしていて、何をしているのでしょうか? 謎です!

The Deep展(提供:ボニー)

Jelly Benthocodon sp.(直径4cm、深さ500から3,500m)© 2002 MBARI

深海の赤いクラゲ

UFOのようなこの赤いクラゲは海底近くで泳いでいるのがしばしば見られます。
1000本から2000本もの数え切れない触手は、おそらく小さな深海底の甲殻類を捕まえようとしているのでしょう。

The Deep展(提供:ボニー)

Careproctus longifilis Threadfin snailfish( 15cm、深さ1,900~2,997m)© 2002 MBARI

クサウオの仲間?

この生物は、先史時代のオタマジャクシのようで、感覚に必要な穴が顔にいくつかついています。
深海の最古の生物ではないらしいですが、まるで生きた化石のようです。

こういう生物を発見すると、深海は太古の昔から変わっていない生物でいっぱいだと実感できます。

The Deep展(提供:ボニー)

Riftia pachyptila Giant tube worm(最大2cm、深さ2,000~2,850m)© 2003 MBARI

ヒゲムシ

この生物は、東太平洋の熱水噴出孔で発見されました。
餌となる化学合成細菌と共生しています。

専門家Robert D. Ballardさんは発見当時の不信感を覚えています。
「食物の摂取等に必要な器官、目や口等もなかったです。どうやって動いているのかも分からなくて、ミミズやヘビ、ウツボや植物でもありませんでした。これほど変わった生物は今まで見たことがなかったです。」

生物の他にも、深海保護活動の報告や米国有人潜水調査船ジョンソン・シー・リンク1(ハーバーブランチ海洋研究所)の写真なども展示されています。

The Deep展(提供:ボニー)

American submersible Johnson Sea Link-1 from The Harbor Branch Research Institute © 2006 Harbor Branch Oceanographic Institution

この潜水調査船は主に海洋科学研究に使われており、1,000mぐらいまで操作が可能です。

真ん中の球型部分にはパイロット一人と観測者一人が入り、深海の全景を見渡す事ができます。

後ろにはもう一人の観測者ともう一人の乗組員が入り、ビデオモニターと側面の窓から海が見えます。

この潜水調査船は1971年以来研究や調査に使われております。

深海は生命の故郷であり、宇宙より身近な存在なのにその過酷な環境ゆえ、まだまだ未知の世界です。

生物がどれだけ生存するかわからないこの神秘な世界。
興味のある方は、ぜひシンガポールで、その目で見て、深海の世界に触れていただければと思います。

これからも夢あふれる発見を期待したいです。
やっぱり深海は暗黒じゃないですね。

※The Deepのチケットは2015年5月11日から販売されます。
詳しい情報はこちらまで。
http://www.marinabaysands.com/museum/the-deep.html

■協力/The Deepメディア担当者 Gladys Sim

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PROFILE
イギリス生まれ、8歳から13歳まで日本で育ったイギリス人と日本人のハーフ。

2006年に再度来日し、ナレーター、翻訳者、ライターとしてNHKテレビ、ラジオ、日本駐在外国人向けのウェブサイトなどで活躍。
2010年ニューカレドニアで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、2011年以降定期的に日本で潜っている。

日本の海の魅力、多様な生物や地形等に感動し、海外であまり知られていない日本のダイビングを紹介する目的で、2011年にブログ(Rising Bubbles)を立ち上げた。

外国人向けのサイトや海外のダイビングサイトで日本のダイビングスポットを定期的に紹介しており、スコットランドのセントアンドリューズ大学で水産養殖も勉強中。

「ダイビングをきっかけに、日本の海がどれだけ魅力的なのかをすごく実感しました。この連載では、たくさんの情報を届けていきながら、海外からのトピックを取り上げ、日本と海外の違いや海外の視点等をシェアするのを楽しみにしております」
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