パプアニューギニアでは、この“ワイド”写真を狙え!中村卓哉が選ぶ写真映えするダイビングポイントBEST5
秘境、パプアニューギニア。
その海中世界は、私たちダイバーにワイド・マクロともに、圧倒的な自然の力を見せつけてくれます。
今回は、パプアニューギニアに通うこ20回以上、『パプアニューギニア〜海の起源をめぐる旅〜』という書籍も発行されている、水中写真家の中村卓哉さんに“写真映え”するダイビングポイントBEST5を選んでいただきました!
今回は、「ワイド編」をお送りします。
水中写真撮影を楽しまれているカメラ派の皆さん、ぜひ、今回ご紹介するダイビングポイントを巡ってみて下さいね。
中村卓哉さんが、パプアニューギニアで撮影された渾身の作品を、その魅力について語られたコメントとともにご紹介します。
(水中写真撮影に関するアドバイスもありますよ〜!)
また、各エリアについての情報も合わせてご紹介しますので、旅の参考にどうぞ。
1位は、写真集の表紙にも使われた写真を撮影された“あの”ダイビングポイントでした!!
では、さっそく5位からご紹介していきます。
5位「プラネットロック」マダン
マダンの海といえば、ギンガメアジやバラクーダの群れのイメージが強いが、実はサンゴのスケールも世界トップクラス。
特に、外洋に面した「プラネットロック」は、ハンマーなどの大物を狙うビッグポイントだが、実はエントリーポイントの根のトップに群生するテーブルサンゴの大きさは見事だ。
プランクトンが豊富で、透明度がなかなか高くならないため、モヤッとしている時もあるのだが、水が抜けて光が射し込むと雰囲気が一変し、竜宮城のような世界に様変わりする。
他のマダンのダイビングポイントとは別方向にあるため、海況が安定しないと行くことができないが、もし行くことができたら、毎回2本続けてリクエストするくらいのお気に入りポイントだ。
【ダイビングエリア紹介:マダン】
セピック川からビスマルク海に流れ込む、豊かな栄養分を湛えたマダンの海は、生命の“密度”が濃い海だ。多種のサンゴや根魚が、ひしめき合うように生息している。
群れをなすギンガメアジやバラクーダなどは、数も多いうえに、サイズもひとまわり大きい。潮の速さは、時期によってことなるが、穏やかな流れの中でも、ダイナミックな群れの動きを目にすることができる。
フーデッドカーペットシャークやピグミーシーホースなどとの出会いにも期待したい。
▶︎エリア:北西エリア
▶︎シーズンの目安:5〜11月(乾季)
▶︎ダイブリゾート:Madang Resort(マダンリゾート)(ダイビングサービスは、リゾート内のニューギニダイブアドベンチャーズ)
▶︎アクセス:ポートモレスビー空港から、ニューギニア航空の国内線(約1時間)に乗り継ぎマダン空港へ
4位「ディープピート」ケビエン
第二次世界大戦時に沈められた、水深40mに沈む飛行機を潜るディープポイント。
おそらくポイントの説明を聞いただけで、薄暗いレックダイビングを想像してしまうと思うが、飛行機が沈んでいる海底は真っ白い砂地だ。そのため、とても40mとは思えないほど明るい。
ヨスジフエダイが群れる光景は、まるで雲の上のようでもあり、夢の世界を見ているような錯覚をしてしまうほど!
明るいとは言え、水深は深く滞在できるのも数分だ。
夢中になりすぎないように、残圧と無減圧時間に十分注意しよう。
【ダイビングエリア紹介:ケビエン】
ニューアイルランド島の北側の先端、南緯2〜3度という赤道にほど近い場所に位置するケビエンには、燦々とした強い日差しが降り注ぐ。その太陽光の恵みを受けて力強く成長したサンゴには、数多くの魚たちが住み着いている。
潮通しがいいため、ギンガメアジやバラクーダの群れも見ごたえあり。時に、グレーリーフシャークやシルバーチップシャークが、横切ることもある。
第二次世界大戦時に沈められた、飛行機やフロート機、機関砲などが見られるポイントもあり、レックダイビングも楽しめる。
▶︎エリア:北西エリア
▶︎シーズンの目安:6〜10月(乾季)
▶︎ダイブリゾート:LISSENUNG ISLAND RESORT
▶︎アクセス:ポートモレスビー空港から、ニューギニア航空の国内線(約2時間)に乗り継ぎケビエン空港へ
3位「マラウェイ」トゥフィ
パプアニューギニアの中でも、魚の密度はトゥフィが一番多いのではないだろうか。
主に、外洋のシーマウントをぐるりと回るポイントが多く、潮がかかる場所にはスズメダイ、ウメイロやグルクンが視界を遮るほど群れている。
中でも、レッドピンジャロスナッパーの群れの密度は、ここトゥフィが別格で多い。
巨大な赤い群れの塊は「赤玉」と呼ばれるほどだ。
しかし、肉眼では体色は黒っぽく見え、うまくストロボの光を回さなければ、このように赤くは映らない。
また、魚へゆっくりアプローチしないと川のように群れが流れ、深場に逃げてしまうが、一方で、離れた場所から撮ると色が出ず真っ黒に……。
まさに、撮影の技術とダイビングの技術が試される被写体なのである。
腕に自信のある方は、ぜひトゥフィの赤玉を狙って欲しい。
【ダイビングエリア紹介:トゥフィ】
世界的にも珍しい、“熱帯フィヨルド(火山活動によってできた地形)”に抱かれた神秘的な海では、パプアニューギニア随一の魚影の濃さを堪能しよう。中でも、通称「赤玉」と呼ばれるレッドピンジャロスナッパーの群れは、トゥフィの名物となっている。
潮の流れがやや早く、ハンマーヘッドシャークやグレーリーフシャークも姿を現わす。一方で、名前さえもついていない、ベニハゼやニシキフウライウオなどのレア生物も要チェックだ。
▶︎エリア:南東エリア
▶︎シーズンの目安:11〜4月(雨季)
▶︎ダイブリゾート:TUFI RESORT
▶︎アクセス:ポートモレスビー空港から、小型飛行機(約1時間30分)に乗り継ぎトゥフィ空港へ
2位「キンベボミー」キンベ
“簡単に行くことができない場所”であるということがロマンをかき立て、いつしか憧れの地となることがある。
秘境と呼ばれるパプアニューギニアの中でも、キンベにあるキンベボミーというポイントは、まさにそんな場所だ。
キンベ湾のリーフや隠れ根には、比較的穏やかで水深も浅いポイントが多い。
しかし、ここキンベボミーは湾の出口に近い、港から離れた場所にあるため、海況が安定しないと向かうことができない。
さらに、根のトップが27mと深く、潮流も比較的早いためダイビングのスキルも求められる。
これらの条件を加味すると、ひと月に数回行けるかどうかというレベルだ。
しかし、このダイビングポイント・キンベボミーの魅力は、パプアニューギニアの海の魅力をギュッと一つの根に凝縮したような場所だということ。
太古の海を彷彿とさせる、ムチヤギやソフトコーラル、ウミカラマツなどが生い茂る海底と、そこに群れるバラクーダの巨大な群れのコントラストは、実にフォトジェニック。
こんな光景は、なかなか他の海では見ることができないのではないだろうか。
ちなみに、キンベ島周辺は、私も憧れる水中写真の巨匠・デビッドデュブレもお気に入りだという。
【ダイビングエリア紹介:キンベ】
ニューブリテン島の北側に位置するキンベから、ビスマルク海のステティン湾に点在しているダイビングポイントへ潜る。この海域には、約530種ものサンゴ、約860種もの魚類が見られると言われている。
バラクーダとツバメウオが交錯し群れをなしたり、メジロザメの仲間が横切ったりと海中でのドラマは尽きない。
また、大きなウミウチワの群生、垂れ下がるカイメンの仲間、鮮やかに揺れるヤギなど、個性的な造形美を誇る海中景観に出会えることだろう。
▶︎エリア:北西エリア
▶︎シーズンの目安:5〜11月(乾季)
▶︎ダイブリゾート:Walindi Plantation Resort(ワリンディプランテーションリゾート)
▶︎アクセス:ポートモレスビー空港から、ニューギニア航空の国内線(約1時間)に乗り継ぎホスキンス空港へ
1位「ディコンズリーフ」アロタウ
アロタウのタワリリゾートからも比較的近くにあるポイントなのだが、パプアニューギニアの中で最も写真映えするポイントが、このディコンズリーフだと思う。
私のパプアニューギニアの写真集『パプアニューギニア 海の起源をめぐる旅』のカバーに使われた作品も、ここで撮られたものだ。
まるで、額縁のように生え物で彩られた不思議な横穴の向こうに、パープルビューティーが乱舞するーー、パプアニューギニアの魅力を1枚の絵のように切り撮れる素敵な場所だ。
さらに、沿岸から迫り出した樹木の隙間から射し込む光のシャワーがとても神秘的でフォトジェニック。
カクレクマノミやパープルビューティー、ロウニンアジ、ウメイロなどを木漏れ日のシャワーと絡めて撮影すれば、間違いなくここでしか撮れないマジカルな写真となる。
写真の撮れ高も、そのクオリティーもパプアニューギニアでトップと言って異論はないのではないだろうか。
【ダイビングエリア紹介:アロタウ】
ソロモン海とコーラルシーに面したアロタウは、多種多様な生物が息づく色彩の宝庫だ。深く切り込んだ地形のミルン湾には、複雑な潮流が入り込む。
やわらかく輝くパープルビューティやウメイロを彩るように、数々の底生生物が華を添える光景は、楽園を思わせる。
ピグミーシーホースやウミウシの仲間、イロカエルアンコウなどのマクロ生物の豊富だ。
▶︎南東エリア
▶︎シーズンの目安:11〜4月(雨季)
▶︎ダイブリゾート:Tawali Leisure and Dive Resort
▶︎アクセス:ポートモレスビー空港から、ニューギニア航空の国内線(約1時間)に乗り継ぎアロタウ空港へ
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なんという迫力……。
多種の生物が息づき、躍動し、共存する。
そんな、パプアニューギニアの海の息吹を感じる作品が並びました!
広がり、奥行き、厚み、そして、光。
これぞ、ワイド写真の醍醐味ではないでしょうか。
一口にワイド写真と言っても、これだけのバリエーションが見られる海は、そうそうないのでは!?
次回は、うって変わって、「生物編」をお届け予定です!
さて、どんな生物がランクインするのでしょうか!?
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最後に、パプアニューギニアの旅情報を少しご紹介します。
ぜひ、旅の計画のご参考に!
パプアニューギニア
旅のポイント
パプアニューギニアのエリア情報
パプアニューギニアのダイビングエリアは、大きく「北西エリア」「南東エリア」の2つに分けられます。
1、北西エリア:マダン、キンベ、ケビエン、ラバウル
・パプアニューギニアが、乾季を迎える5〜11月がオンシーズンの目安となる。
・水温は、緯度によって異なるが、26〜28度程度だ。
2、南東エリア:ポートモレスビー、トゥフィ、アロタウ
・パプアニューギニアが、雨季を迎える10〜5月がオンシーズンの目安となる。
・水温は、28度前後だ。
パプアニューギニアは、北西エリアと南東エリアで気候が異なるため、乾季は北西エリア、雨季は南東エリアが、それぞれシーズンを迎えます。
そのため、エリアを選べば、一年を通してダイビングを楽しむことができます。
パプアニューギニアのアクセス情報
成田空港から、パプアニューギニアのポートモレスビー・ジャクソン国際空港までは、ニューギニア航空の直行便で約6時間30分。
○往路:21:15(成田)→翌5:05(ポートモレスビー)
○復路:14:20(成田)→20:05(ポートモレスビー)
往路・復路ともに、毎週土曜日に運行されています。
※2019年12月7日(土)、14日(土)、21日(土)は冬季運休予定
首都ポートモレスビーからダイビングエリアがあるそれぞれの都市には、ポートモレスビー以外、国内線でアクセスすることになります。
パプアニューギニアのリゾート事情
各ダイビングエリアにあるダイブリゾートを旅の拠点として利用しましょう。
マダンのMadang Resort(マダンリゾート)とキンベのWalindi Plantation Resort(ワリンディプランテーションリゾート)、アロタウのTawali Leisure and Dive Resortには、日本人の現地ガイドが常駐しているので、英語に不安がある方でも安心です。
プロフィール
水中写真家・中村卓哉
1975年東京都生まれ。
10才の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。
師匠は父親である水中写真家の中村征夫。
活動の場を広げるため2001年に沖縄に移住。その頃から辺野古の海に通いながら撮影を始める(現在は拠点を東京に置く)。
一般誌を中心に連載の執筆やカメラメーカーのアドバイザーなどの活動もおこなう。
最近ではテレビやラジオ、イベントへの出演を通じて、沖縄の海をはじめとする環境問題について言及する機会も多い。
2014年10月にパプアニューギニア・ダイビングアンバサダーに就任。
■著書:『わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山 川 海』(偕成社)、『海の辞典』(雷鳥社)『パプアニューギニア〜海の起源をめぐる旅〜』(雷鳥社)など。
■Sponsored by ニューギニア航空
25都市に就航している、パプアニューギニアの国営航空会社。機内食の味付けが日本人好みと評判です。
パプアニューギニアへのアクセスは、首都ポートモレスビーと成田空港間の直行便が便利。また、パプアニューギニア国内でも16路線運行しているため、ダイブトリップの貴重な相棒となってくれるはず!
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