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SDGs(エスディージーズ)で重要なのは“人”。ダイバーシティ(多様性)のその先へ〜対談:SDGパートナーズ・田瀬和夫さん×オーシャナ・河本雄太【後編】〜閲覧無制限

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オーシャナ・プロ
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「SDGs×ダイビングビジネス」連載第二弾!

プロフェッショナルとして人々を海へ導き、自然を介して感動を与えるダイビングビジネス。
その未来をSDGs(エスディージーズ)を基軸に考察した時、そこにはどんな世界が待っているのだろうか。

SDGs(エスディージーズ)とは
「Sustainable Development Goals」の略称。
2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき世界的な開発目標のこと。
17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されている。

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「SDGs×ダイビングビジネス」連載二回目は、SDGパートナーズ代表の田瀬和夫さんとオーシャナ代表の河本雄太の対談、後編をお届けします。

第一回目では、「ダイビング業界こそが、SDGsに積極的に取り組むべきだ」というメッセージとともに、SDGsをきっかけに社会貢献をかなえつつ、ダイビング業界と地方経済とが潤う可能性が語られました。

さて、具体的にはどうすればいいのでしょう?
どうやら“多様性”にヒントがありそうです。

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逆算で考える、ダイビング業界の
バックキャストとレバレッジポイント

河本雄太(以下、河本)

「ダイビング業界こそ、積極的にSDGsに取り組んだほうがいい」というのはわかりました。でも、具体的にどうすればいいのかがわからない方も多いです。田瀬さんは、“ありたい”“あるべき”未来の姿から逆算し、今必要な施策を考えていく「バックキャスティング」の重要性も説かれていますよね。

田瀬和夫(以下、田瀬)

はい。米国のジョン・F・ケネディ大統領は、1961年に「アポロ計画」を発表し、1969年7月20日に月面着陸を成功させました。壮大な目標を掲げ、それを叶えるために技術革新を起こしていくことを「ムーンショット」と呼びます。SDGsには、たくさんの「ムーンショット」が含まれているんです。

河本

日本の経営者には、一段ずつ階段を上っていく積み上げ型思考の方が多いですよね。

田瀬

そうですね。ビジネスにSDGsを取り入れ、目標を実現しようとするなら、アポロ計画のように次元の違う大きな理想を打ち立て、そこから逆算して、今、起こさなければならないイノベーションを導き出していかなくてはならない
その際は、梃子の原理で言うところの力点「レバレッジポイント」を押してあげるべきだと思うんです。

河本

「ここを押せ!」というポイントですね。ダイビング業界でいうと、例えば、どの辺りがレバレッジポイントになるんでしょうか。

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田瀬

ダイビング業界って、いまダイビングをやっている人ばかりに目を向けがちだと思うんです。そうではなくて、主婦とか障がいを持っている方とか、今までダイビングに関心がなかった人たちに来てもらうようにしなければいけない。そのためにはダイビング業界自体が、それこそダイバーシティ(多様性)を持つ必要があると思います。

河本

というと?

田瀬

「ダイビング業界にもいろいろな人間がいる」ということです。そう考えると、最初にやるべきことは、やはり“女性が活躍できる場所を作る”こと。

河本

良かった。うちのダイビングショップは比較的多いです(笑)。

田瀬

次に、障がい者やLGBTの人がいること。あとは外国人ですね。そうした多様性があると、これまでの凝り固まったダイビング業界のルールにとらわれることがないので、いろいろなアイデアが生まれてきます。それこそ、「良いものは高くて当たり前」というのが普通になってくるかもしれない。

河本

まず、スタッフ側から変えていくということですね。そうすることで新しいお客さんを獲得することができる。

田瀬

そうですね。組織は内側に発信するメッセージと外側に発信するメッセージが違ったらダメなんです。例えば「ある大手の生命保険会社で働く人たちが全員、自分の会社の保険に入っていない」としたらどう思いますか?その会社の保険には何か問題があるのではないかと思いませんか?

河本

思います。いまは“嘘がつけない時代”になっているんでしょうね。だからこそ、「いかに誠実であるべきか」が大事になってくる。そして、その誠実の向き合う相手は、他人だけじゃなく自分も含まれる。それが“働きがい”にもつながっていくということですね。

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田瀬

そうだと思います。誠実に仕事をしていると、クオリティも上がってきますしね。

海に入らなくても
陸上でできること

河本

クオリティという意味では「お客様が求めているものは何なのか」というのもありますね。「Cカード(認定証)がほしい」のか「ダイビングを安全に楽しみたい」のか。いまはプールで講習を受け、海での4回のダイビングを修了すれば、Cカードは発行できます。しかし、多くのお客様はCカードが欲しいのではなく、「きちんとしたダイビングの技術を習得したい」んだと思います。すると、教育カリキュラムを見直す必要もある。それこそ高い技術を持った上級インストラクターと一緒に10日間のダイビング講習を受けてもらうとか。それができれば、技術も知識も高いオープンウォーターダイバーが生まれますから。

田瀬

いま普通にダイビングをしたら、いくらくらいですか?

河本

1日2万円くらいだと思います。

田瀬

じゃあ、10日間だと20万円ですね。もし、高い技術を持ったインストラクターが10日間しっかり教えるというのなら、30万円でも払う人はいると思います。50万円でもいいかもしれません。一流のインストラクターが安全にダイビングをするための高い技術とSDGsを含めた世界最先端の知識を教えるということは、それくらいの価値があるからです。そして、ダイビング業界はそれだけの価値を提供できる人材を育てていかなければいけない。

河本

そうですね。

田瀬

そして、もうひとつ。一流の人材を育てるということも大事なんですが、クオリティの高い情報を発信することも重要です。オーシャナは英語版もあるんですか?

河本

いや、英語版はないんですよ。作らなければいけないと思っているんですが……。

田瀬

例えば「JAPAN」「DIVING」で検索すると、最初に「オーシャナ」のサイトが出てきて、そこにSDGsに積極的に取り組んでいて、圧倒的にクオリティの高い情報が載っていると、海外からのお客様は必ず増えると思うんです。それも意識が高い富裕層のお客様が多くなる。

河本

そうですね。そうなると英語でコミュニケーションができるインストラクターが必要になってきますね。外国人のスタッフを入れなければいけなくなる。あ、だから多様性なんですね。

田瀬

そうなんです。ですから、「ダイビング業界とSDGs」の話をするというと、皆さん海のことを語るのではないかと思われるんですが、重要なのは“人”なんです。そして、海に入らなくても、陸上でできることがほかにもたくさんあるんですよ。

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河本

そうか。例えば、子供たちを沖縄の山に連れて行って、赤土が流れ込んでいる川を見せて、一緒にラフティング(川下り)をして、最後は海の中のサンゴを見せる。そこでSDGsを考えてもらうというのはどうですか?

田瀬

いいですね。親子で参加するサマーキャンプなどで、そういうプログラムをあったら素敵ですよね。小学生くらいだと現状を理解できると思うし、お父さん、お母さんと一緒に山に登って、ラフティングをして、海でシュノーケリングをするのは、とても楽しいプログラムだと思います。ダイビングって何歳からできるんですか?

河本

保護者と一緒であれば10歳から体験ダイビングができます。

田瀬

じゃあ、ダイビングができる年齢の子どもはやってみてもいい。そうするとダイビングの裾野が広がるし、ダイビングのイメージも変わってくると思います。

河本

そうですね。企業のCSR(社会貢献)の部署の若手にも、そうしたダイビング研修を取り入れてもらいたいです。いろいろアイデアが広がってきますね。

田瀬

そうなんです。だから、ダイビング業界こそ、SDGsに積極的に取り組んでほしいんです。

河本

もちろん、ダイビングインストラクターは、インストラクション(講習)としてダイビングの技術を教えるとか、魚を見せるとかも大切です。一方で、お客様がダイビングをしているときに「幸せだな」と感じてもらえること、「ここに来てよかったな」と心から思える瞬間を提供することのほうが、もっと重要なのかもしれませんね。

田瀬和夫 Kazuo Tase
「SDGパートナーズ」代表取締役CEO

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1967年生まれ。福岡県出身。東京大学入学後、1992年に外務省に入省。国連日本政府代表一等書記官、緒方貞子氏補佐官、国連広報センター長などを歴任。2014年に国連を退職し、「デロイトトーマツコンサルテイング」の執行役員に就任。2017年、SDGパートナーズを設立。

河本雄太 Yuta Kawamoto
「オーシャナ」代表

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1981年生まれ。埼玉県出身。2016年より、海とダイビングの総合WEBサイト「ocean+α」を運営する株式会社オーシャナ代表取締役を務める。ダイビングショップ経営をはじめ、自然環境保護、地方創生などをキーワードに多角的な活動を続けている。

■構成:村上隆保(湘南BBQクラブ

<前編はこちら>

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