【秘密の楽園・エックスマウス】環境保全団体による大規模キャンペーンとは?

オーストラリアの西海岸に位置するエックスマウス。
人口2,500人ほどの小さな海沿いの街ですが、環境保全に対して真摯に向き合っている人が大変多いのです。

それはなぜか?

街の目と鼻の先に、500種以上の魚と200種のサンゴが生息するニンガルーリーフと、希少な動植物が生息するケープレンジ国立公園があるからです!

今日はそんなエックスマウスで一番大きい環境保全団体Cape Conservation Group (以下CCG)が行なっている活動についてレポートします。


出典:Cape Conservation Group

私はCCGで唯一の日本人ですが、他のメンバーはほとんどオージーです。
エックスマウスに拠点を置き、海と自然を愛する一般の人々で構成されています。

一般の人といっても、エックスマウスはサメ、マンタ、クジラ、サンゴなど、様々な生き物を専門に研究している生物学者が大変多い街。
私が以前インタビューしたシャチ研究家のジョン・トッターデルさんもCCGで会計責任者を務めています。


出典:John Totterdell

では、日本と同じく海に囲まれた島国、オーストラリアがその美しい自然を守るために取り組んでいる具体的な活動を見てみましょう!

特に今回は、政府と直接対話をしながら打ち出している大規模なキャンペーン2つをご紹介します。

秘密の楽園、エックスマウス湾とは?

エックスマウスの西側に広がるのはケープレンジ国立公園とニンガルーリーフですが、その東側に位置するのがエックスマウス湾。

エックスマウス湾は、ほとんど人間の手によって開発されておらず、この辺りでも「最もうまく保全されている秘密の場所」と呼ばれています。

湾の穏やかで保護された水域は、ザトウクジラの重要な育児ステーションで、近くのニンガルーリーフの健康を支えています。
また、海底には美しいマングローブとソフトコーラルのスポンジガーデンが広がっており、多くの種類の魚、サメ、エイ、甲殻類、無脊椎動物が安心して過ごせる楽園でもあるのです。

しかし、あまり認知されていない秘密の場所であるがゆえに、規制が少なく、十分な保護を受けられていません。
世界遺産に登録されているニンガルーリーフでは考えられない提案が、現在エックスマウス湾岸では積極的に推進されているのです。

Save Exmouth Gulf キャンペーン


今一番の脅威と言われているのは、ガスコインゲートウェイ(GGL)と呼ばれる会社の港建設計画。
大型クルーズ船や石油およびガス産業、軍艦、燃料タンカーのために、船舶用の停泊施設をエックスマウス湾内に建設しようとしているのです。

もしこの港が建設された場合、エックスマウス湾の環境破壊に繋がることは目に見えています。

CCGメンバーは、昨年9月に州評議会に建設中止を呼びかけるプレゼンテーションを行いましたが、州は湾の保全よりも資源産業を優先するとの意思表明を行いました。エックスマウスの環境について考える私たちにとって、大変残念な結果です。

CCGは、他の環境保全団体と協力して、次の総会までに港の建設が湾にもたらす影響について、できるだけ多くの情報を集めるために邁進しています。

55,000人で阻止した開発計画とは?


実はGGL以外にもエックスマウス湾は開発の的になっていました。
2019年11月に、世界的な石油ガス会社サブシー7(Subsea 7)が、エックスマウス湾に大規模なパイプライン製造施設と、港湾内で大型船を引っ張って動かす曳航事業を建設することを提案したのです。

この提案を受けて、なんと、55,000人以上の人々が西オーストラリアの環境保護局と国会議員に計画を中止するよう署名しました。
多くの人々が計画反対のTシャツを身にまとい、車に「ニンガルーを守ろう!(Protect Ningaloo)」のステッカーを貼り、SNSで拡散しました。


出典:Cape Conservation Group

実際にエックスマウスに住んでいて、地元の人と話すと Protect Ningalooの話題はよく出ますし、ステッカーをパソコンや携帯に貼っている人もよく見かけます。

これほどまでに多くの人々が参加したキャンペーンは、前例がなかったそうです。
ここニンガルーに住む人たちの、海と自然に対する愛がひしひしと伝わってきます。

そして、みんなの頑張りのおかげで、約1年後の2020年12月には、なんと!サブシー7が計画を撤廃すると発表したのです!
これは、ニンガルーにとって、そして世界中の海を愛する人たちにとって大きな勝利となりました。

また、同じ年の8月に西オーストラリア州環境大臣のスティーブン・ドーソンは湾岸の広範な評価を行うように環境保護局に指示しました。
この調査では、エックスマウス湾の環境的、文化的、社会的価値を評価し、湾内で現在提案されている開発計画が湾にどれだけの影響を及ぼすかについて評価することを目的としています。

この結果次第では、ガスコインゲートウェイを含めて、今後エックスマウス湾で開発を進めたいと思っている会社を阻止するための鍵となるかもしれません。

この「ニンガルーを守ろう!」キャンペーンは、一人一人の声は小さくても、それが集まることで大きな変化を生むことを証明してくれました。

今回紹介したキャンペーンは、ニンガルーの自然環境を短期間で直接破壊してしまう恐れのある大規模な建設計画の話でしたが、CCGはこれ以外にも、ビーチクリーンやサンゴのサンプリング、町からプラスチック製の袋を失くすプロジェクト、コンポストを推進するプロジェクト、ウミガメ保護プロジェクトなど、多岐にわたるプロジェクトを行なっています。

次回の記事では、ウミガメ保護プロジェクトについて詳しくお話します。
可愛らしいウミガメの赤ちゃんの写真もご紹介しますのでお楽しみに!

Text:Kanae Hasegawa

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