水中写真家・越智隆治がダイビングや撮影時に見舞われたトラブル体験談(第4回)

パプアニューギニアでダイビング中、モデルがエア切れ! そして急浮上

ニューカレドニアの魚の群れ(撮影:越智隆治)

これも、エアが0になっちゃった話。
だけど、今回エアが無くなったのは、僕ではなくて、一緒に潜った、女性モデル。

パプアニューギニアのロロアタで、ダイビングメーカーのカタログ撮影中での事。
現地人ガイド1名。モデル3名。メーカー関係者2名と僕の計7名でのダイビング中、リーフから水深30数mの砂地のボトムの中層を移動して、撮影目的のボミー(隠れ根)に移動していた。

モデルは3人とも、初心者。
泳ぎを見ながら(こころもとないな〜)と思って見ていると、その中の一人、Mちゃんが、どんどんと潜降していく。
どうやら浮上してしまうのを恐れて、ウエイトを相当にマイナス浮力にしていたようだった。

ニューカレドニアのダイバーのシルエット(撮影:越智隆治)

(大丈夫かな?)そう思って、様子を見ていると、自分が落ちて行っていることに気づいたのか、慌てて浮上を始めた(あ、沈んでること、やっと気づいたのかな)。
M ちゃんがいたのが、多分水深27~8m、僕がいたのは、水深20数m。
ところが、Mちゃんは僕に向かって一直線に浮上して来た。

(何何? 何か文句あるの?)と一瞬その勢いに怯んだのだけど、彼女が“エア切れ”のジェスチャーをしたので、(え〜!もう、まだ15分も経ってないよ)と思いながらも、慌ててオクトを探した。

実はカメラ機材が重いので、重器材は、現地でレンタルすることが多い。

その日はダイビング初日。
いつものように、器材をしっかりチェックすることなく、何気無くBCとレギュを装着していた。
当然あるものと思っていた、オクト。
しかし、そこでオクトが付いていない事に気づく。

(あ、これオクトついてない!)そこで、自分も一瞬慌てた。
完全に想定外だった。

しかし、Mちゃんはすでに目の前にいて、エアを要求している。
目を見ると多少パニック状態になっているのが分かった。

バディブリージングするしかない。

そう思い、自分のレギュを彼女に渡す。

奪い取るように、僕のレギュをくわえたMちゃん。
しかし、その後がさらに想定外だった。
すでにパニックになっていたMちゃん。僕のレギュを返してくれない。

(え〜、そうくるか)と思い、パニックがおさまるまでは、この状態で浮上を続けるしかないと判断し、ゆっくり息を吐きながら、彼女を捕まえて浮上を開始した。

そのとき、持っていたカメラハウジングが邪魔になったので、ボトムが水深30mの広い砂地だった事を思い出し、(後で回収すればいいや。このボトムなら絶対見つかるだろう)。
そう思って、浮上中に放棄することにした。

しかし、水深20mから、Mちゃんを抱えて、一度も呼吸することなく浮上することに不安が無い訳ではなかった。

とにかく5mくらいまで浮上したら、何がなんでもレギュを奪回しようと思っていたときに、側にメーカー関係者のIさんがいて、こちらを見ているのに気がついた。

僕は咄嗟に、カメラを放棄して空いた片手で、(すみません、エア下さい)とIさんにリクエスト。
で、そのIさんも、レンタルのギアをつけていて、オクトが無い事に、戸惑っていたようだったのだけど、とにかく、バディブリージングをしてもらうことに。

つまり、僕のレギュはMちゃんが一人で使い、Iさんのレギュを僕とIさんでバディブリージングするという、傍目に見たら、相当変な3角関係状態。
そのまま、安全停止することなく浮上した。

近くにボートが停泊していたので、Iさんに「すみません。Mちゃんをボートに連れていってもらえますか? 自分、カメラ探して来ます」と言って、再び潜降すると、そのあとに付いて来ていたメンバー全員にすぐに合流。
そこには、僕のカメラをすでにピックアップしていた現地人ガイドも。

現地人ガイドは、状況を把握していたのかいないのか、僕がやむおえず放棄したカメラを回収した事を自慢して、(誉めて)と言ってる感満載だった。
軽く「ありがとう」とは言ったけど、もちろん誉める気にはなれなかった。

(それよりも、こういうの助けるの、お前の役目じゃないの?)と思ったけど、後の祭りだし、何も言わないでおいた。

事後、Iさんは、少し頭痛がするとか言って、減圧症を気にしていたけど、結果的には気分の問題だったようで安心した。

にしても、オクトが無いなんて、とこのとき思ったのだけど、よくよく見たら、レンタルギアはすべてオクトが無いのではなくて、今まで使用した事の無い、インフレーター一体型のオクトパスだった。

ニューカレドニアの沈船(撮影:越智隆治)

例えば、バディが必要になった場合、オクトパスを供給するだけの単純な使用方法に対して、一体型オクトパスは本人が使用中のレギュレーター・セカンドステージをバディに供給、本人は一体型オクトパスに交換するという手順になる。

正直、そのときまで使用方法を知らなかった。

次に同じような事になったら、もう大丈夫だろうと思っていた翌日、今度は男性モデルのK君が、エア切れを起こし、僕のレギュをK君に渡し、インフレーター一体型オクトを僕がくわえて安全停止を行なうことになった。
使い方を知った翌日、早速実践である。

それはそれで、使い慣れて、経験値が増えていいんだけど、なぜ毎回自分なのか?
何故ガイドに救いを求めないのか? とこのときは、納得の行かないモデルの行動に、少し不満を抱いた。

通常なら、絶対にカメラマンで無く、ガイドに救いを求めるのが普通なのだけど。
なぜこのような事になったかと言うと、ガイドが日本語が話せない、現地の人だったからという結論に達した。
俺はガイドがダメな時のスーパーサブか。

いずれにしても、いざと言うときの事を考えると、レンタルギアよりも、使い慣れた器材を使うことが望ましいと感じたし、レンタルを使う場合でも、その器材の事を潜る前にしっかりチェックしておくことが重要だと感じた出来事だった。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。