ヘッドラインHEADLINE

DANアメリカの潜水事故レポート翻訳シリーズ(第8回)

アシカがダイバーを攻撃閲覧無制限

タグ:
,

DAN JAPAN Incident Report

※DANアメリカに寄せられた様々なトラブルレポートから抜粋してご紹介しています。

報告されたケース

午後1時38分、ダイビングクルーズ会社のオフィスの所長から、乗客が腹部をアシカに咬まれたと電話がありました。

このケースは、ロス・イスロテス(メキシコのエスプリット・サント島とパルティーダ島の近く)で午後12時35分頃に発生しました。
患者は意識レベルに問題は無く、その後の全経過で意識明晰でした。

アシカが襲ってきた時、少なくとも1人のガイドの監督のもと、コロニーの水深20フィート(訳注:約6m)よりも浅い水域で、24人のダイバーと共に潜っていたそうです。

アシカに襲われたあと(提供:DAN 写真:EdStetson)

写真:EdStetson(許可を得て掲載)

攻撃を受けた後、この被害者が船に戻るのを仲間のダイバーとクルーが手助けしました。
ケガの状態を確認するために3mmのウェットスーツを脱がし、止血が行われました。

午後2時47分頃、クルーズ船から待機していた小型ボートに移され、ビーチから上陸しました。
患者の状態はおおむね良好で、私が到着した時にはすでにクルーによって傷の手当がされ、包帯が巻かれていました。

救急車を待っていると移送が遅れるおそれがあると判断したので(残念ながら、このあたりの救急車はいつもタイムリーな対応ができるとは言えません)、ダイバーと今回の旅行のリーダーを私有車で移送するという決断をしました。

搬送している間、バイタルサイン*1は正常で、受傷しているのにも関わらずそれほど苦痛そうではありませんでした。患者が安定していて、出血もコントロールされていたので、最寄りのクリニックを選択しました。
この地域にある複数の病院は患者が多く混雑しているため、すぐには治療してもらえない可能性があったからです。
*1訳注:生命兆候(血圧・心拍数・呼吸・意識・体温など)

午後3時56分にクリニックへと到着し、担当医が患者の治療を行いました。
私は包帯と包帯剤*2を取り外すのを手伝ったので、しっかりと傷を観察することができました。
傷は主に平行した長さ約2インチ/幅0.5インチ/深さ0.5インチ(訳注:約5cm/1.3cm/1.3cm)の2本の裂傷で、小さな刺傷もいくつかありました。
*2訳注:ガーゼなど傷を保護するために覆うもの

医師とスタッフは傷を十分に消毒し、局所麻酔をして、傷を縫合しました。
2本の裂傷は皮下組織と皮膚の2層を縫合する必要がありました。
異物の排出のためにドレーン留置*3が行われました。
1つの小さな刺し傷は、皮膚のみ縫合しました。
*3訳注:動物や人の咬傷は不潔(汚染創)にて、汚いものを排出するために、完全に傷を閉鎖せずに、しばらく管(ドレーン)を入れておきます

アシカに襲われたあと(提供:DAN 写真:EdStetson)

写真:EdStetson(許可を得て掲載)

医師の指示で、看護師が破傷風トキソイドを投与しました*4。
*4訳注:汚染された傷では、破傷風予防のために行われます

午後6時5分までには医師の許可を得て病院を退出し、私たちがホテルまで付き添いました。
その後、DANワールド/トラベラーEMSにメールを打ち、電話で連絡しました。

専門家からのコメント

これは、ダイビング業者が事前に緊急行動計画を準備し、迷わず実行することの必要性を再確認させてくれる素晴らしいケースです。
また、緊急行動計画には減圧障害以外の緊急事態も組み込む必要がある、という良い例にもなっています。
そして、外傷への応急処置のトレーニングも絶対必要です。

このダイビング業者は、現地の事情に詳しい人に連絡し、情報を得たうえで利用できる人材・資材に基づいて決断がなされました。
医学的な管理をせず患者を移送する決断は、本来軽々しく行うべきではありません。

見るからに安定している患者でも、移送中に悪化する可能性があります。
このケースでは、早急な移送と適切な治療施設を選択したことによって、良い結果を得ることができました。

皮膚を貫通した海での怪我は、どんなものでも診断と治療が不可欠です。
文献によると、アシカの咬傷は感染症を合併する可能性が非常に大きいとされています。
たとえ見た目が小さな傷でも、適切な傷口の洗浄と消毒を疎かにしてはなりません。

適切に手当てされ、それが完璧だったとしても、感染症がないか、全ての傷で最少7日から10日間は観察する必要があります。
感染症の徴候には傷やその周辺の腫れの悪化、傷からの悪臭のする体液の滲出、患部から伸びる赤い筋、発熱と吐き気などが含まれます。

咬まれる前に何が起きて、このダイバーがどういう行動をしていたのかはわかりません。
何もしていないのに攻撃されたのかもしれませんし、ダイバーの不注意で意図せずアシカの攻撃的な反応を引き起こしたかもしれませんが、推測することはできません。

私たちは海洋生物の生活環境への訪問者として、見た目がどれほど遊び好きだったり従順なように見えても、彼らの行動に十分配慮する必要があります。

現地の環境を熟知した人達と共に、動物にどのように近づいて観察するか話し合い、常にそのアドバイスに従ってください。

-MartyMcCafferty,EMT-P,DMT,(DAN医療情報専門家)
写真:EdStetson(許可を得て掲載)

◆DAN JAPANの会員専用ページ(MyDAN)にて下記タイトルが読めます。

[Case24]残圧のないタンクでダイビング
[Case25]ダイビング後の肩の痛み(減圧症)をリブリーザーダイバーが自分で治療
[Case26]アシカがダイバーを攻撃

※こちらからアクセス↓
DANジャパンの広告

ページトップへ