【衝撃映像】ダイビング中に遭遇したウミガメのお尻から出てきたものは……!?
八丈島のダイビングショップ「アラベスク」のオーナー、小金沢 昌博氏から衝撃的な動画が届いた。アオウミガメのお尻からチョロッと出ているのは…?
出ているのはどうやら糸らしきもの。ダイバーがアオウミガメの様子を見ながら、ゆっくり引っ張っていくと、出るわ出るわの長い糸!材質は定かではないものの、人工物のような肌ざわりと質感だったそうだ。糸を排出した後、アオウミガメはゆっくり泳いでいったという。
こんな動画を見た後は、どうしても海洋ごみ問題について考えてしまう。
今回のように運よく排出されればそれでよいのかもしれない。しかし体内に残り続けたらどうなるのか。
そんなことを考えながら、この動画から海洋ごみが海の生物に及ぼす影響について深堀りしてみようと思う。
有毒物質を蓄積して炎症反応、摂食障害を引き起こすことも
今回出てきた糸のように、体内が傷ついてしまう鋭利なものでなければ、排便時にフンと一緒に出せばそれでいいのでは……なんて思ってしまったが、そう簡単にはいかないらしい。
海には、排便時に排出されないようなもっと小さいごみが存在している。これが最近よく耳にするマイクロプラスチックだ。
マイクロプラスチックとは、プラスチック製品が劣化して直径5mm以下の破片になったもののこと。0.001mm~0.1mmくらいのものはマイクロビーズと呼ばれている。
マイクロビーズは、もともと小さいサイズで製造されたもの(歯磨き粉などの研磨剤や洗剤などに使用されている)を指す。
マイクロプラスチックはよくまとまって防波堤や海岸付近の海面に浮かんでいたりするので、見たことがある方も多いのでは。その一部は海中または海底に沈んでいくので、今回のウミガメをはじめとした海洋生物たちがエサと間違えて食べてしまう。
しかもこのマイクロプラスチックは、海中の有害化学物質有を取り込みやすいと科学雑誌や大学の研究機関などでも懸念事項として発表されている。有害化学物質には、内分泌かく乱を引き起こしたり、発がん性物質を持つ残留性有機汚染物質(POPs)も含まれる。
有害化学物質を取り込んだごみを食べた生き物たちの体の中はどうなるのか……。
東京農工大学の研究では、魚の肝機能障害や摂食障害が引き起こされたり、牡蠣の再生産能力が落ちたりしたという実験結果も報告されている。
取り込んだごみが排出されず体内に蓄積するだけでなく、有害化学物質を体組織に吸収してしまうことで、さまざまな体の機能に影響を及ぼすなんて恐ろしすぎる。
食物連鎖を通じて有害化学物質が運ばれる可能性も
生き物たちが有害化学物質を取り込んだあとも、負の連鎖は続く。
有害化学物質を取り込んだ小型の生き物を中型の生き物が食べ、さらに大型の生き物が中型の生き物を食べといったように食物連鎖を通じて有害化学物質の共有が引き起こされる恐れもある。この連鎖の中にわたしたちも含まれているのはご承知の通り。
とはいえ悲観的なニュースばかりではない。国際的に環境の保護活動をおこなっている国連環境計画(UNEP)では、このような海洋ごみ問題を受け、海を守るためのガイドラインを作成している。
「Green Fins(グリーン・フィンズ)」といって、ダイビング・シュノーケリングの唯一の国際環境基準で、いわば‟環境に優しい海遊びのためのガイドライン”だ。
現在、11カ国・約600のダイビングショップに導入されており、これからさらに増えていくことだろう。日本国内でも沖縄本島・恩納村で導入が始まっている。
ウミガメのお尻から出てきた糸から、海ごみについて想いを巡らせてみた。残念ながら今回の動画のようなことが、あちこちの海で起こっているのだろう。オーシャナでは今後も海からの‟気づいてサイン”を受け取り、発信していく。