タイガーシャーク6匹に囲まれて素潜りする男

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タイガーシャーク

バハマで、冬にタイガーシャーククルーズのチャータートリップを企画している。

日本のダイバーの間では、まだまだ「恐いサメ」のイメージが強いタイガーシャーク(和名、イタチザメ)。
しかし、このクルーズ、欧米人の間では、夏のドルフィンクルーズよりはるかに人気で、2年先のクルーズの予約もなかなか取れない盛況ぶり。

昨シーズンも、22週もこのタイガーシャーククルーズを行なった、このクルーズ船のクルーの中に、とんでも無い体験をしている奴がいた。

あるクルーズ期間中、テレビの水中ロケが行われた。
ドラム缶大に凍らせた餌を船の船尾に結びつけて、レモンシャークやタイガーシャークを集めて撮影をするというものだった。
しかし、海が荒れていたせいもあり、餌に結びつけていたロープが千切れてしまったそうだ。

このドラム缶大の餌にサメたちが、群がってきて、食らいつくところを撮影するのがメインの予定だったので、キャプテンからの指示かデレクターからの指示かわからないけど、「千切れてしまったビッグベイト(餌)を取りに行け」という普通では考えられない指令を出されたそのクルー。

はっきり言って、自分なら、「とても名誉な事ですが、命が惜しいので、お断りします」と即効で丁重にお断りするだろう、そんな指令に対して、なんと、サメがうようよいる荒れた海域に一人で回収に出かけたそうだ。
しかも、素潜りで。

それだけでも、まったく「ありえへん」話だ。

しかし、彼は指令通りに、ドラム缶大に凍らされた餌のついたロープを引っぱりながら、ボートまで戻ってきたのだという。

「だ、大丈夫だったの?サメは?」と訪ねてみたところ、「途中でタイガーシャーク6匹に囲まれて、そいつらを手で払いのけながら、餌を死守して戻ってきた」と笑っていた。
年齢は僕の息子でもおかしくないほど若いんだけど、僕は、呆れて笑いながらも、彼に尊敬の眼差しを向けずにはいられなかった。

タイガーシャーク

で、撮影は彼の活躍のおかげで無事成功したそうなんだけど、巨大な餌にかぶりつくシーンよりも、そのクルーが、6匹のタイガーシャークに囲まれて、その餌を引っぱりながら、素潜りでボートに戻って来るシーン撮影した方が、よっぽど視聴率取れたんじゃないかなとか思ったりした。

僕がクルーズ乗船中も、「新しい技考えたから、撮影してくれる?」というので、何をするのかなと思ったら、餌食べにやってきたレモンシャークやタイガーシャークの鼻先に手を押し当てて、そのまま撫でるように手を口の上まで持ってくるパフォーマンスを何度も見せたりしていたことだ。

タイガーシャーク

「何やってるんだよ!」と思ったけど、まあ、素潜りで餌持って、6匹のタイガーシャークに囲まれちゃった経験のある奴にしてみれば、日常茶飯事だったのかもしれない。

ちなみに、自分もその後サメに対してちょっとマヒしちゃって、素潜りで入れるようになってしまった。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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