“ハンドウイルカ”と“バンドウイルカ”、どっちの呼び方が正しいか

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御蔵島のイルカ

東京都における御蔵島の知名度は?

実は!今月18日から、しながわ水族館にて「イルカがいるから御蔵島に行こう展」と銘打って、イルカ写真パネル展を開催しています。

御蔵島から主体的に内地でイベントを行う“海外遠征”は、初めての試み!と言っても過言ではありません。
今月末までなので、まだの方は是非しながわ水族館へ!!
(注:しながわ水族館は、エプソン品川アクアスタジアムとは違います。京急大森海岸駅が最寄りです。)

イルカがいるから御蔵島に行こう展

私も週末に現地で解説をさせて頂いており、身にしみて分かったことがあります。

先々週のコラムにて「御蔵島の知名度は都内でも10%程度」と書いたのですが、全くのウソでした。
「みくらしまご存知ですか?」と声をかけたお客様のうち「はぁ、名前くらいは」と申し訳なさそうに答えて下さった方は、30名に1名いるかいないか。

ここに謹んで訂正いたします↓。
「都内における御蔵島の認知度3%程度」

“ハンドウイルカ”、“バンドウイルカ”、どっちが正解?

さて、パネル展でよく聞かれたことがあります。

これは島でもよく聞かれるのですが、「バンドウイルカ?ハンドウイルカ?どっちが正解なの?」です。
答えから言うと「どちらも正解」となるのですが、一般的にはバンドウと濁音のつく方で呼ばれることが多いようです。

イルカがいるから御蔵島に行こう展

諸説あるうち、信憑性が高そうな説を一つご紹介すると、もともと和歌山あたりの漁師さんがオキゴンドウやマゴンドウなどのゴンドウ類とサイズを比較して、半分くらいという意味で「ハンドウ」と呼んでいたそうです。

水族館では、東大海洋研究所の故・西脇昌治博士が提唱し「バンドウイルカ」と呼ばれることが多くなったとのこと。

ほとんどの人にとって最初にイルカを見るのは水族館ですから、こちらの呼び方がメジャーなのもうなずけます。

そして研究者間でも、水族館の飼育個体を使って研究している人は「バンドウイルカ」、御蔵島や小笠原で野生個体を対象に研究している人は「ハンドウ」と、それぞれ心がけて呼んでいます。

私は、バンドウでもハンドウでもどちらでもよく、どちらの呼称を使用するか迷っていたのですが、幸い御蔵島のイルカは2002年にハンドウイルカ(Tursiops truncatus)とは別種のミナミハンドウイルカ(Tursiops aduncus)ということが明らかになりました。あたまにミナミが着くと「バ」より「ハ」の方が発音しやすくなったため、素直にミナミハンドウと言うようにしています。

御蔵島の人が“みくらしま”と呼ぶ理由

同じような問題(?)にミクラジマとミクラシマがあります。
行政的にはジマが正しい使い方のようですが、島のお年寄りは皆「シマ」を好みます。

理由を聞くと「御蔵は昔からシマも人も、一点のニゴリも無く生きてきたからだ」と洒落た答えが返ってきました。
ちなみに村役場のホームページのドメイン名も「mikurasima」と濁っていません。

引用文献:Kakuda T., Y. Tajima, K. Arai, K. Kogi, T. Hishii, T. K. Yamada 2002. On the resident “Bottlenose Dolphins” from Mikura water. Mem. Natn. Sci. Mus., Tokyo, (38)

御蔵島のイルカパネル展「イルカがいるから御蔵島にいこう展」開催中!

東京の島に泳ぐ野生のイルカ。
御蔵島で撮影されたミナミハンドウイルカの姿を写真や動画で紹介します。
30カットを越える厳選写真に子供向けの解説をつけました。

週末は、御蔵島から解説員が常駐します。
また、御蔵島をフィールドにする研究者を招いてのミニレクチャーも開催します。

●期間
2014年1月18日~1月31日
●場所
しながわ水族館多目的ホール
●料金
しながわ水族館入館料のみ(パネル展は無料です)

会期中のしながわ水族館の営業情報
●開館時間
10:00-17:00(入館は16:30まで)
●休館日
毎週火曜
●料金
大人・高校生1300円、中学生・小学生600円、幼児(4歳以上)300円、シルバー(65歳以上)1200円、3歳以下無料
詳細は水族館HPをご覧ください。
営業時間・入館料金|ご案内|しながわ水族館

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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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