イルカは何歳まで生きるのか?イルカの寿命の調べ方

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先日、9月20日土曜日で今シーズンの「イルカ夜話」は終了しました。
「イルカ夜話」とは、御蔵島観光協会で行っている無料のナイトレクチャーで、夏の土曜日夜にイルカや鯨類全般、御蔵島のこぼれ話などをトピックにしています。

ドルフィンスイムが2倍楽しくなる御蔵島の「イルカ夜会」

その夜話で「イルカの寿命はどのくらい?」というご質問をよく頂きました。
その場ではテキトーに答えていたのですが、気になったのできちんと調べてみました。

でも動物の「寿命」どうやって調べるんだろう?

1.飼う

生年の分かっている個体を飼ってみる。これが一番確実です。

御蔵島で見られるイルカと同種のミナミハンドウを国内で唯一飼育しているのは、沖縄の海洋博公園です

美ら海水族館のすぐ脇のプール「オキちゃん劇場」のオキちゃんは、ミナミハンドウイルカなんです。

正確な生年は残念ながら分かっていませんが、1975年の沖縄国際海洋博覧会のために、奄美大島近海で捕獲された個体なのはわかっています。

捕獲時にワカモノ個体(3~5歳くらいの?)だったと聞いた事があります。
という事は、すでにアラフォー。
ひょっとするとオーバーフォーティーですね。
今も現役でショーをこなす、元気イルカです。

2.群れごと獲る

オキちゃんの功績で、40年は生きる!と言う事が分かりましたが、やはり野性下と飼育下では、寿命も異なるかもしれません。

野生のイルカでは、過去にはイルカ漁がデータ収集に大きな役割を果たしていました。

粕谷ら(1997)の研究によれば、追込み漁で群れごと獲られたハンドウイルカについて、全個体の年齢を調べたところ、メスで45.5歳、オスで43.5歳が最高齢であったと報告されています。

ちなみに、イルカの年齢は、歯の象牙質やセメント質に形成される年輪を使って調べることができます。

生きたイルカの年齢は生年から観察し続けないと分かりませんが、ミナミハンドウは加齢に伴って腹部に斑点が出現するので、その斑点の濃さである程度の齢期はわかります。

歳をとったミナミハンドウは腹部に斑点が出てきます。個体差はありますが、10歳ころになると生殖孔のあたりから斑点が出始め、歳をとるにつれて胸ビレ方向まで拡散、濃くなっていきます

3.やっぱり個体識別

しかしイルカ漁の提供するデータは、すでに死んでしまったイルカについての情報となってしまいます。
ヒトに獲られなければ、まだ数年生きた可能性もあります。
生きているものを生きたまま調べるには、個体識別による長期調査しかありません。

飼育個体やイルカ漁が提供してくれたデータから、ミナミハンドウは少なくとも40年生きることがわかっています。

ということは、最低でも40年。
ひょっとすると60年くらいは調査を続けないと、御蔵のイルカの平均寿命さえわからない、かもしれません。

奥に写るお母さんイルカは、1994年生れの20歳

御蔵のイルカシーズンはだいたい10月いっぱい。
21年目となった今年の調査も大詰めを迎えています。

調査が開始された1994年生まれのイルカは、20歳です。
イルカと同い年の大学生が調査員として調査に参加するようになりました。
そりゃ、僕も歳とるわけです。

生きているうちに御蔵のイルカの寿命もわかる…間に合うかなぁ。

参考文献
■粕谷俊雄, 2011, イルカ ー小型鯨類の保全生物学, 東京大学出版会

▼イルカについての知識はこちらの記事から




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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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