ocean+αヘッドラインHEADLINE

川本剛志(久米島)×鉄多加志(三保)×越智隆治(オーシャナ)同級生鼎談!(第5回)

ガイド会川本、鉄、そして越智。同級生三人の写真への思いとは閲覧無制限

カテゴリ:
徒然コラム

川本剛志×鉄多加志×越智隆治 同級生対談

ガイド会・会長の川本剛志さん、事務局長の鉄多加志さんをお招きし、2人と同級生のオーシャナ代表・越智隆治をくわえた3人による鼎談、第5回(最終回)です。
これまでの回は、こちらをご覧ください。

■対談ゲスト/川本剛志(久米島・ダイブエスディバン)、鉄多加志(静岡三保・アイアン)、越智隆治(オーシャナ代表・カメラマン)
■撮影/小川理志(ニューカレドニア・アリゼ
■構成・聞き手/寺山英樹(オーシャナ編集長)

久米島のザトウクジラ(撮影:川本剛志)

撮影:川本剛志

―――

ここからは、話をガラリと変えて、せっかく写真好きの3人に集まっていただいたので写真についてお聞きします。まず、写真を撮るようになったきっかけを教えてください。

川本

もう20年以上も前ですが、久米島をアピールしようとダイビング雑誌の取材に来てもらいました。でも、やっぱり時間も限られていますし、ガイドとしても発展途上だったので、なかなか撮れない、撮らせてあげられない。じゃあ、少しでも久米島をアピールするには、一番よく知っていて、一番長くそこにいる自分で撮ってみようと思って始めました。

僕は、祖父の代から撮影を含めて潜水業界の仕事をしていましたので、小学生くらいから家にニコノスのⅠ型とかⅡ型があるような環境でした。いわば小学生のころからカメラ小僧。大学卒業後も、しばらく撮影の仕事をしていました。どちらかといえばムービーがメインで、スチールも撮れるカメラマンという感じですね。

越智

お子さん、ライカちゃんって名前なんだよ。この中で、一番写真歴が長いですよね。

―――

鉄さんといえば生態写真というイメージですが、小さい時からマクロ撮影が中心だったのでしょうか?

いえいえ、南の海も好きで、最初はもっぱらワイドの撮影ばっかりしていました。マクロを始めたのは清水に戻ってきてからです。

自分の生まれた環境で写真を撮るには、マクロで生態写真を撮っていかないと海が表現できないということで、そこからマクロを始めました。実は割とマクロは後発なんですよ。

三保のハゼ(撮影:鉄多加志)

撮影:鉄多加志

どうやったらいろんな人に三保の海の魅力を知ってもらえるかと考えると、話だけだと伝わらないので、写真や映像で見てもらった方がわかりやすい。
伝達の手法としては一番適しているのかなと思ってマクロで生態写真を撮っています。

―――

越智さんが写真を始めたきっかけは何でしょうか?

越智

自分の場合は、新聞社に入ってから。この中で一番遅い。

もともとはカメラマンになりたいというより報道関係の仕事に就きたかった。そして、面接した時に「潜水取材したいです」と言ったら、潜水取材するなら写真部じゃないとできないと言われので、じゃあ、写真部に入ろうと。

―――

じゃあ、まったく写真の勉強をしてこなったのですか?

越智

うん。実技試験があって、カメラとフィルムを渡されて街に出されたんだけど、そもそもフィルムの入れ方がわからないので、その辺を歩いている人にフィルム入れてもらって。

巻き戻しもわからなくて、パカって空けたらフィルム感光しちゃったり。慌てて締めたけど(笑)

一同

(笑)

―――

カメラマンになりたくて勉強してきた人もいっぱいいた中、なぜ、写真に素人だった自分が受かったと思いますか?

越智

試験では、フィルム3本渡されて“都会の色”ってテーマで撮ってこいって言われて、街に放たれた。入社した後から聞いたんだけど、他の人はモノや建物ばっかり撮っていた中、自分は人ばかり撮っていた。人にしかカメラを向けなかった。

ピントもへったくれもなかったけど、というか、感光しちゃったりもしてたんだけど(笑)、報道カメラマンの要素として、嫌がられても人にカメラを向けなければならない。

上手い下手は会社に入ってから身につければよくて、いざというときの度胸を買われたみたいだね。

―――

皆さんの世代は、フィルムからデジタルへの移行を体験し、撮影スタイルがガラリと変わったと思います。初期のころは画質の問題などもありましたが、デジカメ撮影に関して、今や何かデメリットってありますか?

川本

焦点が雑に感じます。やはり、これで決めなければ!と思うと、集中して、そこに合わせるという気概がありました。

やっぱり、質の問題でいえば下がっていると思います。

越智

取り逃すことはないけど、集中力には欠けますよね。

そうですね。一枚に対する集中力の問題。

自分がこれまで撮ってきた中で好きな写真というのは、圧倒的にフィルムの時代のやつが多いです。まあ、思い入れもあるかもしれないですけど。

越智

写真の価値は下がっているよね。プロとしてはシビアな時代になった。誰でもいい写真が撮れるし、いい写真にも見慣れているので、ちょっとやそっとの写真じゃ納得してもらえない。
ああ、やっぱり違うなって思ってもらう写真を撮らないと、プロってこの程度なのって思われちゃうので、その辺はさらにシビア。

ただ、クオリティーより撮影カットのバリエーションを求められるときなんかは、確認して次に移れるし、撮り逃さないのでメリットもあるけどね。アーティスティックな写真ではなく、要求に応えるとか、ジャーナリスティックという意味では仕事をこなしやすくはなっている。

川本

ガイドとしても、フィルムの時とデジタルの時では、ガイディングが変わりました。

フィルムの時はやはり36枚で組み立てるので、潜る前に、これを何枚撮らせたら、次はこれを何枚撮らせて……という組立ができていたのが、今はいくらでも撮れますからね。水中に滞在する時間も長くなりました。

―――

ところで、ガイド会の方がこれだけ写真が上手だと、カメラマンはやりづらくないですか?

越智

そりゃやりづらいよ。ちょっと話がそれるけど、マサシ君なんかカメラ持ってもらっていると、交換する時、モニターで自分の写真を確認している。あれやめてほしい(笑)。せめてセレクトしてからにしてほしいんだけど。

小川

いや~、撮影カット足りているかな~って(笑)

越智

まあ、やりづらくても、短期間で、現地のガイドたちが満足してもらえるかがプロの仕事なんで仕方ないけどね。

―――

ちなみに、ガイド会としての撮影スキルのレギュレーションってあるのでしょうか?

技術的に優れているとかそういうことも大事なんですが、一番大事なのは、その海にいる人間として、その海をどのように伝えるかというポリシーとか信念があること。それが写真に現れているかどうか。

例えば、越智さんだって無理だよっていう写真を、ガイドの人間は持っていると思うんですよ。それが持てるのが理想です。

―――

ポリシーということですが、皆さんの撮影のポリシーとかテーマを教えてください。

僕はやっぱり生物的な部分かな。生物ってその海を表しています。この生物はうちを代表する生物だからシーズンを通して表現したいという思いがあります。

ですので、目をつけた生物は1年を通して撮影して、翌年はこれ、という感じで撮影します。
しかし、だいたい1年の中で撮りこぼしというか宿題ができるので、それは翌年に繰り越して撮影しますが、宿題だらけです(笑)

三保のチョウチンアンコウ(撮影:鉄多加志)

撮影:鉄多加志

―――

川本さんといえば久米島のクジラの写真が印象的ですが、やはりクジラの撮影が大きなテーマでしょうか?

川本

もちろん、沖縄久米島でザトウクジラを撮り続ける事はライフワークの一つですが、実は、僕は基本、産卵がテーマなんです。

産卵って、生物が自分の子孫を残すために生きているという生き様が見える瞬間。彼らの種それぞれの繁殖戦略を見ていると、彼らは自分の子孫をいかに残すかしか考えてない。

繁殖(産卵)をやっている時は、激しく動いているし、個体の動き方も違いますが、その個体の婚姻色がより艶やかになりますから、そんな激しくも艶やかな彼らの瞬間をバチっと撮れた時が一番うれしいですね。

久米島のベラ求愛(撮影:川本剛志)

撮影:川本剛志

川本

撮影は、基本一本勝負。それだけに集中します。

水深30mで産卵するとしたら、上からずっと観察していて、一番盛り上がる時間にポッと行って粘って撮る、というスタイルです。

これから夏になったら繁殖の時期。まだまだ撮りこぼしたくさんあります。ガイドってどうしても撮らせるほうなので、一番いいときを撮り逃してしまう。例えば、ピークが連休だったりするともうダメ。

でも、ゲストに喜んでいただければそれでいいんですけどね。鉄ちゃんと同じく、まだまだ宿題がたくさん残っています。

―――

越智さんといえば、聞くまでもなく大型海洋生物ですが、一緒に潜っているとマクロも結構好きですよね?

越智

小さい生物、実は好き。でも、昔、雑誌でマクロリサーチプロジェクトという企画をやったとき、ガイドがマクロのエキスパートで、自分はまったくマクロのことを知らないカメラマンっていう設定になった。マニアな人も、あまり興味ない人にもわかってもらえるということだったんだけど、その影響か、すっかりマクロが苦手な水中カメラマンっていうレッテル貼られてしまった(笑)

ニシキテグリ(撮影:越智隆治)

撮影:越智隆治

越智

でも、まあ、見るのは好きでも、撮影スタイルとして、確かにマクロレンズを使うのはあまり好きじゃない。

ひとつの場所に留まって撮影するのは、どうしてもスタジオの物撮りっぽくて苦手なんだよね。その点、ワイドは報道向きで、例えばクジラを撮るにしても、クジラと駆け引きしながら、その場の臨場感や瞬間を切り取るほうが興奮するしおもしろい。

それに…お二人は、老眼どうですか?

きてますよ。

川本

気合です。

―――

撮影スタイルから考えると、老眼の影響は鉄さんが一番受けそうですが?

僕はピントというより、暗い場所の撮影がダメになっちゃいましたね。以前はターゲットライトがあると撮れなかった被写体も、今は仕方なくターゲットライトつけて撮ることもあります。

越智

それを考えると、自分はマクロ売りのカメラマンじゃなくて、大物のイメージで良かったかも。マクロを撮る時、フォーカスはもともとマニュアルで撮っていたけど、今は悩みながらも、そ~っとスイッチをオートにしてみたりすることも(笑)。

バハマのタイガーシャーク(撮影:越智隆治)

撮影:越智隆治

今も基本はマニュアルで撮っていますけど、だいぶオートフォーカスの性能もあがってきて、そろそろオートを使った方がいいのかなって気にはなっています。

小川

すっかり、シニアフォトグラファーじゃないですか!(笑)

―――

なんだか、最後が老眼の話になってしまいましたが、これも同級生3人の現実ということで(笑)。
今日は皆さん、ありがとうございました。

対談を終えて……

海の印象を大きく左右するのがガイドという存在です。
潜るガイドによって水中で見える景色はまったく異なり、例えば、透明度が最悪で、一見殺風景な海だったとしても、ガイド次第で面白くなってしまうのが、この職業の凄味。
ダイバーの皆さんも、“あの海”ではなく、“あのお店”“あのガイド”と潜るために通っている人も少なくないはずです。

今回、ガイド会の皆さんのお話から感じたのは、ガイドという職業に対する大いなるこだわりとプライド。
そして、ガイドの可能性を信じている、ということでした。

と、同時に、ガイドという職業を取り巻く状況に対するジレンマのようなものも感じました。

ガイドたちには海に対する深い造詣があり、心の底では、伝えたい思いや知って欲しい海の奥深さがある。
しかし、こうしたことは外からはわかりづらく、受け取る側の目的や力量にもよるので、伝えきれないし、評価されづらいもどかしさがあるのかもしれません。

しかし、受け取る側のせいにしてはいけないこともよく知っていて、独りよがりで、押しつけがましいことは絶対に言いません。
サービス業のプロでもある彼らは、「ただ気楽に潜りたい」「生物とか写真とか興味ない」「中性浮力とれないんですけど」という人にもニュートラルにしっかり応えてくれるでしょう。

もちろん、誰がどんな潜り方をしてもよいと思うのですが、個人的には、せっかく一流のガイドと潜るのに、もったいないな、と思うときがあります。
その海を愛し、一番熟知しているガイドの思いやこだわりに触れ、発見や感動を得た時の喜びは、僕が潜ることの意味のひとつです。

僕が彼らと潜る最も大きい価値だと思うのは…、こちら側、ダイバー側の力量が試されるダイビング。

ガイド会の方々は「いやいや、そんな傲慢な……」と否定するかもしれませんが、そういう価値観もあってよいと思います。

例えば、デフレの中、安い居酒屋チェーン店が増える一方で、料理の価値を守る名店があります。

一流の料理人がいて、客は出された料理に対して、「ん? ひょっとしてこの味付けは!?」。
料理人のほうを見ると、目が合った料理人の眉毛がピクリと上がり、「お客さん、わかっているねぇ」。
そして、次にその客が来たら、「今日はこんなのがありますけど……」という関係。

一流の料理人が“わかっている”客と響き合うのは自然なことで、そうした相乗効果が料理のレベルを押し上げるわけです。

対談の中に出てきた、取材時のガイドと越智カメラマンとの関係がまさにこの関係で、一般のダイビングにおいても、海の料理人であるガイドの心底にある、「この海はまだまだこんなもんじゃない」「海の奥深さを知って欲しい」という思いに触れ、引き出すことができれば、こちらのダイビングの幅もぐっと広がるはずです。

勝手な思いとしては、ガイド会はガイドの名人の集まりであって欲しいし、打てば倍返しで響くようなガイドが担保されている存在になっていただきたい。
そういう意味では、敷居が高くてもいいと思ったりもするのですが、実は割とオープンなスタンスだということもわかりました。

海・ダイビングの魅力を最高の形で伝える存在のガイド会と、オーシャナも響き合える存在でいたいと思います。

カテゴリ:
徒然コラム

ページトップへ