ダイバーなら知っておきたい、台風の進路予想のための4つのポイント
夏はダイビングシーズンであると同時に、台風シーズン。
この時期、ダイバーなら、台風の進路にハラハラさせられますよね。
そもそも、台風の進路予想は、気象庁の専任事項。気象予報士や気象予報会社などが一般の人に台風の進路予想などを発表することは、気象業務法によって禁じられているほど、進路予想は難しいのです。
そこで、以前、連載していただいた気象予報士のくま呑み(大間哲)さんの記事より、台風進路予想における大事なポイントを抜粋して紹介します。
ぜひ、ダイビング計画に役立ててください!
(以下、抜粋)
台風予想の4つの大事なポイント
1.台風の進路は、「曲り目」に着目
台風の進路は、一般的に太平洋高気圧のふちにそって北上し、偏西風の位置で東に向きを変えます。
ということは、偏西風の位置を捉えると、曲る場所がある程度予想できます。
偏西風の位置は、HBC(北海道放送)の専門天気図などでも知ることができますし、そこまででなくとも、もし梅雨前線や秋雨前線などがあれば、その上空あたりを吹いていると考えられます。
そして、正直に言って、曲がり始めるまでは停滞したり速度が遅かったりしますが、偏西風に流され始めると、速度は急速に速くなり一気に駆け抜けることが多いのです。
逆に言うなら、曲がり目に来るまでは台風の速度予想がしにくいということになります。
2.台風の右半円の方が危険
台風は、反時計周りに渦を巻いています。
ということは、進行方向右側の半円は、台風の速度と渦を巻く風速が足し算になって風が強くなる傾向にあります。
そして、その差は、台風の速度が速いときほど大きくなります。
逆を言うなら、「のろのろと北上」している時は、右半円でも左半円でも、大きな差はありません。
ところが、「速度を上げて東進」しているような時は、台風が南側を通れば大きな被害にならないものを、北側を通れば被害が大きくなる可能性が高いです。
東京の例を挙げるなら、太平洋上を東進してくれば大きな被害になりにくいですが、どこかで上陸して北関東などを通っていくと被害が大きくなる確率が上がるということです。
3.台風は近づいてくる時の方が危ない
台風は、特に向きを変えるあたりから以後は、偏西風に乗って速度を上げることが多いので、予想より速くなる可能性があります。
そうすると進路予想図などを見ながら、近づいてくるのは「まだだろう」と思っているうちに、想定外に早く、突然風雨が強くなったりする可能性があります。
また、実際に、風が強くなるときはどこまで強くなるかわからないですが、弱まり始めればあとは引いていくだけです。
ですから、台風の接近中には、より警戒をしてください。
ただし、例外は直撃に近い場合で、台風の目で一旦晴れたり風が止んだりしても、いわゆる「吹き返し」が起きる可能性があるので、目なのか通り過ぎたのかは、レーダーなどを見てしっかり判断する必要がありますが。
4.温帯低気圧化後は、より危険なことがある
「台風は温帯低気圧になりました」などとよく言います。
これを聞くと、「台風が『普通の』低気圧になったから一安心」と思うかもしれません。
しかし、実際は、温帯低気圧と熱帯低気圧(台風)はまったく別のものなのです。
台風は、暖かい海水から蒸発する水蒸気をエネルギー源としますが、温帯低気圧は前線の北と南の気団の温度差がエネルギー源になります。
で、一般に熱帯低気圧のほうが、規模(直径)が小さく、中心付近の風などの強さは強いのですが、逆に言うなら、温帯低気圧は中心付近の最大風速こそ小さいけれど、規模はずっと大きな場合が多いです。
つまり、台風がそのまま熱帯低気圧でいてくれれば、日本付近の海水温が低い海域に来たり、上陸したりすると、規模は小さくなり、やがては崩れて消えてしまうでしょうけれど、温帯低気圧に変わると、新たなエネルギー源を得て、さらに巨大化(再発達といいます)したりする可能性があるのです。洞爺丸台風は、そのようにして、甚大な被害を引き起こしました。
同じ気象庁発表の「進路予想」を見るにしても、このようにこれらのポイントを押さえて見ると、その台風のどこが特に危険か見えてきます。
また、台風の進路予想は難しいために変更されることが多いですが、変更になりやすいところ・なりにくいところというのもわかるはずです。
台風の進路予測、4つのポイント。台風を外して石垣島に行けたダイバーの話