シャークジャーナリスト沼口麻子さんとメガマウス・フィーバーを振り返る(第2回)

メガマウスはなぜ死んでしまったのか ~死因は窒息?~

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死んでしまった理由は窒息!?

寺山

最初はすごい元気だったと聞いたのですが、そんなにすぐに弱ってしまうものなのでしょうか?

沼口

その辺は、まだよく分かっていません。今年の1月に美ら海水族館がホホジロザメを展示したことがニュースになりましたが、2日ぐらいで死んでしまいました。これも、前日までは超元気に泳いでいたそうです。

寺山

単純に考えるとストレスってことなんでしょうか。

沼口

推測ですが、私はたぶん、呼吸の関係かなと思うんです。ホホジロザメやアオザメなどの仲間は、速く泳ぐことができるサメとして知られています。彼らは泳ぎながら、口からエラに海水を流すことで呼吸しています。マンボウランドのイケスの直径は50mもあり、十分に思えるのですが、自然界と同じように泳いで十分に呼吸できているかどうかは定かではありません。

寺山

ほ~~。では、窒息の可能性があるんですね。

沼口

あくまでひとつの可能性としてです。
ホホジロザメもメガマウスザメも同じような例のあるウバザメも、ほぼ1〜2日で死んでいるところをみると、おそらく呼吸とか、あるいは環境適応に問題があったか、そういう何かしがらみがあるんじゃないかと思うんです。ちなみに、これら3種は全部ネズミザメ目なんですよ。

ネズミザメ目には、他にはオナガザメの仲間(ニタリ、マオナガ、ハチワレ)とかもいるんですけど、彼らの飼育も成功していません。オナガザメの仲間が水槽に展示されている水族館って聞いたことないですよね?
だから、この仲間はガンガン泳いで呼吸している可能性があるんじゃないかなと個人的に思っています。

ちなみに長期飼育ができるジンベエザメはテンジクザメ目です。

寺山

ネズミザメの仲間は、飼育が難しんですね。

沼口

シロワニが唯一長期飼育に成功していますが、それ以外の多くのネズミザメの仲間は難しいですね。
ただ、メガマウスザメは、サメの中でもかなり特徴的で、メガマウスザメ科という、科から分類されていることからもわかるように、1科1属1種なんです。

触ってみるとわかるのですが、ホホジロザメとかアオザメはとても体が硬いのですが、メガマウスザメはそれに比べて柔らかい。結構しなやかに泳げるから、メガマウスザメの方が、閉鎖環境で飼えそうな気もしますけど、まだ今回が飼育を試みた世界での一例目なので、わからないことだらけです。

(写真提供/波左間海中公園 高橋和也)

(写真提供/波左間海中公園 高橋和也)

死んだ映像を見て
ネガティブな反応も

寺山

残念ながら、メガマウスは死んでしまいましたが、映像を見て、中にはネガティブな反応もありましたね。捕獲とかイケスとか、今の世の中、センシティブなテーマですから、いろいろな受け止められ方をされていました。

沼口

そうですね。マンボウランドでは、ノウハウがあって、研究にも貢献していて、今回も、おそらく荒川さんのサメ愛が起こした行動だったと思うんです。しかし、話題になり過ぎたことから、イケスに入れたことが、逆に一般の愛護心の強い方からしたら、「おいおい、なんだよあそこは」という風に見えてしまって、本当に気の毒だなと……。

実際、定置網に入った大型生物は水揚げされる魚が優先になるので大切に扱われないことが多い。そのことを世間は知らないし、ニュースにもならないですからね。だから、生き物をこんなに大切に扱う荒川さんは例外だと思うんです。
だって、いくら温厚なサメだからといっても、網の中から救出したり、船で曳航したり、世話をしたりするのは普通の人ではできません。生きている大型生物を扱うのには多くの危険が伴いますから。

寺山

メディアも出し方は難しい。死んでいる映像を出しちゃうと、インパクトが出ることも確かだけど、反感を得るのも必至ですからね。

沼口

実は、横たえている映像は、「撮影してもいいけど出さないでくださいね」と全部のメディアに言って、それを了承したうえでの取材だったはずなんです。しかし、とあるメディアがミスって、その映像が全国放送でバーンと流れてしまった。

寺山

現場で撮影している人間と、局で編集している人間が違って、意思の疎通が取れなかったのか、意思疎通が取れなかった体でやっちまえなのか……。いずれにせよ、意図せず、出てしまったとは。

沼口

今回、荒川さんがメディアもわざわざ入れて、忙しい漁師さんの仕事を止めてまで、丁寧に対応したのに、ご好意を仇で返された結果になっている印象でした。もちろん、表現やニュアンスまでしっかり確認しているメディアさんもいて、それぞれですけどね。

寺山

それにしても、荒川さんのバイタリティはすごいですね。

沼口

たぶん好きなんだと思います。“大きいサメ”という浪漫を感じてやっているのだと。だって、あれを高値で売りつけようというわけじゃないんですよ。利益になるからやっているのではない。荒川さんの原動力は、お金より浪漫だと感じました。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
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〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
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