“悪いオーバーホール業者”を見分ける方法とは

手抜きのオーバーホールだとなぜ分かるのか

前回、オーバーホールの現場で実際に遭遇した、手抜きオーバーホールの痕跡が残っている器材についてご紹介させていただいた後に様々なご質問を受けましたので、今回はそれにお答えできるような内容を書きたいと思います。

「何故、前回のオーバーホールが手抜き作業だとわかるの?」

分解して中身を見れば、手抜きの証拠が残っているものはすぐにわかります。

オーバーホールが済んで器材が戻ってきたときに、レギュレーターの1stステージのヨークや2ndステージのケースにシールが貼ってあることは、ご存知でしょうか?

ネクストオーバーホールシールといって、オーバーホール完了日から1年後の年月が記されています(一部の機種を除いて、オーバーホールは1年に1度を推奨されている為)。

ネクストオーバーホールシール

このシールを見れば、前回いつオーバーホールされたのかがわかりますよね。

昨年オーバーホールをしたシールが貼ってあるのに、オーバーホールのときに毎回交換するようメーカーが指定している部品が、何年も前に製造終了している古い部品だった場合、おかしいですよね。

「指定消耗部品を交換していない=手抜き」といえるのではないでしょうか。

また、以下のようなケースも。

器材と共に、前回オーバーホールをした他店の修理伝票を同封されてこられることがあります。
実際に入っている部品は他メーカーのもので定価¥400なのですが、伝票には正規パーツの定価¥2,000で請求されている。おかしいですよね。
工賃を見ると著しく安い。

器材の中身を見ることができず、また部品について知らないお客様にはわかりませんが、専門家である私たちにはわかります。
今お話ししたようなことはほんの一例に過ぎません。

良いオーバーホール業者と悪いオーバーホール業者の見分け方

前回たった一つの例を挙げただけで大きな反響があり、正直すごく戸惑いました。
記事を読んで不安になってしまった方には申し訳なく、また誠実に作業されている同業他社の方が誤解されるようなことがあってはならないと思いました。

そこで、今回プロの目線から“良い業者と悪い業者の見分け方”の一例をご紹介します。

オーバーホールしているお店は全国に山ほどあります。
オーバーホールの作業工程はおおまかには同じですが、お店ごとに作業内容の詳細や、設備や工具の質、技術力、知識やデータの量、料金設定などが異なります。

何を基準にお店選びをすればいいのか、迷われることかと思います。

では、良いオーバーホール店(業者)の基準とは?
以下のようなことが挙げられると思います。

オーバーホール業者の見分け方

ですが内部事情までは知ることができず、なかなか判断しにくいかと思います。

具体的に、幾つか例を挙げてみます。
みなさまがオーバーホールを依頼しようとして次のような質問をしたと想定してください。

オーバーホール業者の見分け方

使用予定がある場合、一日でも早く手元に器材を返して欲しいですよね。
「そのニーズにお応えしたい。だけど…」と、良い業者はきちんと説明をされると思います。

なかには作業品質を重視されないお店もありますし、仕事が欲しいという欲に負けてしまうこともあるのでは(笑)。
回答にそのお店の本質が反映されていると思います。

オーバーホール業者の見分け方

レギュレーターセットだけであれば見積りも安くなり、自店にオーバーホールを依頼してもらいやすくなる、またBCは容量的にかさばりスペースをとります。
繁忙期は特に、お店の中が段ボール箱や器材で溢れかえります。

レギュレーターばかり集めてオーバーホールする方が効率がいい、と考えるお店もあるようです。

オーバーホール業者の見分け方

勝手に部品を交換されて、高額な請求をされたといったお話もよく耳にします。

電話応対が悪い、またきっちりとした説明ができない場合は要注意です。
不審に思った場合は、他のお店にも問合せをしてみて、内容を比較してみてください。

“悪い業者“という表現が適切かどうかわかりませんが、明らかに商売として利益追求をするあまり、自覚があって手抜きオーバーホールや不当請求をしているお店は、やはり良い業者とはいえないと思います。
また、再修理率が高いというのも問題だと思います。

“良い業者”はルールに従って作業し、明朗会計を行い、誠実に対応しています。

命を預ける器材を預けるお店には、どんどんわからないことを質問して、是非信頼関係を築いてください。
潜り続ける限り、修理やオーバーホールを必要とし、末永いお付き合いになるのだから。

器材の手入れやオーバーホールのことを学ぶには

それからもう一つ。
「ではどうすれば自分で器材のことが勉強できるのか?」

例えば、各指導団体のスペシャリティで、器材のコースがありますが、それを受講してみるのも一つの方法だと思います。

また、私が勤務するお店では、独自に器材講習というものを開催しています。

「器材の基本構造や正しい使い方・手入れの方法を学ぶ」基礎のコースから、「自分の器材やその他の器材を知る、器材トラブルに対応できるように学ぶ」応用コース、「実際のオーバーホールを学ぶ」テクニカルコースをご用意しており、器材を分解して中身を見て触ることで、より器材に対する理解を深めていただくような取組みをしています。

遠方から飛行機や新幹線でホテルに宿泊して受講しに来てくださる方も増えてきており、器材理解に対するニーズが高まってきていると感じます。

身近なインストラクターに相談してみるのもいいかもしれません。
興味があれば、積極的に情報収集をして器材のことを学んでみてください。
微力ではありますが、私も情報発信に努めて参ります。

※より詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

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PROFILE
大学在学中、グアムで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、卒業と同時にダイビングの会社に就職。
その後、数店舗の都市型ダイビングショップで、スクールや器材販売、ツアーの企画・引率をし、2000年にインストラクターに。

数メーカーのメンテナンス講習を受けた後、ダイビング器材オーバーホール専門店「アイバディ」に10年間勤務。
現在はフリーインストラクターとして活動する傍ら、ダイビング器材・オーバーホールについて執筆活動中。

「器材の中身は見えない。だから伝えねばならない」がモットー。

ダイビング器材の中身は見えない。だから伝えねばならない~オーバーホールの現場から~ | オーシャナ
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