透明度が悪くても伊豆でのダイビングを楽しむには
ベストシーズンの伊豆潜り歩き3日目。
西伊豆、南伊豆ときたら東伊豆の富戸へ。
ベストシーズンと言っておきながら「この時期にこんなに悪い透明度は初めて」と村井ちゃんが言うほどの、春濁りのような緑の海。
ただ、そこは生息環境のバリエーションが豊富な富戸の底力、16年、毎日のように富戸を潜り続けてきた村井ちゃんのガイド力。
逆に、生物ウオッチングに集中することによって見えてきた伊豆のフィッシュウオッチングの楽しみ方。
“伊豆の人気者”に会いにいく!
1日で6個体のカエルアンコウ
フィッシュウオッチングの醍醐味といえば、ご当地の生き物。
当然、ガイドたちも人気者を見せてくれるわけですが、村井ちゃんが富戸で次々に見せてくれたのがカエルアンコウの仲間たち。
ゴツゴツした体に乗った、何とも言えない顔面が、“ブサカワイイ” ”キモカワイイ”と言われ、動かない、カラーバリエーション豊富なこともあって伊豆で人気の高い魚。
今回も2本のダイビングでイロカエルアンコウ、クマドリカエルアンコウ、オオモンカエルアンコウなど、6個体のカエルアンコウを見ることができました。
その他、富戸にはベニカエルアンコウも多く、西伊豆ではカエルアンコウ、珍しいところでは、ソウシカエルアンコウなども見られる伊豆半島。
伊豆で潜った際は、ぜひご対面を。
ちなみに、村井ちゃんにカエルアンコウ以外の伊豆の人気者を聞いてみると、「ダンゴウオとかミナミハコフグなど、特に初めての人なんかには、わかりやすくカワイイ魚が人気だね」
四季、物語を感じよう!
今の季節は“季節来遊魚”を知っておくと楽しみ倍増
四季がはっきりとしている伊豆半島ですが、秋といえば”季節来遊魚”。
季節来遊魚とは、本来、南方系の魚なのに、黒潮に運ばれて伊豆までやってくる魚たちのこと。
夏から秋にかけてやって来る”季節もの”ということで、季節来遊魚というわけです。
ちなみに、以前は学術用語の”死滅回遊魚”と呼ばれていました。
本来の分布域ではない海に黒潮で運ばれ、水温の下がる冬になると死滅してしまう魚ということで、死滅回遊魚。
さらに、学者寄りな言い方としては、繁殖に寄与しないことから”無効分散魚”。
僕の記憶が正しいなら、季節来遊魚はダイビング雑誌が作った造語で、「死滅回遊だなんて語感が悪すぎる。季節来遊魚の方がワクワクするじゃないか」「でも、学術用語だし……」みたいな会話があった覚えが。
いずれにせよ、特に若いガイドさんだと季節来遊魚で定着してきましたが、昔ながらのガイドさんの中には、かたくなに死滅回遊魚という人もいます。
なので、「今年の死滅系はどう?」なんて言えば伊豆通っぽく思われますし、「今年の無効分散系はどう?」といえば変態だと思われるでしょう(笑)。
こうしたドラマを知っておくと、「こんなの沖縄でよく見る魚」「その他大勢の魚」ではなく違った見え方がしてきますよね。
単純に、季節来遊魚は、色も派手なものが多く、いつどこで何が出るかわからない宝探しのような楽しみがあって、秋の伊豆の海には欠かせない存在です。
12月、1月でも割と残っていて、その上、透明度も上がるので、個人的にはこの時期の伊豆が一番おもしろいと思います。
小さい範囲でじっくり観察!
生態ウオッチング
生物に詳しい伊豆のガイドたち。
彼らが口をそろえて言うのが、生物が出た・出ないだけでなく、生き物をじっくり観察することの楽しさ。
交接や産卵がその最たる例ですが、ひとつの生物をじ~っと見ているだけでもなかなか興味深いものがあります。
この日は越智カメラマンがイロカエルアンコウをじ~っ。
ウンチするシーンを狙っていたそうで、一瞬の差で逃してしまったものの、ウンチをする直前のふんばっている(?)瞬間の撮影に成功。
■ウンチをする直前、お尻を上げて踏ん張るイロカエルアンコウ
ちなみに、村井ちゃんがオススメの生態はヤマドリの産卵(7~9月くらい)。
まず、どの伊豆よりも富戸に多い富戸らしい魚で、産卵は、動きも大きく(ダイナミックにつがいで水面に向かって上昇する)、わかりやすく楽しめるんだとか。
この辺、ガイドによっていろいろ持っているネタも見せ方も違うので、積極的に聞いてみるとおもしろい話が出てきます。
※
ダイビングは、海の中に持ち込む知識や目的によって、まったく見え方が違ってくるおもしろさがあります。
関東ダイバーが日帰りでも通えて、四季折々の楽しみ方がある伊豆半島。
世界的にも見ても、日本はダイバーには恵まれた環境です。
○協力:ボートダイビング海聖丸
○撮影:越智隆治
○モデル:稲生薫子
海をガイドしてくれたのは…
ダイビングサービスむらい
富戸のガイド16年、伊豆のガイド3年の、今年ガイド歴20年目の”むらいちゃん”。
底抜けに明るいキャラクターと、生物愛、ラブリーなスレート会話、マスク越しの笑顔で、老若男女ファンが多い。伊東を拠点に、状況に応じて、確かなガイド力で伊豆の海をナビゲート。