田後のマクロポイント「ゴイシワラ」で撮影1本勝負
水深も浅く、ビギナーダイバーでも潜りやすいのが「ゴイシワラ」というポイントですが、マクロ生物がこれでもかというくらい生息するのも特徴のひとつ。
約80人集まった第6回夏の陣で、メインガイドの山崎さんは「1人に1個体ずつ見つけるのが大変」と弱音を言ってはいたものの、それでもきちんと1人に1個体ずつ見つけていたのは、ガイド力はもちろんのこと、個体数の多さも他のポイントと比べても群を抜いているからでしょう。
今回の取材テーマは、繰り返しになりますが「ワイドで魅せる田後」。
提案してきたのは山崎さんですが、ウエットスーツに身を包んた開口一番「まずは田後のウミウシ四天王を撮ってもらいたいですー!」と山崎さん。
え……と、ワイドは?(笑)
「そうですね~~ワイドは1、2本目で行って、3本目はマクロ1本勝負にしましょう!」
え、そうなんですか!?
越智カメラマン、本当にマクロレンズ持ってきてよかったですね(笑)。
※あやうくワイド1本勝負するところだった裏話はこちら。
https://oceana.ne.jp/from_ocean/57367
ということで、群れポイントでハマチに巻かれ、洞窟の中、ライトセイバーで闘ったあとの3本目に、生物の多い「ゴイシワラ」にやって来たわけですが、私が気になったのは、生物よりも水中での山崎さんの目線。
多くの取材では、ガイドがカメラマンに被写体を見せ、それを撮影している間に次の被写体を探し、カメラマンが撮り終わった時に、「はい、これ次の被写体にどうです?」といった具合のテンポで進むことが多いのですが、今回はそのリズムが、なんだか歯車がうまくかみ合っていない様子。
なぜ、ぎこちなかったかって、それは、越智さんの撮影スピードが、ただただ、速すぎちゃったんです。
前回のダンゴウオの撮影時は、うねりもかなり入り、被写体も老眼キラーのダンゴウオ、しかも幼魚だったものだから、それなりに時間をかけて撮影していたので山崎さんも気が付かなかったみたいですが、今回はほどよく大きさもあるマクロが被写体なので、“越智流スピード撮影方式”に戻っていたわけです。
■鳥取・田後(たじり)「越智隆治はじめてのダンゴウオ」
https://oceana.ne.jp/feature/tajiri_dangouo
「ゴイシワラ」の水中では、山崎さんがマクロの被写体を探しながら越智さんをチラチラ、まるで授業中に好きな女の子の姿をチラ見する男子学生のごとく、チラチラ、ちらちら。
マスク越しの表情が「え、もう撮り終わったの!? ってか、違う被写体見つけて撮ってるし」と語っています。
エキジット後、こんなような内容の話をしていると、「こうなったらもう、ガイドVSカメラマンみたいな戦いになってきて、撮り終わる前に絶対次の被写体を見つけてやるって感じでしたよ~。ちらっと盗み見た時にまだ撮っているってわかった時は、正直、ヨッシャ!って思いました」とついに山崎さん本音をポロリ。
それに対し越智さんは、「えーそれは適当に撮っているってことですか~?」と冗談を言いつつも、「元々報道出身で、1日3回締切のある現場にいたから、“早く撮る”という環境には慣れているし、苦にならない、というかそうなっちゃったし、それに自分でも興味を持った被写体は撮影したいと思っているから、今のままでなにも問題ないんですよ~」と、“適当には撮っていないよ”ということを、山崎さんが真剣な面持ちの中、割と“適当に”説明していました。
そんな意図せずに始まっていた「ガイドVSカメラマンの戦いinゴイシワラ」の結果は、一部抜粋ですが、結構な量です。
*
しかし、最後には越智さんも本音をポロリ。
「でも、山崎さん。天使ちゃん(ダンゴウオの幼魚約3mm)より小さい、キイロウミコチョウ(1~2mm)とか、アミメハギのチビとかで勝負してくるのはやめてください。目、見えなくて、また前みたいにプチって潰して、居なかったことにしたくなっちゃうから」
それを聞いた山崎さんのしてやったりと言わんばかりのニヤッとした表情はいたずら好きの少年のようで、心の底から嬉しそうでした。