夏の田後×越智隆治~ベストシーズンの日本海でワイド撮影~(第4回)

鳥取・田後ワイドの極み、海中ジオパーク「青と碧の洞窟」~フローライトで幻想世界~

田後のワイド(撮影:越智隆治)

鳥取県浦富海岸にある菜種島。

高さ60m、周囲400mと、この周辺の島々の中でも一際大きく、トゲ山のように険しくそそり立っている。

花崗岩でできたこの島は、他の小さめの島々と合わせて菜種五島と呼ばれている。
毎年4月中旬になると、崖の中腹に野生の菜の花が咲き誇る。

江戸時代に菜種を積んだ北前船がこの島の付近に座礁し、その後花が咲くようになったことから、菜種島と呼ばれるようになったと伝えられている。

田後(撮影:越智隆治)

写真中央の尖った島が菜種島

「この菜種島のある山陰海岸エリアは、世界ジオパークネットワークから認定された、今現在、日本に7箇所(洞爺湖有珠山、糸魚川、山陰海岸、島原半島、室戸、隠岐、阿蘇)しかないジオパークの一つなんです。最近、ダイビングでもジオダイブって言葉を耳にしますが、ジオダイビングで観られる“ジオパーク”は、実はここが日本初なんです」とブルーライン田後の山崎英治さん。

田後(撮影:越智隆治)

ジオパーク、ジオダイビングとは何かを語る山崎さん

そもそも、ジオパークって何?と日本ジオパークネットワークのHPを調べて見た。

「ジオ(地球)に関わる様々な自然遺産、たとえば、地層、岩石、地形、火山、断層などを含む自然豊かな「公園」のこと。山や川をよく見て、その成り立ちに気づくことに始まり、生態系や人々の暮らしとかかわりまでをつなげて考える場所。足元の岩石から頭上の宇宙まで、数十億年の過去から未来まで、海や山の大自然からそこに暮らす生き物と人々までを一つにして考える。つまり地球を丸ごと考える場所、それがジオパークです」

わかったような、わからないような。
世界遺産みたいなものか?

しかも、世界認定のジオパークは7地域だけど、日本ジオパークは、これにプラス29地域あり、今現在ジオパークを目指す地域も17箇所あるのだとか。

ともかく、この世界認定の山陰海岸ジオパークには、この浦富海岸の他、鳥取砂丘も含まれている。

エリアとしては、山陰海岸国立公園を中心として、東は、京都府京丹後市の経ヶ岬から、西は鳥取県鳥取市の白兎海岸まで、1府2県3市3町にまたがり、東西110km、南北最大30kmに渡る広大なエリアなのだそうだ。

田後(撮影:越智隆治)

鳥取砂丘も、山陰海岸ジオパークに属している

前置きが長くなってしまったけど、そんな稀少?なジオパークエリアでジオダイビングが楽しめるのが、田後の海。

それを代表するのが、菜種島を貫く海中洞窟。「青と碧(みどり)の洞窟」だ。左右の穴口で色が青とみどりの二色に見える不思議な洞窟。

田後のワイド(撮影:越智隆治)

左が青、右が碧(みどり)の2色に見える洞窟

田後のワイド(撮影:越智隆治)

洞窟の入り口部分も、光のシャワーが綺麗に写せて、森林の中の木漏れ日の中で一休み、みたいなイメージで撮影してみた

前回のダンゴウオ撮影ロケのときから、「次回は、ここをぜひ撮影してほしいです」と山崎さんに、ショップに飾られたこの洞窟の写真を見せられた。

水深も浅く、時間をたっぷりかけて撮影することもできるし(場合によっては半水面も可能)、地形だけでなく、この時期には、アジの幼魚がすごい数で群れて、洞窟内を埋め尽くすこともあったり、壁には、様々なウミウシがたくさんいたり、ドチザメの赤ちゃんがいたりと、今回潜った中では、「撮影する」という意味では一番面白かったポイントでもある。

田後のワイド(撮影:越智隆治)

洞窟内部には、無数のアジが群れていることも

田後のワイド(撮影:越智隆治)

洞窟の中に吸い込まれるように移動していく、アジの群れ

田後(撮影:越智隆治)

カラフルなウミウシも、壁のあちこちにいる

田後(撮影:越智隆治)

洞窟奥のゴロタには、ドチザメの幼魚が体を休めていた

ただ、この青と碧の洞窟、フィッシュアイさえあれば、まあ、基本的にコンディションが良ければ、だれでも同じように撮影できてしまう。

それを違った感じで撮影するってどうすれば……と思い悩んでいたときに、夏の陣でモニター会に来ていたTUSAのブースで、手に装着できる、モニター用のフローライトを見つけて、「これって使えるかも」と思い、それを借りて洞窟撮影に向かった。

田後のワイド(撮影:越智隆治)

ファンダイバーたちと一緒に潜ったときも、フローライトの青い光がやたらと目を引いた

他のライトの光とは違ったイメージが出せるかなと思ってのことだけど、これが意外と「おっ」って感じで、通常の2色の他に、さらに青みの強い部分を2つの穴口の真ん中の壁に映し出すことで、今までとは違った印象になった。

田後のワイド(撮影:越智隆治)

青いフローライトのみを2色の穴口の真ん中に当ててみた

「これは面白いかも」と今度は、INONのライトに赤フィルターをつけたものも合わせて、センターで、ライトセーバーで二人のダイバーが闘っているイメージの撮影にもチャレンジ。

田後のワイド(撮影:越智隆治)

赤いフィルターを付けたライトの方が弱くて、ライトセーバーみないにはならなかったけど、これはこれで面白い写真になった

水中ワイド撮影をする上で、流れのない水深の浅いフィールドに被写体があるというのは、構図をつかむ練習をするには持ってこいの環境だ。

そういう意味では、この青と碧の洞窟のある菜種島は、最適の環境と言っていい。
今回みたいに、いろいろ試してみることもできるし。

ということで、群れ狙いの、ちょっとハードなポイント、ヤマダシに続いては、ワイド撮影の練習にも最適で、ジオダイビングが楽しめる、菜種島を紹介してみました。

writer
PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。