新スタイルで潜るガラパゴス ~関戸紀倫が愛する「共に生きる」世界遺産~(第2回)

3つの海流が作り上げた摩訶不思議な海 ~ガラパゴスのダイビングの魅力~

関戸紀倫(きりん) ガラパゴス ペンギン

イザベラ島の港にいたガラパゴスペンギン

前回はリゾートスティの魅力についてご紹介しましたが、今回はガラパゴスの海の魅力を紹介します。

ガラパゴスへの旅は夕方着なので、到着したら港から徒歩1分の今回の利用したダイビングサービス〈スクーバドラゴンダイブセンター〉に器材を置いて、スクーバドラゴン所有のロッジにそのままチェックイン。

早速、オーナーであるガラパゴスのガイド歴35年というベテランのフランス人ピエール氏に、施設の説明や明日のダイビングの様子を教えてもらいます。

ピエール氏……と自分で言っておいてなんですが、父親です。
なので、オヤジと呼びますね(笑)。

さすがに35年のキャリアを持つオヤジのブリーフィングは説得力があり、次の日のダイビングへ気持ちはすでにワクワク。

僕の来島はこれで4回目ですが、今年は、1997年以来のエルニーニョ現象の到来年。
普段とは違う海を連れてくるエルニーニョ。
ガラパゴスの海はどんなことになっているのか、気になります。

エルニーニョ効果!
ありえない透明度とカメの軍団

ダイビング初日はイザベラ島の港から45分のところにあるトルトゥーガ島。
ここは何度も潜ったことがある、お気に入りのポイント。

ポイントに到着し、「どんな海が待っているのだろう、透明度は良いかなー?」とボートの上から海の様子を眺めると……透明度が、ぬ、ぬ、抜けている!?

関戸紀倫(きりん) ガラパゴス

ダイブポイントへ移動中の船内は世界各国から来るダイバーとダイビング話で盛り上がる

後述しますが、ガラパゴス諸島の海はロタ島のようにスコーンと透明度が抜けているわけではなく(栄養分が豊富な証拠です!)、平均は15mといったところ。

しかし、今回はボートの上から見ても透明度が良いのが一目瞭然!

早速、透明度の良さそうな海へ、ダイビング開始。

予想通り、透明度は40m強!

関戸紀倫(きりん) ガラパゴス

エルニーニョ現象の水温の上昇により透明度は抜群に抜けていた

ガラパゴスのダイビングは基本ドリフトスタイルで、ゆっくり流れに乗りながら楽しみます。

水深15m付近を流していると次から次へとアオウミガメ。
1ダイブで20~30匹には遭遇したと思います。

なぜこんなにカメが多いのかって、トルトゥーガ島は、実はスペイン語で「カメ島」の意味。
以前潜った時にも確かにカメはいたものの、透明度が良くなかったこともあり、2~3匹程度でした。

僕の中でトルトゥーガ島の名前の由来は、島がカメの形をしているからそう呼んでいるのだと勝手に思っていましたが、実はカメがこんなにもいるからトルトゥーガ島なんだと初めて思いました。
オヤジもおそらくカメが多いからではないかと言っていました。

関戸紀倫(きりん) ガラパゴス

1ダイブで軽く20匹以上はカメが居たトルトゥーガ島、スペイン語でカメ島

2本目も「トルトゥーガ北」でドリフトダイビング。
何かを待っているかのように、オヤジが沖の方を見ています。

しばらくすると沖の方から1匹のハンマーヘッドが登場!

関戸紀倫(きりん) ガラパゴス

大きなハンマーヘッドも高確率で遭遇できた

イザベラ島付近のダイブサイトはダイバーが少ないので、ハンマーヘッドはまだ人に慣れていなく、ダイバーが寄ったりすると警戒してすぐに離れてしまうので、基本的には向こうから寄ってくるのを待つのがガラパゴススタイル。

続いて、ガラパゴスシャークが1匹、ダイビングの終盤には二枚のマンタが目の前に。

関戸紀倫(きりん) ガラパゴス マンタ

体長5メートルはあったブラックマンタ

ガラパゴス諸島で見られるマンタは、オニイトマキエイ(ブラックマンタ)のみ。

恐らく太平洋を横断しているマンタがガラパゴス諸島を通り道として使っているので多くのマンタが見られるのでしょう。

溶岩流が水中にも美しい地形を作り上げていて、その中で大物が続々登場してカメラのファインダーをずーっとのぞいていて忙しい、大満足なひと時となりました。

■イザベラ島の主なダイビングポイント

Tortuga Island,4 Hermanos Islands,La viuda,Roca Unionなど

■サンタクルス島の主なダイビングポイント

Floreana,Gordon Rocks,North Seymour,Mosquera,Cousinsなど

摩訶不思議な環境を生み出す
3つの海流

ガラパゴス諸島付近はちょっと複雑な海域になっています。

主に3つの海流の影響を受けているガラパゴスには、北からは温かい海流の「パナマ海流」、西からは「クロムウェル海流」、そして南からは「フンボルト海流(ペルー海流)」が流れています。

ガラパゴスの海流のマップ
ガラパゴスの海流

この3つがそろってはじめて摩訶不思議なガラパゴスの気候や世界中から多くのダイバーを魅了する海が完成するのです。
当然、ダイビングも、島の北側と南側では印象が異なります。

また、陸上でも、赤道直下にあるので日差しは強いものの「暑い!」というイメージはなく、風が少し涼しく過ごしやすかったり、南極に住むイメージのあるペンギンがいたり(ガラパゴスペンギンで、ペンギンの中では最も低緯度に住む種)、陸では28度もあるのに水温は20度と不思議なことが多い。

実はこれらのすべては、ガラパゴス諸島周りの海流によって起こるのです。

ガラパゴスの気温は、南米に沿って北上する冷たいフンボルト海流と、深海から流れる冷たいクロムウェル海流の影響によって赤道直下にしてはかなり低くなります。

なんと、群島の中央「サンタクルス島」では、年平均気温は23.7℃!
赤道直下の低地では世界中どこでも26~27.5℃なので、ガラパゴスの涼しさは格別ということがわかります。

関戸紀倫(きりん) ガラパゴス

強い日差しを避けて涼しい日陰へ、ガラパゴスアシカ

3つの海流が生み出す、濃い魚影、
海棲哺乳類も生息する珍しい海

ざっくりと、ガラパゴス諸島北側は暖流がよく当たり、比較的に水温も高めでジンベエザメやハンマーリバーが有名で、南側は二つの寒流が強く当たっておりプランクトンも豊富で巨大マンタやハンマー(単体)やバラクーダやイサキの群れがかなり濃いといった印象です。

さらに詳しく説明すると、ガラパゴスの海は魚影が濃いことでも有名ですが、その理由も海流によって成立します。

暖流と寒流が入り混じり、さらには深海から湧き上がる海流によって、海には豊富な栄養分が蓄えられています。

水深100m以上の位置、幅200~300km、長さ数千kmにもなる巨大海流クロムウェル海流(赤道潜流)は、栄養分豊富のプランクトンを運んでくれ、それにより魚影は濃く、マンタなどのプランクトン捕食生物は豊富なプランクトンに恵まれて巨大です!

また、南から北上してくるフンボルト海流も南極からくる冷たい海流で栄養分豊富のプランクトンを運んでくれます。

この冷たい海流のおかげでイザベラ島の水温は冷たく、プランクトンが豊富なため透明度はずば抜けては良くないですが、おかげで魚影の濃さは格別となります。

関戸紀倫(きりん) ガラパゴス

ガラパゴス諸島でよく群れているイエローテールサージョンフィッシュの群れ

一番南に位置するイザベラ島はこのフンボルト海流とクロムウェル海流の影響をかなり受けていて珍しい生物が多く観察できます。
水中生物の10%を占める固有種を探すのもおもしろいですよ。

ほかにも、巨大なマンタ、ハンマーヘッド、ガラパゴスシャーク、マダラエイ、マダラトビエイ、ガラパゴスアシカなどの、ダイバーが恋い焦がれる大物生物は高確率で遭遇できます。

イザベラ島の南側に位置する町「プエルト・ビラミル」では、港でガラパゴスペンギンを観測でき、このペンギンはイザベラ島の港の隣にあるスノーケルポイント「コンチャ・イ・ぺルラ」では、運が良ければ一緒に泳ぐことも!
※ちなみにガラパゴスペンギンは、フンボルト海流が当たるイザベラ島の西側や南側の冷たい海域に生息しています。

一番オススメなのは、綺麗なエメラルドグリーンの港で出迎えてくれるの「ガラパゴスアシカ」。

プエルト・ビラミルの港では日向ぼっこをしているアシカや海イグアナも出迎えてくれ、リゾート近くの海ではペンギンやアシカが気持ち良く泳いでいる光景は当たり前。

このあたりのクルーズ船の上では楽しめないアフターダイビングはまた次回。

関戸紀倫(きりん) ガラパゴス

イザベラ島の港に到着すると今すぐに海に飛び込みたくなるようなエメラルドグリーン色の海が広がる

3つの海流が作り出す、魅力的な海を持つガラパゴス。

4回訪れてもまだまだ未知の領域がたくさんあります。

それぞれ個人的にどういうダイビングを求めるかはさまざま。

透明度が良い海を求めるのであれば、正直ガラパゴス諸島は平均透明度が良い方ではないのでオススメはしないですが、ダイナミックな大物や他では味わえない濃い魚影を求める方はこの摩訶不思議な海流を持つガラパゴスの海はかなり面白いと思いますよ。

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PROFILE
1988年7月6日生まれ
東京にフランス人の父、日本人の母の間に生まれる。生まれて間もなくフランスのパリに移りフランス人として成長し10年。父は写真家、ダイビングインストラクター。
小さい時から父にフィリピン、タイ、ガラパゴス諸島など自然豊かな場所に連れて行ってもらい、いつの間にか自然が大好きになる。時が経ち2010年にダイビングを始め2011年から沖縄でダイビングインストラクターとして活動。2013年からオーストラリアのダイビングクルーズ船にて働くことになりそこで船内販売用に写真を撮る。今度は撮った写真をソーシャルネットワークにも載せたりするようになり友達に『世界にはこんな場所がある!こんな海がある!』などと紹介するのが楽しくなる。2014年10月にクルーズ船の仕事を終え帰国前にオーストラリアを一周することに決め念願の一眼レフを手に入れ放浪。 現在は、自然写真家として水中写真をメインに世界中を撮影し活躍中。
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