「Mares」特別企画 〜イタリア生まれの洗練されたデザインと革新的な技術のダイビングギアとは~(第3回)

浮力調整が驚くほど簡単に!? Maresの新BC「ガーディアン エルゴトリム」の実力を水中検証!

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BCは水中で浮力をコントロールするために欠かせない器材。体にフィットしていなかったり、使い慣れていないBCは、潜降時や遊泳中にバランスを崩しやすく、すぐに中性浮力を取りづらいため、快適なダイビングをするうえでの障害となる可能性もある。水中での活動をより安全に&快適に楽しむためにも、自分が使いやすく、体にぴったりとフィットしたBCを選ぶことをおすすめしたい。

そこで今回ご紹介するのは、Maresから新登場したBC「ガーディアン エルゴトリム」と「グレース エルゴトリム」(※1)(以下、ガーディアン/グレース)。この“エルゴトリム”というものは、Maresが開発した「AIRTRIMテクノロジー」(※2)をさらに進化させたもので、BCのエアの給排気をコントロールするユニット(=以下コントロールユニット)が、標準的な位置のBCと同じように給気および排気を行うことができると同時に、排気バルブを空気圧で作動させるためのボタンが追加された「エルゴトリムテクノロジー」が由来。

そんなガーディアン/グレース エルゴトリムの最大の特徴は“どんな姿勢でも素早く給排気が出来る!”ということ。そこでガーディアンと標準的な位置のコントロールユニットのBCと水中で比較し、本当にどんな姿勢でも排気ができるのか?また、どのくらい早く排気ができるのか?その使い心地はいかがなものか?など、注目の新製品の実力を徹底検証してみた!

※1「ガーディアン エルゴトリム」と「グレース エルゴトリム」では、サイズ規格とデザインが異なる
※2 人間工学的に適切に配置されたコントローラーで給気と排気を行うことが可能なBCの機能

どんな姿勢でも瞬時に浮力調整ができる“エルゴトリムテクノロジー”を搭載したBCとは一体?

姿勢を変えずに給排気ができる!

ガーディアン/グレースの最大の特徴は、空気圧による給排気を行うことが出来る「エルゴトリムシステム」を搭載していること。たとえば、BCから空気を抜こうとしてもなかなか抜けなくて苦労した…という経験をしたダイバーはいないだろうか。このガーディアン/グレースは給排気をコントロールするユニットが左ポケットの上に配置されているので、素早く探すことが出来る。そして空気圧で作動させる排気ボタンを押せば右肩と左腰の排気バルブが作動し、ダイバーは自分の姿勢を変える(水平姿勢からヘッドアップの姿勢になり左肩を上げる)ことなく、素早い排気やトリムの調整が可能!あらゆる状況での操作が片手で出来て、水中での位置を変更する必要がないという優れものなのだ。

そうすることで、写真撮影のときなども姿勢をキープしたまま上下に移動できたり、給排気時に姿勢を立てることでサンゴ礁や海底の生き物に接触してしまう…なんてことも軽減できるのだ。また特に、インフレータから空気が抜ける姿勢を取るのに慣れていないビギナーダイバーにとっては、潜降時に姿勢を立ててインフレータから空気を抜く動作によってタンクの重みに負け、背中から落ちてしまうことも防げるし、どんな姿勢でも排気ができるので中性浮力の感覚を早く掴むことができるという利点も。

またドライスーツのときには、姿勢を変えるとドライスーツ内の空気の位置も変わるため、余計にバランスを崩しやすくなるが、姿勢を変えずに空気を抜くことができれば、そんな心配もなくなる。姿勢を変えずに排気ができるだけで、こんなにたくさんのメリットがあるのだ!

コントロールユニットをすぐに操作できる!

また、ダイビング中はマスクを付けているため、胸元が見えづらくコントロールユニットは基本的に手探りで探すことになる。その場合、通常の位置(左肩前)にインフレータがあると、慣れていないとすぐに探せないことが多い。また、同じ位置に取り付けたアクセサリー類と絡まったりして、瞬時に操作できないこともある。左脇にコントロールユニットが位置するガーディアン/グレースであれば、常に整頓された左肩部(じゃばらホースがぶらぶらせずコントローラーがいつも手元にある)となり、そんな状況をもなくしてくれるだけでなく、肩周りが非常にスッキリとしてアクセサリー類も取りやすくなる優れものでもある。

標準的な位置(左肩前)にコントロールユニットがあるBCの場合。左肩前のDリングに取り付けたライトとホースが絡まって、コントロールユニットが探しにくかったり操作が上手くできない

標準的な位置(左肩前)にコントロールユニットがあるBCの場合。左肩前のDリングに取り付けたライトとホースが絡まって、コントロールユニットが探しにくかったり操作が上手くできない(撮影:石川肇氏)

左脇にコントロールユニットが位置するガーディアン/グレースの場合。姿勢に関わらず素早く探せてライトとコントロールユニットが絡まる心配なし

左脇にコントロールユニットが位置するガーディアン/グレースの場合。姿勢に関わらず素早く探せてライトとコントロールユニットが絡まる心配なし(撮影:石川肇氏)

動画で検証!

ガーディアン/グレースが、いかに姿勢を変えずにどのくらい素早く空気を抜くことができるのか、そして、どんな姿勢でも空気を抜くことができるのか、ということを検証すべく、どんな姿勢でも空気が抜けるガーディアンと姿勢を立てなければインフレータから空気が抜けないBCで、空気が抜ける様子を比較してみた。

どのくらい速く空気を抜くことができるのか?▼

どんな姿勢でも空気を抜くことができるのか?▼

ツーウェイ使いができちゃう!

もうひとつ嬉しいポイントは、コントロールユニットの位置を標準的な位置(左肩前)に変更でき、ツーウェイの使い方から自分の使いやすい方をチョイスすることが可能なこと。たとえば、ダイビング講習で練習した位置で使いたい場合や、自身がインストラクターでスキルのデモンストレーションの必要がある場合にも対応できるということなのだ。

コントロールユニットを標準的な位置(左肩前)に変えることができる

コントロールユニットを標準的な位置(左肩前)に変えることができる

「標準的な位置」にするには、
・左肩のインフレータホースの付け根を緩めて取り外す
・インフレータ全体を引き抜く
・標準的な位置(左肩前)の位置にして再度固定する

ちなみに、左脇にコントロールユニットを固定している際、緊急時にはユニットをホルダーから引き抜いて、オーラルでBCにエアを入れることが可能。

左脇に固定している状態

左脇に固定している状態(撮影:石川肇氏)

片手で引き抜くことができる

片手で引き抜くことができる(撮影:石川肇氏)

トリム姿勢が安定して取れる秘密

どんな姿勢でも素早く浮力調整ができるという特徴のほかに、水中でのトリム姿勢が安定して取れるという特徴も見逃せないポイント。

ブラダー(空気袋)の形状に工夫あり!

BCには「ジャケット(スタビライジング)タイプ」、「ショルダーストラップ(フロントアジャスタブル)タイプ」、「バックフロートタイプ」の3種類のタイプがある。この3つのタイプの大きな違いは、ブラダー(空気袋)の形状と位置。ジャケットタイプは、ジャケットの全体がブラダーになっているので背中から肩や胸部、腹部に空気が入る。ショルダーストラップは、肩の部分がベルトになっているので、ベルト以外の部分である背中と腹部に空気が入る。バックフロートのブラダーは背部にあり、浮力は背中からお尻にかけて位置する。

このブラダーの違いによって、水中・水面でのバランスや安定性、姿勢の取り方が異なってくる。このガーディアン/グレースはショルダータイプのBC

(撮影:石川肇氏)

ブラダーの形状にもこだわりがあり、Mares製BC「ドラゴン/カイラ」と同じフュージョンブラダーを採用している。このフュージョンブラダーは、ブラダーがタンクを包み込むような形状になっており、空気が多く入る(浮力を多く確保できる)。また、タンクの両脇部分(下記赤丸Maresの部分)に空気が入るため、非常に安定したトリム姿勢をとることができる。

(撮影:石川肇氏)

動画で見てみよう!

カメラを持ったまま、コントロールユニットの操作で給気排気が可能なのか、実際に水中の様子をご覧いただきたい。

※トリム姿勢は、ダイビングのスキルレベルや淡水・海水の違い、タンクのサイズや材質(アルミ製、スチール製)などによって差があります

カメラを持っていても安定する!▼

ブラダーが体から分離していることで最高の安定感を実現!?

(撮影:石川肇氏)

MaresのBCは、ブラダーが体から分離している設計になっているので、ブラダーに空気をたくさん入れても、肩やお腹、胸周りに圧迫感を感じることなく、膨らんでいくのが特徴。分離している設計とはいえ、バックパック(背板)に直結されたショルダーストラップと、ウエストには太くてしっかりと固定されるカマーバンドがあることで、身体とBCの密着度・フィット感は抜群。これにより、空気をBCに入れたとしても快適かつ、バランスを崩すことなく水中での姿勢を維持することができる。

動画で見てみよう!

ブラダーに空気を入れることで、ブラダーが体から分離しているのがよくお分かりいただけるかと思う。
ブラダーが体から分離している▼

水中でのバランスが取りやすくなる、ウエイトシステム搭載

ウエイトベルトの代わりにBCのポケット部にウエイトを装着することで、腰の負担を減らしたり、前面にウエイトが位置するので水中でのバランスが取りやすくなるという特徴も。ポケット部だけでなく、背面にもウエイトを入れるポケットがあり、個人やタンクの種類によってのバランスの微調整が可能。ウエイトは全部で12kg分(XXS,XS,Sサイズの場合)を入れることができる。

動画で見てみよう!

BCのポケット部に装着するウエイトポケットはハンドル部分が刀のような形をしており、緊急時に即座にウエイトを投棄できるSLS(スライドロックシステム)となっている。外す際だけでなく、取り付ける時も非常に簡単というのも注目したいところ。
簡単に脱着ができる▼

痒いところに手が届くガーディアン/グレースの細かなこだわり5選

ガーディアン/グレースにはこれまで紹介してきた、どんな姿勢でも瞬時に浮力調整ができること、安定性とトリム姿勢の取りやすいこと、の他にも痒いところに手が届く細かな工夫がたくさん!そこで最後にダイバーに嬉しいMaresの細かなこだわりを5つ簡単にご紹介していきたい。

1. スイベル式のショルダーバックル

肩部分のバックルがスイベル式(回転する構造)になっているため、よりストラップが身体にフィットする。ブラダーだけが広がっていったときに、肩の部分が引っ張られにくく、常に快適な状態をキープできる。

(撮影:石川肇氏)

2. 自分好みにカスタマイズできるカラーキット

4色あるオプションのカラーキットを追加することで、自分好みにカスタマイズすることができる。このカラーキットにはセラミック製とチタン製の両方の刃のついたラインカッター付き。

(撮影:石川肇氏)

3. 何かと便利なサイドポッケ

ダイビング中に何かを拾ったり、水中に何かを持っていきたいとき、それを入れるポケットがあると非常に便利。このガーディアン/グレースのサイドポケットは伸縮性と耐久性のあるスーパーストレッチ素材で作られており、非常に使い勝手がいい。おまけに右側にはライト等を入れられるサブポケット付き。

(写真左撮影:石川肇氏)

4. 取り付けやすい専用ホースのカプラー

ガーディアン/グレースには専用のBC LPホースが付属しており、コントロールユニット本体に取り付けるカプラー部分が通常のカプラーの持ち手よりも太く非常に掴みやすい設計となっている。力が弱かったり、爪が長かったりするダイバーでも付け外しが楽々できてしまう。

(撮影:石川肇氏)

5. 背負い心地がさらにアップするハイブリットプレート

背部に厚手のパッドが取り付けられているので、タンクの背負い心地が非常に良い。

(撮影:石川肇氏)

水中写真家・鍵井靖章氏コメント

撮影協力:JiC久米島

(撮影協力:JiC久米島)

最後に、約10年、Maresのギアを愛用している水中写真家・鍵井靖章氏からのコメントをご紹介したい。実際にガーディアンを使っていただいた率直な感想について
「どの体勢でも空気をスムースに抜くことができるのが、一番の驚きです。頭を下にしてヘッドファーストで潜っているときも、空気を抜くとき体を縦せずに、思い通りの完璧な排気ができるのは非常に良かったですね。あとは、撮影中でもコントロールユニットを瞬時に操作することができましたし、トリム姿勢のバランスが取りやすくて、非常に安心感がありました」とコメントをいただいた。

革新的な排気技術を持つガーディアン/グレースは、ビギナーダイバーからインストラクターまで幅広く使用可能。これからダイビングを本格的にやっていく予定の方にも、買い替えを検討している方にもおすすめしたいBC。ぜひ販売店に問い合わせて、詳しく話を聞いてみよう!
使用施設:國富東京市川マリンセンター

購入できる場所

ダイビングショップやダイビング器材販売店にて購入可(下記一覧参照)。また一部のダイブセンターの中には、実際にガーディアン/グレースを使用しているインストラクターもいるので、使用感等購入前の相談に乗ってくれる場合もある。しかし対応していないダイビングセンターもあるので、事前に確認しよう。
▶︎取扱店舗一覧

製品詳細

ガーディアン エルゴトリム

ガーディアン エルゴトリム

グレース エルゴトリム

グレース エルゴトリム

価格:¥187,000(税別)
詳細はこちら

Powered by HEAD Japan
創業70年を迎える老舗ダイビング器材メーカー「mares」と50年の伝統をもつ指導団体「SSI」を運営。自然を舞台に楽しむことをサポートする会社として、サスティナブルな社会への取り組みにも力を入れている。
 
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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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