魚からタコまで!何でも食べるイルカの捕食の話

台風が相次ぐ御蔵島、島民の主食はキュウリに

台風12号と11号で、御蔵島への客船は欠航に次ぐ欠航となりました。
8月に入ってから客船が着いたのは4日間のみ(8月11日現在)。

夏休みにイルカウォッチングを計画していたお客様にはもちろん、民宿やウォッチング業をしている事業者さん、私たち観光協会へも大きな影響が出てしまいそうです。
このコラムをお読みの方の中にも、「行けなくなった!」という方がたくさんいらっしゃるのかと思います。(寺山編集長も?)

特に台風11号の影響による欠航は、なんと6日間にも及んでいます。
つまり6日間、御蔵島には客船だけでなく貨物船も全く着いていません。

ヘリコプターが飛べば小さな荷物や郵便は届くようになりましたが、食料品、生鮮品などは一切来ません。

すべての物流を船便に頼る御蔵島は、桟橋が生命線。
そこが台風のうねりで水没してしまっては、仕方ありません。

ちょうど畑では毎日有り余るほどのキュウリやシシトウが採れる時期です。
自分で作っていなくてもご近所さんからお裾分けをたくさんいただくので、カッパ並みにキュウリを大量消費しながら暮らしています。

レタスとかキャベツも食べたくなりますが、ものすごい量のキュウリが村中に蔓延しているので、キュウリです。
生食だけだとすぐに飽きてしまうので、漬け物やスープはもちろん、炒め物、カレーの具でもなんとかイケます。

あるものでなんとか工夫するこの食べ方、実はミナミハンドウイルカの特徴でもあるようです。

何でも食べるイルカ

御蔵島周辺で混獲され死亡したミナミハンドウイルカの胃からは、タカベ、ムロアジ、トビウオ、ゴマサバといった表層性の魚類、砂地に潜っている甲殻類だけでなく、キンメダイ、スジイカ、フウライカマスといった100m以深に棲むものまで出てきます。

ウォッチング中にニザダイやウツボ、タコをくわえて泳ぐ(食べているかどうかは不明)姿が観察されることもあります。

砂地や岩場に逃げ込む小魚を2〜3頭で突っつき回していることも。
その姿から、あるものはなんでも食べていそうなことが想像できます。

岩の下に逃げた小魚を執拗に追いつめています

水族館でハンドウが多く飼われているのも、あるものを何でも食べるので飼育しやすいと聞いたことがあります。
逆に食べ過ぎて、余計な人工物を詰まらせて死んでしまった話もありました(鳥羽山, 1980)。

パンダやコアラなど食べ物に偏りがある動物は、エサの入手が大変そうですよね。

国内で唯一ミナミハンドウイルカを飼育している沖縄美ら海水族館の内田詮三名誉館長は、奄美大島で捕獲、搬送したとき「神経質だが一旦慣れれば図々しいほどの食欲だった。担架にのせての搬送中に餌を食ったのは初めて見た」と仰っていました。

工夫して食べるイルカ

オーストラリア沿岸に棲むミナミハンドウは、道具を使って食べ物を取っている可能性も指摘されています。

海底の砂地に潜る魚を獲る時、海綿(スポンジ)をくわえて口先を保護しながらほじくるというのです(Krützen et al., 2005)。

また、産卵のために藻場に集まったコブシメを砂地まで追い出してくちばしで押さえつけて殺し、振り回して墨を抜いてから、ぐりぐりと砂地に押し付けて中の骨が飛び出すまで剥いて、身だけを食する行動も報告されています(Finn et al., 2009)。
ヤヤコシイことするなぁ。

残念ながら御蔵島のミナミハンドウに特殊化した補食行動というのは、未だ見つかっていません。

それでも、飛んで逃げるトビウオを水面直下で上下逆さまになって追いかけ、落ちてきた所を口でキャッチしたり、稚魚の群れを数頭で囲んでボール状にして、周りからちょいちょいつまんで食べたり、刺し網にかかっているタカベを器用に抜き取って食べたりするのは観察されています。

もし、皆さんも不思議な補食行動を見たり、動画を撮られたりした場合は、ぜひ観光協会までお知らせ下さい。
もしかしたら、誰にも知られていない特殊な食べ方をしているかも知れません。

引用文献
■Finn, J., Tregenza, T., Norman, M. 2009. Preparing the Perfect Cuttlefish Meal: Complex Prey Handling by Dolphins. PLOS ONE.
■Krützen, M., Mann, J., Heithaus, M. R., Connor, R. C., Bejder and Sherwin, W. B. 2005. Cultural transmission of tool use in bottlenose dolphins. PNAS. Vol. 102 no. 25. 8939-8943.
■鳥羽山照夫. 1980. 「イルカ」「いないか?」. 株式会社マリン企画発行. pp.240.

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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..