土砂災害の被害を避けるためにできることとは~短期集中連載・最終回~

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短期集中連載「なぜ日本には土砂災害が多いのか?」、第4回(最終回)です。
第1回目から第3回目までは、こちらをご覧ください。

セブ島のダイバーのシルエット(撮影:越智隆治)

ここまで土砂災害についてお伝えしてきましたが、では、私達はどうしたらいいのでしょうか?

第一回連載で書いたように、ダイビングスポットやそこに至る道は、往々にして海岸の崖や急斜面の所をとおります。

西伊豆バイパスが崩落して、しばらく土肥などに行きにくくなったのは記憶に新しいところです。

ですから、まず、テレビなどで、「降り始めからの雨量が○○○ミリを越えて、土砂災害の危険が高まっています」といった報道があったら、その地域には近寄らないことです。

このような時は、行っても楽しくないでしょうし、さらに危険なこともあります。

家族・友人やお客様などを連れて行く立場の場合は、予定変更がし難いということもあるかもしれませんが、強行するということは、それら大切な方の命を危険にさらす行為だと肝に銘じてください。

また、どうしても行かなくてはならない場合は、せめて、宿泊する場所などが危険地域なのかを把握しておくほうがいいでしょう。

ハザードマップなどは、今は地名と「ハザードマップ」という言葉で、簡単に検索できます。

西伊豆、宇久須地区のハザード・マップ

(図.ハザードマップの例: 西伊豆、宇久須地区 hazardmap_ugusuより)

また、実際に現場についたら、まずは土地の状態をよく見てみてください。
渓流が濁っていたり、流れの中に流木がまじっていたら、上流で小規模な崩落が起きている証拠です。

また、山鳴りがしたり、異様な音や匂いがあったりしたら、即刻非難が必要です。
よく行く場所であるなら、山や木の形が変わって、普段見えない稜線が見えるなども危険です。

そして、前述のような、短時間の大雨に関する情報が出ていないか、自分が居る場所と、その上流地域についても、常によく把握しておくことです。

最近は、ツイッターなどソーシャルメディアによるつぶやきをビッグデータとして検索し、その中に、土砂災害直前によくつぶやかれる言葉の出現頻度をピックアップして、危険の予測に役だたせようという動きもあります。

国土技術政策総合研究所では、民間と共同で、「ソーシャルメディア分析によるリアルタイム災害発生情報検知手法の確立に関する研究」という研究を開始していますから、そのうち、そういった情報も活用されるようになるでしょう。

私達が、「○○沢、大雨、ヤバイよ」などとつぶやくことが、役に立つようになるのでしょうね。

同時に、前に書いたように、土地の古い地名や、地名の文字に隠された危険箇所の意味なども把握しておくことも重要かもしれません。
それは、引越しなどの際にも役に立つはずです。

三陸ボランティアダイバーズ

今回は、怖い話しばかりになってしまいました。

しかし、今回の広島をはじめ、ここ何年かの土砂災害での教訓は、忘れてはならないものです。
そのため、緊急特集をさせていただきました。

私達は世界的に見たら、特異的に雨の多い、山の急な火山国に住んでいるのですから、常に土砂災害や地震、津波などへの警戒は常に必要です。

そして、中でも私達ダイバーは、どうしても急な崖の道を通って、海山が接近しているところに行く機会が多くなります。

「今まで何十年も土砂崩れなんかなかったよ」という場所でも、警戒は常にしておきましょう。

もちろん、こういう国土だから楽しめる恵みはたくさんあります。
複雑な海底地形に集まる美しい魚たち、美味しい山海の珍味、温泉etc。
ですから、常に警戒を怠らず、その上で大いに恵みを楽しんでいければ、最高ですね。

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PROFILE
日本気象予報士会会員。
国際基督教大学(ICU) 理学科物理卒。
1995 年 よりダイビングを始める。
外見が「熊」なダイバーなので、魚の名前に因んで「くま呑み」を名乗る。

中学の理科の授業で、先生が教卓で雲を作る実験をしてくれたのを見て以来、気象学、天文学、地学に興味を持つ。
ダイビングを始めてからも海と空を眺めるのが好きで、2002年、気象予報士を取得。

ダイビングのスタイルは、「地形派」。
ドロップオフやカバーン、アーチや地層の割れ目などを眺めるのが好き。
特に、頭上のアーチなどをくぐった先で、水面からの光が見える瞬間に萌えてしまう。

ダイビング以外の趣味は、オーガナイズド(組織)・キャンプ、合唱、キャリア
・カウンセリング。
現在は、国際基督教大学にて学生や子ども向けの組織キャンプのディレクターも
努める。
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