震災から4年。東北の海で感じた3つのこと ~水中から見た復興支援~
震災から4年。
東北の海を訪れ、ダイバーを中心とした3つのボランティア団体の活動を取材し感じた3つのこと……。
水中の瓦礫撤去はまだまだ終わっていない
今回、強く印象に残った言葉があります。
「水中の瓦礫撤去は、まだまだ3~5年は必要じゃないでしょうか?」という、三陸ボランティアダイバーズ代表のくまちゃんの言葉です。
テレビや新聞を見ると、「瓦礫の撤去は99%完了」という報道もありますが、ダイバーを中心とする3つのボランティア団体の代表たち全員が「瓦礫撤去はまだまだ必要です」と言っています。
瓦礫撤去はまだ終わっていない。
ダイバーだからこそ伝えられる事実だと思います。
“新しい絆”で復興から振興へ
震災で失ったものは大きいが、新しく生まれたものもある。
これが現地の共通の思いです。
そして、この新しく生まれた絆で、原状回復するだけでなく、さらに前に進んでいる段階であることを感じました。
漁業を協力して行なったり、ダイビングポイントがオープンしたり。
ダイバーが漁師、地元の方と協力し、地域振興に向かっている姿を見るのは、震災直後からは想像もできませんでした。
復興から振興へ。
一番強く感じた現地の雰囲気です。
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ただ、一方で、そうした流れに乗れない、あえて乗らない方々ももちろんいます。
震災後、いち早く前を向いて、ダイバーのボランティア団体と行動をした漁師さんの中には、震災前まで漁獲高を戻した人もいますし、一方で、これから瓦礫撤去をしようという人もいます。
また、家族を亡くした方にとって、終わりはないのかもしれません。
行方不明者捜索や遺留品捜索は、もちろん本気で捜索しているわけですが、「陸で見つからなかったんだからあの海にいるのかもしれない」という気持ちに寄り添ったり、あるいは「忘れていないよ」というメッセージのために行なっている部分もあるのだと思います。
同じ被災地の方々でも思いは人それぞれ。
支援の形にも正解はなく、ただ無関心にはならず、それぞれの意志で、それぞれのつながりのあるところから、可能な支援をすればよいのだと思います。
災害に対応できるダイバーの教育
三陸ボランティアダイバーズのくまちゃんと海さくらのマサ君が口にした意外なキーワード……
“ダイバーの教育”
正直なところ、自分も水中瓦礫撤去のニーズはそろそろ少なくなっており、それはイコール、ダイバーの活動の場も減っているのだと思っていました。
しかし、先述した通り、水中にはまだ取り除くべき瓦礫があることがわかりました。
そして、2人の言葉からは、ダイバーのボランティア活動には、ある種のリスクを孕んでいることを感じました。
陸上とは違う特殊な環境下で作業をするには、やはり、綿密な計画と時にインストラクターでさえ不十分な特別なスキルが必要です。
しかし、善意でやってくるダイバーを完全に拒絶するのは難しいでしょうし、がむしゃらに目の前の瓦礫を撤去する必要もあったのかもしれません。
そんな中で、時に危うさを感じたこともあったでしょうし、実際、表沙汰にはなっていない事故もありました。
インストラクターの資格を持ち、平均以上に経験のある自分でも、「これ、綱渡りだよな……」と思いながら水中で作業したこともあります。
いつも「止める勇気を」などと書いていますが、皆が善意で、同じ目的に向いている中で、「ちょっと止めたほうがいいんじゃ……」とはなかなか言えないことを実感しました。
ボランティア団体を率いる彼らも、常に訓練の必要性を感じていたといい、また、これまでの経験を生かした今後の災害に備える態勢づくりの必要性を感じているとのことでした。
海外には、災害に対応できる民家ダイバーの育成プログラムがありますので、まずはその活用の可能性を探ってみたいと思います。
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オーシャナでは、震災地の5年目も水中から見続けていきます。