子供たちに「海は楽しい」を取り戻したい ~震災から4年の石巻・海さくら~
ダイバーによる東日本大震災の復興支援レポート第3弾。
石巻海さくら代表の高橋正祥さんに、現状や展望をお聞きしました。
石巻海さくらは、石巻出身の高橋さんが、震災をきっかけに地元に戻り、ダイビングサービス「ハイブリッジ」をオープンさせると共に、海そうじや漁業再生、遺品捜索など、ダイバーによる復興支援活動をしている団体です。
―――今は主にどんな活動を行なっているのでしょうか?
“umihamaそうじ”と銘打って、月に1度のペースで、熟練したダイバーなら海中の瓦礫撤去、その他の方は、ビーチのゴミを掃除したりしています。
石巻や女川がメインでしたが、最近は、今まで手を付けていなかった、七ヶ浜や松島などにも入っています。
―――今まで手を付けていなかった地域では、どういうニーズがあるのでしょうか?
海水浴場を復活させたい、というニーズが増えています。
そのために、まずは水中の様子を調査し、必要に応じて、水中やビーチの掃除をしたり。
―――ここまで活動してきて、これから必要だと思うことは何でしょうか?
まず、これまでの経験を活かして、捜索ダイバーのトレーニングをしたい。
というのも、復興支援で潜りに来ていただけるダイバーはとてもありがたい存在ですが、レジャーダイビングの範疇ですと、結構危うい捜索や作業があります。
場合によってはインストラクターでも、不十分なスキルというだけでなく、むしろ見ていて危ないと感じることもあるんです。
いつも作業のたびに、より効率のよい捜索活動のためにも、次の災害のためにも、そうしたスキルが身に付いたダイバーを育てる必要性を感じています。
これまで連携していた三陸ボランティアダイバーズはもちろん、寺さんたちが立ち上げるNPOなどとも連携して、教育という面の活動もしていきたいと思います。
あとは、皆さんが気軽に参加できる活動のメニューもそろってきたので、“楽しみながら”をテーマにして、続く活動をしていきたいと思っています。
―――今後、具体的にどのような活動メニューがあるのでしょうか?
これまでメインとしていた“umihamaそうじ”はもちろん、漁業再生や遺品捜索、さらに、活動でできたつながりを生かして、企業研修の受け入れや地元漁師さんたちとの交流、地元の子供に対するシュノーケリング教室などを予定しています。
―――企業研修の受け入れはおもしろいですね。CSRの受け皿といった感じでしょうか?
そうですね。
現在もやっているのですが、新人研修として清掃活動を行なっている企業もあり、コーディネートをしたり、環境教育にまで発展させることができればと思っています。
―――地元の子供を対象としたシュノーケリング教室では、海を怖がりませんか?
地元では、子供たちの海離れを顕著に感じます。
中には、子供を海に絶対に近づけない大人もいますし、泳げない子も増えています。
震災で受けた心の傷や海に対する思いはいろいろあると思うのですが、海が悪いわけではないと思うんです。
「海は楽しい」というところを取り戻したいという思いで、これまでも多くの小学校でシュノーケリング教室を行なってきました。
「海で遊びたい」と言う子もたくさんいて、やってみれば、やっぱりとても嬉しそうに泳ぐんですよ。
―――震災後、地元漁師さんとダイバーとの新しい絆の象徴といえば、2012年に共同でオープンしたダイビングポイント、女川・竹の浦(たけのうら・たげな)があります。その後、ダイバーたちの反応はどうですか?
年間通じて潜ることができるようになり、生物相なども把握してきたので、ガイドも充実するようになりました。
昨年も600人近いダイバーに来ていただきました。
また、養殖のためにホヤの採苗をしているときに、迫力ある地形の場所を見つけたんです。
クチバシカジカも3個体発見し、今年の1月に「竹の浦グロット」としてオープンしました。
ますますバリエーションが増えて楽しい海になりました。
ダンゴウオやフサギンポは通年見られますし、ファンダイビングを体験していただき、東北のめんこい魚たちの魅力を感じてほしいです。
―――今後、ダイビングサービス「ハイブリッジ」としてやっていきたいことはありますか?
今年、女川の駅前商店街に出店することになりました。
そうすると、竹浦まで10分とアクセスもよくなりますし、アフターダイビングも楽しみやすくなりますので、ぜひ遊びに来てくださいね。
(写真提供/高橋正祥、佐藤寛志)