日本人初受賞、自然写真家・高砂淳二氏が世界最高峰の写真賞「Wildlife Photographer of the Year」自然芸術部門にて最優秀賞を獲得

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「今ロンドンなのですが、一昨日、授賞式がありました」というメールとともに、自然写真家の高砂淳二氏(以下、高砂氏)から嬉しいニュースが届いた。
自然写真界で世界最高峰と言われる写真賞、イギリス・ロンドン自然史博物館(大英自然史博物館)主催の「Wildlife Photographer of the Year」Natural Artistry(自然芸術部門)にて、日本人初となる最優秀賞を受賞されたとのこと。思わず鳥肌が立つほどのこの快挙を祝福するとともに、高砂氏から届いたコメントや写真をお届けしたい。

大自然をテーマにした、世界で最も権威のある写真賞の一つ

海中から星空、極地から熱帯まで地球全体を巡り撮影を続ける高砂氏が今回受賞した「Wildlife Photographer of the Year」は、1964年にスタートし、今までにフランス・ランティング、ブレント・スタートン、ポール・ニックレン、ジム・ブランデンバーグなど、多くの世界的な写真家が受賞している権威ある写真賞で、2022年で58回目の開催を迎える。賞の部門数は、Natural Artistry(自然芸術部門)以外にも、Animal Portraits(動物ポートレート)、Under Water(水中)など全部で16部門。毎年、世界の自然写真家たちが貴重な生態や決定的・美的瞬間を競い合い、何万点もの作品から数点最優秀賞が選出される。2022年度は、全世界から38,000以上の作品が応募、選出されたという。

この受賞について高砂氏のコメントはこちら。
「自然写真の世界最高峰で、しかも世界で最も知られるアメリカの『National Geographic』誌で活躍している自然写真家たちもこぞって応募し、受賞している写真賞でもあり、この度自分が頂ける事になり本当に光栄です」

ロンドンで開催された「Wildlife Photographer of the Year 58」にて受賞した時の様子
(日本時間10月12日)

受賞作品「Heavenly Flamingos」の撮影エピソードを振り返る

作品名:「Heavenly Flamingos」Junji Takasago(高砂淳二)
受賞名:Wildlife Photographer of the Year 58
カテゴリー:Natural Artistry(自然芸術部門)

今回、高砂氏が日本人で初めて最優秀賞を受賞したNatural Artistry(自然芸術部門)は、自然の美しさ、この惑星の美しさを最大限表現している作品に与えられる賞。そして、地球の環境が変化する中、多くの人の地球への関心が高められるようにという想いが込められた賞である。

受賞作品「Heavenly Flamingos」を見ていると、私たちが住む地球にこんな場所があって、こんなハッと息を呑んでしまう瞬間があるなんて。当たり前のように住んでいる地球は全体の1部分でしかないことを思い知らされ、同時に、壮大な地球が見せる表情に感動してしまう。写真に映るフラミンゴたちにも、「こんな素敵な1枚を撮られていたんだよ」と、思わず伝えたくなる作品だ。

受賞作品「Heavenly Flamingos」に関する撮影エピソード、この写真に込められた想いについて、高砂氏のコメントはこちら。
「南米ボリビアの標高3700メートルにある「ウユニ塩湖」では、雨季にだけ塩原に雨が浅く溜まる。運よく風がピタッと止み、湖面が完璧な鏡状態になったある日、静かに羽を休めるフラミンゴに遭遇することができた。フラミンゴは人の気配に敏感で、少しでも驚かせてしまうとすぐに飛び去ってしまう。そこで遠くから時間をかけて少しずつ近づき、その夢のような光景をカメラにおさめることに成功した。
標高3700mであるため、立ったりしゃがんだりしながら接近したことで、酸欠による頭痛や立ち眩みなどを起こしながらの撮影だった。ウユニ塩湖には10年間にわたり6回訪れていたが、フラミンゴは遠くで飛んでいるのを見かけるだけだった。今回は千載一遇の完璧なチャンスを逃さず撮影することができた
いろんな問題が起きている同じ地球上に、同時にこんな瞬間が存在するということ、そして、この地球はこんなにも美しく宝物のような天体であるということを心から伝えたいと思った」。

今後は、ロンドン自然史博物館を皮切りに、「Wildlife Photographer of the Year 58」受賞作品の展覧会は世界中を巡回していく予定とのこと。高砂氏の作品に込められた想いも、世界中に届いていってほしい。

改めて、高砂氏の快挙に祝福をするとともに、多くの写真家たちが、地球が見せる一瞬の表情を全力を懸け追い求める姿に敬意を表したい。

まだ見ぬ地球の素晴らしさに出会えるかも。

高砂淳二氏
写真家。1962 年、宮城県石巻市生まれ。ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て 1989 年に独立。世界100以上の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。 著書多数。ザルツブルグ博物館、ニコンプラザ・THE GALLERY、東京ミッドタウンフジフイルムスクエア、渋谷パルコ、阪急百貨店、大丸百貨店、コニカミノルタプラザなど写真展多数開催。 2008 年には、外務省主催・太平洋島サミット記念写真展「Pacific Islands」を担当。
TBS「情熱大陸」、NHK「SWITCHインタビュー」、日テレ「未来シアター」をはじめ、テレビ、ラジオ、雑誌等のメディアや講演会などで、自然のこと、自然と人間の関係、人間の役割などを、幅広く伝え続けている。みやぎ絆大使。海の環境 NPO 法人“Oceanic Wildlife Society” 理事。

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PROFILE
奄美在住。高校生の時にブラジル留学を経験。泳ぐのが苦手で海とは縁がない人生だと思っていたが、オーシャナとの出会いを通じてOWD(BSAC)を取得。オーシャナを通じ、環境問題や海のことについて勉強中。
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