ニタリ説から一転、やっぱりウバザメか!? 続・大瀬崎に登場した巨大ザメの正体
2016年5月8日、西伊豆大瀬崎に登場した謎の巨大なサメ。
残された手がかりはたった1枚の写真で、浮上したのはウバザメ説とニタリ説。
そこで、生命の星・地球博物館の瀬能宏先生のお話をもとに、「ニタリの可能性が高いのでは?」とお伝えしました。
しかし、記事の公開後、改めて目撃者のはまゆうマリンサービスの西川洋子さんから連絡が。
「実は……尾びれの写真、ありました……」
えぇーっ!
ニタリだとすれば決定的な証拠になる尾びれ。
その写真がこちら。
あ、明らかにニタリの尾びれじゃない……。
絶対怒られるだろうなーと思いながらも再度、瀬能先生にお尋ねしました。
恐る恐る、尾びれの写真が出てきたことをお伝えしたところ、瀬能先生は快くコメントを下さいました。
以下瀬能先生のコメントです。
瀬能
尾びれの形状を含めて総合的にみて、頭部の形状が一致しないことを除けばウバザメの可能性が高いと思います。候補としてはオオワニザメもありますが、第2背鰭や臀鰭の形状、位置関係がどちらかと言えばウバザメです。当初、ウバザメとは背鰭の形状が一致しないと考えていましたが、海外の資料から問題無さそうであることを確認しました。
なるほど。
頭部の形状の問題が残るので、やはり断定はできないものの、一気にウバザメの可能性が高くなりました。
ところでウバザメって?
サメの正体がなんだったのか、真相は断言できないものの、ウバザメってあまり聞かない名前ですよね?
そこで、ウバザメとはどんなサメなのか、少しだけご紹介したいと思います。
【ウバザメ-Cetorhinus maximus-】
ネズミザメ目ウバザメ科ウバザメ属
■大きさ
世界で最も大きい魚はジンベエザメ。
このウバザメはジンベイに次いで2番目に大きい魚です。
1位のジンベエはあんなに有名で水族館の人気者なのに、2位というだけで一気に知名度が下がってしまいますね…
過去の記録では体長12m超、体重約16tという記録が報告されています。
■生態
プランクトン食のため、水面で口を大きく広げて泳いでいることが多いサメです。
動きは緩慢で、その速度はヒトが歩くスピードと変わらないかもっと遅いぐらい。
体高よりも大きく開いた口を見てか、そのゆっくりとした動きで簡単に捕らえられてしまうためか、かつては「バカザメ」なんて不名誉な和名がついていたこともありました。
水面から深海までを行き来し、プランクトンの少ない冬季には深海で冬眠しているとも、地球を股にかけた大移動をしている、とも言われています。
また動き自体は緩慢なものの、寄生虫を追い払うためか、クジラさながらのブリーチング(ジャンプ)を行うことも知られています。
■利用
かつてはその捕獲の容易さから、様々な形で利用をされていました。
肉は食用、皮は皮革、肝臓は油、さらに軟骨などは薬や媚薬などとして…
媚薬!?
非常に気になるところですが、詳しい文献は発見することが出来なかったので、真偽の程は定かではありません(笑)
そんな様々な活用がなされていたウバザメですが、近年は急速に個体数が減少してしまい、現在では捕獲はおろか観察例も激減しているのだとか。
今回のサメがウバザメだとしたら、本当にラッキーな出会い。
これだからダイビングはやめられませんね!
(取材・文/細谷 拓)