【トークイベント】上出俊作×岡田裕介 2人の写真家が語る「ザトウクジラを撮る」ことの意味
クジラの撮影で写真家が一番苦労することとは
上出氏
今、僕はキヤノンのミラーレス一眼で撮影をしているんですが、一眼レフで撮っていた頃よりすごく撮りやすくなりました。ファインダーを覗かなくていいので、周りが見えるようになって、クジラとの距離感がつかみやすくなったんです。
岡田氏
ファインダーを覗いちゃって、周りが見えないカメラマンって、正直僕も含めて多いんじゃないかと思う。距離感がわかるようになるって、クジラにとってもいいことかもね。
あと僕がザトウクジラを7年くらい撮影してきて、一番写真家が苦労することだと思うのが、船が必要だということ。海でクジラを撮影するためには船をチャーターしなくてはならないけれど、費用的な問題があって。上出君も同じだと思うけれど、結局お客さんをガイドしながら撮影することになる。またほかの船との兼ね合いもあったりと、自分以外の人とザトウクジラの三角関係じゃないけど、そういうところに難しさを感じますね。

上出氏
僕もホエールスイムをツアーにしてゲストの方に来ていただいて案内して、その中で撮影させてもらってます。本来はゲストの方が主役で、僕が前に出て撮影するというのは本質的に間違っていると思います。でも、それを許してもらっている以上は、写真展や写真集などで発表して、皆さんにありがとうという気持ちを伝えるくらいしかできないのかなと。
岡田氏
そういうところも上出君っぽいと思う(笑)。
上出氏
結局、ゲストの方がいるからみんなでクジラを見たいし、見せたいって言ったらおこがましいけれど、そういう思いがあるから頑張れたと思うんです。あと多分一人で撮影していたら、もっとクジラに優しくなっちゃうというか(笑)。
この3年間、シーズン中は毎日海に出ようと思っていて、一年に50日くらいはクジラを撮りに行っていました。それを3年もできて、本当に幸せな日々でしたね。もうずっとこんな日が続いたらいいなと思うほど。
岡田氏
僕は上出君がどんなふうにクジラを撮影しているのか、見てみたいとずっと思っていて。今年は予定が合わなかったけれど、来年はタイミングが合えば行きたいなと思ってます。
上出氏
なんて優しい人なんだ(笑)。ぜひ来年は来てください。
上出氏と岡田氏の対談、いかがだっただろうか? 写真家が作品に込める思いをダイレクトに感じることができる写真展、そして岡田氏が言われるように写真家と対話しているような気分になれる写真集。
ザトウクジラの写真を堪能できることはもちろんだが、上出俊作という一人の写真家の8年間の心の軌跡を体感できる写真展には、ぜひ足を運んでいただきたい。東京のキヤノンギャラリー銀座での展示は6月14日(土)までだが、7月15日(火)~20日(土)にはキヤノンギャラリー大阪で引き続き開催されるので、関西方面の方は要チェック!

水中写真家 陽だまりスタジオ代表

2003 年より、フリーランスフォトグラファーとして独立。沖縄・石垣島、ハワイ・オアフ島へ の移住を経て、現在は神奈川県の三浦半島を拠点に活動中。 水中でバハマやハワイのイルカ、トンガのザトウクジラ、フロリダのマナティなどの大型海洋ほ 乳類、陸上で北極海のシロクマ、フォークランド諸島のペンギンなど海辺の生物をテーマに活動。 2009 年 National Geographic での受賞を機に世界に向けて写真を発表し、受賞作のマナティ の写真は世界各国の書籍や教育教材などの表紙を飾る。温泉に入るニホンザルの写真はアメリカ・ スミソニアン自然博物館に展示。国内でも銀座ソニーアクアリウムのメインビジュアルはじめ企 業の広告やカレンダーなどを撮影。 またミュージシャンのライブ撮影も行い、雑誌、WEB、広告などに作品を発表している。