フィリピン(レイテ島)への支援金の募集と、現地での援助活動(第12回)

セブやマクタンに広がる風評被害。支援のために行うべきことは何か?

フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治)

18日は、1日中物資購入に奔走した。3カ所のスーパーを回り、2回民放テレビ局ABS-CBNに物資を搬入した。
購入した物資は、総額約40万円。物資購入を始めてから、合計で、約172万円になる。
ボランティアのトラックだけでなく、軍用トラックもかり出され、レイテ島やセブ北部への物資を運び続けている。

フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治)

セブ市内でジェネレーターやLEDライトを購入しようと思ったが、ジェネレーターは、2週間しないと入荷しないと言われた。
LEDライトなどは、再入荷のメドが立っていない。

フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治)

東日本大震災の津波のときと同じ現象だ。

当時、液状化現象に見舞われた新浦安に住んでいて(今もだけど)、液状化して、おまけに2週間も断水していたにも関わらず、輪番停電のローテーションの中に入っていたので、ライトや電池を買おうとしたが、まったく見つからなかった。

Facebookでその事を世界中に発信したら、世界中から山のようにバッテリーやライトが届けられた。
自分たちが必要と思う量だけ残して、後は、近所に配ったり、東北の被災地などに転送した。

台風ハイエンがフィリピンに上陸する直前の11月6日にセブに入り、すでに2週間。
12日から日本の皆様に支援金を募り、13日から毎日のように、物資を購入し続けている。

18日夜の時点で¥2,613,373の寄付金をEAST BLUEの口座に振り込んで頂いている。
日本に比べて、物価が1/3から1/4のフィリピンで物資を購入するわけなので、その価値は、800万円から1000万円になる。

そのため、一緒に活動している現地ダイビングサービス、BLUE CORALは、日本人・フィリピン人合わせて30人のスタッフがいるが、毎日物資購入のために、10人弱が通常のダイビング業務から外れて、物資購入に尽力している。
物資とスタッフ運搬用に、車も2台をフル稼働させている。

フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治) フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治) フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治) フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治)

なぜこのような内状を書くかには、もう一つ理由がある。

ここ数日間で、「台風の影響が心配なのでキャンセルしたい」という連絡が相次いだと聞いたからだ。
しかも、年末年始のキャンセルがあまりにも多い。

それは、BLUE CORALに限った事では無いらしく、数日前に、何社かのフィリピンのダイビングサービスのオーナーが集まった話し合いでも、このままでは深刻な状況だと話題に挙がったそうだ。
中には、「キャンセルして戻ってきた分のお金を支援金に充てさせてもらいます」という連絡もあったと聞いた。
BLUE CORALのオーナー・ヒロさんとしては、複雑な心境だっただろう。

その答えに関して、BLUE CORALとしては、「ありがとうございます」と言うしかないわけだが、部外者である自分の立場なので言わせてもらえば、現地に来て、潜る事をしてお店に利益を出してあげれなければ、この支援活動も続けることが困難になる。
それはセブのダイビング業界に限った事ではなく、観光収入が重要な位置を占めるセブの人々全てにおいて当てはまることだ。

「自分たちが食えなくなるのに、援助をいつまで続けられるのか・・・」

セブ南部、セブシティ、マクタン島は、今では、まったく問題無く通常の生活を続けている。
ショッピングモールでは、援助物資とはまったく関係無いイベントが催され、巨大でカラフルなクリスマスツーが飾られて、クリスマス商戦のまっただ中だ。

フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治) フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治)

海の中も、台風通過直後などに潜って伝えた通り、まったく影響は無い。

セブ島南部、マクタン島のダイビングは台風直後も通常通り。皆さん潜りに来て下さいね|オーシャナ
セブ周辺で通常営業するリロアン、モアルボアル、マクタン、ボホールに聞く現地の状況|オーシャナ

自分も少なからず報道機関にいた人間だから、理解できるのだけど、マスメディアというものは、当然それが使命であるから、災害や紛争の最前線での悲惨な映像や写真を世界中に発信し続ける。
日常と変らない生活を取り上げても、意味が無いからだ。

そこに風評被害が生まれる。

引き合いに出すのはいけないかもしれないが、伊豆大島が被災したとき、伊豆半島は同じような被害を受けただろうか。
大島は、伊豆東海岸からはフェリーでたったの30分、距離にして20kmから25kmの距離だ。
自粛ムードの漂う伊豆大島と違い、伊豆半島のダイビングエリアでは、連日のようにダイングを楽しむダイバーが訪れている。

一方、セブシティやマクタン島からマラパスクワ島までは、直線距離にして100km以上。レイテ島のタクロバンまでは、200km弱も離れている。
日本で200kmと言えば、東京から静岡や福島などと同じ距離だ。
セブシティやマクタン島では、今は被害に「ひ」の字も見当たらないし、治安も台風前とまったく変わりない。

フィリピン、セブ島での支援活動(撮影:越智隆治)

たまたまこの時期にロケでセブにいた自分は、15日に帰国予定だったが、支援金を募り、物資購入をするために、滞在を延期した。
しかし、いつまでもここに留まれるわけではない。

被災地に近いセブからの現状報告や支援物資の必要性を感じていた発生当初に比べて、今では多くの支援活動が始まっているので、後の継続した支援は、それが可能な、NPO団体、多くの支援活動家の方たちに任せれば良い。
自分自身は、月内には帰国をするつもりでいる。

その後を担ってくれるのは、ヒロさんを始め、BLUE CORALのスタッフたちだ。

風評被害も一つの災害だ。

「こんな時に」とか、「自分の身が心配」と思う人もいるだろう。
個々によって、考え方が違うことも理解している。

だが、もし、本当に援助をしたいと思うのであれば、治安も台風の被害もまったく無いセブに潜りに来てあげて欲しいと願わずにはいられない。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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