フィリピン(レイテ島)への支援金の募集と、現地での援助活動(第13回)

台風被害後のマラパスクア島の現状。優しく、たくましい島民たち

台風の被害に遭ったマラパスクア島

20日、マラパスクワ島唯一の日本人ダイビングサービス、ブルーヘブンのオーナーガイド、北川裕之さんと、台風ハイエンが通過した時に同島に滞在していた日本人スタッフ、佐々木万里子さんに直接お会いしてお話をお伺いすることができた。

マラパスクワ島のブルーヘブン北川裕之さん(右端)

台風後のマラパスクワ島の写真を見せて、皆に状況を説明する北川さん(右端)

マラパスクワ島は、セブ島の北にある、全長、1.5km×2.5kmのサンゴ礁が隆起してできた小さな島。
ニタリザメが高確率で見られることで世界的にも有名なダイビングディスティネーションだ。

「島には、物資も届いているし、食べ物は十分足りているんです。今は、とにかく家を再建するための資材が必要です」と語る北川さん。

「って言うか、台風直後から、食べ物には全然困りませんでしたよ」と佐々木さん。
「あれだけの被害に合いながら、島内の雑貨店は翌日から営業していて、食べ物や飲み物を売っていました。しかも、略奪どころか、水を買い占める人もいなくて、自分たちが必要なものだけをいつものように買っているだけで、いついっても、水とか手に入りましたよ」。

台風直後に見た、破壊されたマラパスクワ島の空撮と、タクロバンの物資略奪のイメージが大きかったために、その発言に驚かされた。

マラパスクア島内の雑貨屋(サリサリストア)

島内の雑貨屋(サリサリストア)は、台風後も品揃え豊富

「台風直後から、皆和気あいあいとしてて、あ〜、家直さなきゃねって感じで。タクロバンみたいな都会と違って、田舎の島の漁師さんたちだから、皆気の良い人たちなんですよね。きっと」と佐々木さんは笑う。

マラパスクア島の佐々木さん

笑いながら、台風体験を語る佐々木さん(左)

お話を聞いていて、東北の津波被害のときの新浦安に住む住人の感覚と同じだなと感じた。

新浦安は、地震で液状化が起こり、それだけ見れば一大事であったにも関わらず、死亡者は一人も出なかった。
本当は助けて欲しいけど、もっと大変な事になってる場所もあるし、不平は言えないから我慢する。そんな感じだ。

島内に発電所はあるが、復旧のメドは立っていないため、自家発電やジェネレーターを購入したり、ロウソクなどで生活しているという。
水は元々井戸水を利用しているので、確保できているそうだ。

北川さんは、台風直撃時には、日本に帰国していた。
その間、留守を預かっていたのが、佐々木さんとご主人の隆さん。
二人は、ダイビングサービスの隣にある、北川さん宅に泊まらせてもらっていた。

「台風の風雨がピークになる前に、旦那がフィリピン人スタッフと外を見回りに行って来ると言って、出て行っちゃって、そのまま帰って来なかったので、心配になりました。でも後で聞いたら、見回りの途中であまりに風が強くなってきて、家に戻れないので、避難所になっている学校の体育館のど真ん中で寝ていて、風がおさまったので、帰ってきたって」と他人事のように笑いながら話す佐々木さん。

しかし、さすがにピーク時には、部屋の中で、両手で頭を抱えてしゃがみ込んで、怖くて動けなかったという。

マラパスクア島の佐々木さん

「お店の方から、バリバリバリ!って何かが建物を壊す音が聞こえてきて、様子を見に行こうと思ったら、一緒にいたフィリピン人スタッフに止められました。おさまってから見に行ったら、大きな木がお店に貫通してました」。

マクタン島では、長くは続かなかった暴風雨も、マラパスクワでは、丸一日、激しい風雨が続いていたそうだ。

「とにかく、これからは皆、再建に向けて動き出さないといけません。すでに営業を再会しているホテルやダイビングサービスもあります。台風直後から潜っているお店もあったくらいですよ。さすがに自粛しろって言われちゃったみたいですけど(笑)。でも、彼等の話によれば、台風前と同じように、ニタリザメは健在だったそうです。自分のお店も12月半ばまでには、なんとか営業を再会させるつもりです」と北川さん。

北川さんが同島にお店をオープンしたのが、今年の5月頃。まだ半年しか経っていない時点での被災だった。
しかし、佐々木さん同様、あまり悲壮感を感じさせない二人。
それは、マラパスクワ島の住民たちと同じように、自然の中で生きて行く事の厳しさを悟っているかのようだった。

「自分のお店も直さなければいけないですけど、とにかく島民の人たちの家を建て直す資材を手に入れてあげたい」と語る北川さん。
「資材と言っても、島民の家はトタン屋根ですから、トタン一枚約270ペソ、600円から700円くらいなんですけど、それが一件につき、約10枚必要として、6000円〜7000円。屋根の必要な島民のリストアップとかしてみないとわかりませんけど、60万円から70万円あれば、100件分の資材が買えるんです。問題は運送費ですが、離れたセブシティではなく、一番近くて被害の無いボゴという町でまとめて買うことで、費用も安くできればと考えています」。

台風の被害に遭ったマラパスクア島

段ボールで壁を作ってしのいでいる家も

台風の被害に遭ったマラパスクア島

修復した仮設住宅的な、ボートキャプテンの家。これでも、廃材利用の家としては立派な方だとか

セブシティやマクタンからボゴまでは、車で約2時間。ボゴから、マラパスクワ島に渡るマヤの港町までは、約1時間。
マヤからマラパスクワ島までは船で約30分。

「マヤとボゴの間は、結構台風の被害があるなって感じですが、はっきり言って、ボゴは多少被害あるけど、その南からセブシティまでは、全然なんとも無い感じですよ。それはちゃんと伝えた方がいいと思いますね」と北川さんが言うように、日本の報道では、フィリピン全体が、レイテ島のタクロバン状態と勘違いさせるような見出しが多く、現地からすると、今「マスメディアによる、風評被害の二次的災害」を被りつつある。

国際援助を必要としている地域は、フィリピン全土ではなくて、レイテ島などのごく一部地域だ。

フィリピン台風の報道

まるで、台風被害でフィリピン全土が危険かのような、メディアの見出し


フィリピン台風、生存者襲う生きるための苦難 (AFP=時事) – Yahoo!ニュースより

物資の購入を一緒に続けるBLUE CORALでも年末年始の「台風の影響が心配なので」というダイバーからのキャンセルが相次いでいる。

セブの南にあるトロピカルパラダイスのガイド、ガルーダ五十嵐さんからは、22日から日本に帰国して、各地にて「セブへ来いっ大作戦!!!敢行して来ます!!!」というfacebookメッセージが届いた。

立場は違うが、北川さんのお店でも、当初40人いた年末年始のゲストから、すでに半分のキャンセル連絡が入っているという。

東北のときのように、現地にはガレキを撤去するためのボランティアとかは入っているのですか?と問うと「いえ、全然来てないですよ。物資は、ボランティアによってマヤの港町まで届けられて、そこからは自分たちで船で運んでますけど。ガレキ撤去のボランティアとか医療班なんて…自分たちで直してます」とのこと。

台風の被害に遭ったマラパスクア島

島民たちだけで、復旧活動を行なっている

マラパスクワ島の再建に少しでもご協力頂けるというのであれば、北川さんが島民の家を直すための資材購入のために充てる資金を、以下の口座にお振込頂ければと思います。
オーシャナとBLUE CORALへ届けられた支援金の一部もそちらに振り込ませて頂くことにします。
ご協力頂いた皆様、ご理解いただければと思います。

<ブルーへブン復興支援口座>
三井住友銀行 垂水支店
普通 キタガワ ヒロタダ
口座番号:5746661

楽天銀行 リズム支店
209 普通 キタガワ ヒロタダ
口座番号:1484849

ゆうちょ銀行
普通 キタガワ ヒロタダ
記号番号:14370 口座番号:59356051

また、今回の活動に関して、東北の津波後のガレキ撤去作業・復興に向けて発足したNPO法人三陸ボランティアダイバーズからも支持をしてくれるという連絡を頂きました(個人的な事ですが、実は自分は三陸ボランティアダイバーズの理事もつとめています。とは言っても、実質的な活動は、恥ずかしい程できていないのですが)。

今後は、BLUE CORAL、三陸ボランティアダイバーズ、オーシャナと連携して、支援に関わっていく事になります。

20日の物資購入は、お米(0.5トン)、インスタントラーメン(72個入り20箱)、水500ml 720本、シャンプー 208個、新品Tシャツ400枚、市販の抗生剤 20000錠、痛み止め20000錠、総計約¥758,000分の物資を購入した。

フィリピンでの物資援助活動

20日も支援物資を購入し、ABS-CBNに搬入した

全体の物資購入金額の総計は、約¥2,478,000になります。
皆様からお振込頂いた、支援金の総額は、19日の段階で、¥3,178,602になります。
多くの皆様からご協力頂き、本当に感謝いたします。

(写真提供:北川裕之さん、佐々木万里子さん)

引き続き、支援金のご協力は、以下にお願いします。

ジャパンネット銀行
すずめ支店 普通口座 2048472
ド)イーストブルー

※お振込の際、できれば「振込人名」の冒頭に「シエンキン」と付記ください。
重ね重ね、皆様のご協力に感謝いたします。

BLUE CORAL代表・下釜宏 
三陸ボランティアダイバーズ理事長・佐藤寛志
合同会社EAST BLUE(オーシャナ)代表・越智隆治

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writer
PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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