バリ島漂流事故、捜索協力金の使途のご報告と余剰金の使い道について

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2014年2月14日に発生したインドネシア・バリ島でのダイビング漂流事故。
皆様からお預かりしている捜索協力金の使途と今後の使い道についてのご報告です。

■これまでの経緯や捜索協力金についての詳細はこちらをご覧ください。
バリのダイビング事故、お預かりした捜索協力金の今後について | オーシャナ

■前回のご報告はこちらをご覧ください。
バリ島漂流事故、一つの区切りを受けての教訓の生かし方と捜索協力金の使途について | オーシャナ

魚の群れとダイバー(撮影:越智隆治)

この写真はイメージです。バリ島の事故とは関係ありません

現地ボランティアの余剰金は
バリセーフティートラストへ

オーシャナと同様、現地ボランティア有志が募った募金も余剰金が出ましたが、現地寄付金の余剰金は、「これからのバリ島でのダイビングを含む各種観光業界、地元団体の安全性の更なる向上を通したバリ島の発展のため、バリセーフティートラスト(Bali Safety Trust)でお預かり頂く事に致しました」(イエロースクーバHPより)とのことです。
※当事者であったイエロースクーバは閉店しました。

使い道としては、「もしもまた事故があったとき」に使うこととされ、それ以外に、捜索の訓練や、ショップへのレンタル用のLIFE LINE(携帯型GPS)の購入等が計画されているそうです。

オーシャナに集まった協力金は
捜索費8,800ドルに使用しました

オーシャナに集まった6,650,679円の協力金の使い道に関しては、まずは、繰り返しになる点もありますが、ポイントを整理してご報告します。

2014年2月21日のターニングポイント

オーシャナとしては、2月21日という日にちをひとつのターニングポイントだと考えます。
というのも、2月21日までは有志ボランティアであるダイビングショップが中心となって行った捜索であり、初動捜索の支援という目的にも合っていたからです。

2月22日以降は、当事者である現地ダイビングサービス「イエロースクーバ」を中心とした捜索となり、現地で集まったお金の管理も当事者に移りました。

その捜索の費用に関しては、現地の募金で十分まかなえることや当初の緊急を要する捜索と意味合いが異なってきていること、当事者がお金を管理することへの理解が得られづらいことなどの理由から、オーシャナの捜索協力金を使うことは不要と考えました。

よって、2月21日までの捜索費の一部を負担させていただきたいと表明してきました。

オーシャナは、最初にヘリの捜索費の提案をいただき、その後も現地との窓口をしていただいていた「スランガンマリンサービス」が立て替えた、ヘリ捜索費2回分8,800ドル(4,400ドル×2)を皆さまからお預かりしているお金から支払うことにしました。

※捜索ヘリコプターの領収書
捜索ヘリコプターの領収書 捜索ヘリコプターの領収書

あの時点で有効と考えらえたヘリ捜索には、新札を現金で用意することが必要で、皆様のお金は有効に使われたと考えています。

なお、オーシャナが状況確認や把握のためにバリへ渡航した費用(エア代金、宿泊費など)139,600円は、初動捜査という目的とは合わないと判断し、オーシャナが負担することにしました。

今回のレスキュー費用に
保険申請はされないことになりました

オーシャナでは、今回の捜索に関して、保険適用の可能性に注目してきました。
お金は十分過ぎるほどあったのですが、善意で集まったお金による早急な処理が「保険に入っていなくても、どうにかなる」というミスリードとなることを懸念していたからです。

今回は世間的に注目されたこともあり、たまたまお金が多く集まりましたが、いつも集まるとは限りません。
やはり保険に入っておくことはショップとしてもダイバーとしても大事なことだと考えます。

今回の捜索費用に関しては、保険申請はされないことになりました。

日本からのゲスト側との窓口になっていた旅行社によれば、保険申請の提案も含めて現地と相談していたそうですが、現地としては、皆さんから善意で集まったお金でまかなえることや、「大変な思いをしたゲストに請求することはできない」という思いや「同じバリで働く仲間を助けたかった思いが強く、そうした目的で寄付していただいた方が多かった」ということで、保険の請求をしないことに決定したとのことです。

現地バリの方々の、仲間であるダイビングショップを助けたいという思いや、いわば被害者とも言える漂流者たちに捜索費を請求するのは心情的にできないという思いは理解できますので、これはこれでひとつの選択だと思います。

ただ、オーシャナは、ダイビングメディアとして、バリの事故だけでなく、今後の教訓ということを考えた時、可能であれば保険が適用され、そのプロセスを公開するのが望ましいと考えました。

そこで、オーシャナの協力金で支払った8,800ドルに対して保険の適用が可能かどうかを探りました。
しかし、理解は得られず、また、直接捜索費を支払っている立場にもないことから保険の申請は難しいと判断しました。

当事者同士で話がまとまっている時に、保険の適用を提案するなど、関係者には不快な思いをさせてしまったかもしれません。
その点、お詫びいたします。

オーシャナがすべきこと
保険と事故の情報を充実させます

今回は皆さんの善意のおかげで多くの寄付金が集まりましたが、そうしたお金が見込めない状況の方が一般的であると考えます。

もし、これほど多額の協力金がなければ、おそらく保険の存在がクローズアップされたはずです。
寄付金がない状況で、捜索費を誰が払うかという話になったら、どうなっていたでしょうか。

また、当事者が寄付金を動かせる状況は適切だったでしょうか。
家族や仲間たちが懸命に捜索し、代表の高橋さんがお亡くなりになった中でこんなことを言うのもためらわれるのですが、別問題として考えねばならないことでしょう。
※オーシャナの協力金を2月21日前の捜索費にあてると表明したのもこのあたりが理由です

今回の事故では保険が存在感を発揮しませんでしたが、先述したように、お金が集まらないことがデフォルトだと考えるべきだと思います。

そこで、メディアとして、まずは緊急時の保険についての情報を、連載、もしくは特集でお伝えすることをお約束いたします。
これを機に、保険について学べる機会を設けることが、せめてメディアにできる前向きなことだと考えました。
また、同様に、今回の事故のようなケースにおける、予防策や対処法なども、お伝えします。

余剰金は基金にし、日本財団のアドバイスのもとNPOを立ち上げることとしました

皆様からお預かりしている協力金から、捜索費に使用した8,800ドルと送金手数料を差し引いても、5,735,723円の余剰金が残ります。

協力金は、捜索費を目的として募集したもので、まずは返金するのが筋でしょう。
しかし、あいにくこちらから返金する手立てがありませんので、返金希望の方はご連絡いただきますよう、お願い申し上げます(詳細は末尾)。

返金期間を過ぎた余剰金は、最も健全な形で有効に活かすために、支援活動や寄付活動など、日本の社会貢献のパイオニアである日本財団にいったん余剰金を預けることを検討しています。

NPOの設立までは数か月かかることがあるため、その間はNPO設立と同時並行で、日本財団と共に基金の活用について協議を行います。
NPOが設立され、活動計画や基金の性格が定まったところで、日本財団と一緒に事業を展開する予定です。

特定の目的のために財産を維持し、資金を積み立て、運用するための基金。
バリのケースと同じように初動捜索を想定していますが、現実性を探っている段階ですので、現時点での目的は“ダイビング事故対策”と広義に設定させていただき、有識者の意見も聞きながら具体化していきたいと思います。

そして、基金はNPOという形で管理・運用することが最適だと考え、日本財団の協力のもと、NPOの設立手続きを行なっています。

NPOが最適だと考えたのは、民間企業である合同会社EAST BLUE(オーシャナを運営している会社)が運用するより、非営利で社会貢献を目的とするNPOの方が、皆さんの思いとも一致すると考えたからです。

また、協力金が会社の口座にあることは問題であると認識しています。
当初より問題意識はあったのですが、他に妥当と思われる口座がなく、事故の性質上、スピードを優先した対応であったことをご理解いただけると幸いです。
民間のメディアである私たちを信用して協力金を振り込んでいただいた方々には、改めてお礼を申し上げます。

この口座の問題も、余剰金を基金の口座で管理することによりクリアにしたいと思います。
※口座の残高報告などにより透明性を担保する予定です。

そして、今回は理解が得られづらいと判断してオーシャナで負担したバリへの渡航費など、事故捜索に関わる周辺の費用なども、今後は、必要であればオープンな形で使用できる態勢を整えたいと考えています。

さらに、日本財団には、これまでオーシャナが行なってきた、東北やセブ、伊豆大島など、災害時における実際の協力・支援活動、メディアとしての発信を評価していただいており、事故の対策だけでなく、災害時にも、健全な形でダイバーの窓口になれば、よりNPOが意義深いものになるとの提案をいただきました。

そして、全国からこんなにも多くの捜査協力金が集まったという事実の裏付けとなるダイバーの想いを、一過性のものにするのではなくNPO活動として繋げるべきと、提案をいただきました。

※オーシャナがこれまで行ってきた活動
それでも海を信じたい|ダイビングと海の総合サイト・オーシャナ
めんこい魚がお出迎え!〜「たげなの海から元気を! in宮城・竹浦」レポート〜 | オーシャナ
震災から1年半。ダイバーによる海の復興支援を振り返る | オーシャナ
フィリピン(レイテ島)への支援金の募集と、現地での援助活動|ダイビングと海の総合サイト・オーシャナ
土石流災害から1ヶ月。伊豆大島ボランティアレポート – 伊豆大島|オーシャナ
伊豆大島ボランティア&ダイビング。現地に行ったからできたこと・分かること – 伊豆大島|オーシャナ

日本財団からそうしたご提案をいただいたので、NPOの目的は、事故対策に加えて災害支援も含める方向で考えています。

今回の余剰金を原資とした基金については、その性質上、あくまで事故のために使用し、その他のNPOの活動については、当面、日本財団からの助成金などを充てたいと考えています。

NPOは、規模からしても、あくまで我々が手の届く、ダイバーの役に立つことを目的として活動し、ひいてはそれが社会貢献になれば幸いです。

基金やNPOの設立に関しては、引き続き、この場でご報告していきますので、ご理解いただけますよう、お願い申し上げます。

返金期間は1ヶ月間(2014年7月17日まで)
希望者へのお願い

協力金の余剰金について返金を希望される方は、お手数ですが、下記までご連絡いただきますようお願い申し上げます。
※本日から1か月間、2014年7月17日で締め切らせていただき、余剰金は上記でご説明した用途に使わせていただきます。

連絡・問い合わせ先)

info@oceana.ne.jp

記入事項

  • メールの件名は「バリ返金希望」としてください。
  • 協力金のお振り込み時の名義名と金額 ※ご本人確認と照合のため
  • 返金のお振り込み先
    銀行名、支店名、預金種目、口座番号、お名前(名義)

※返金時の手数料は弊社が負担させていただきます。
(2014/6/19 AM1:25追記)
※ご希望の場合の返金額は、基本的には全額とします。支出額(ヘリコプター捜索費)を考慮した一定割合を返金というわけではありません。

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writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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