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ダイビング業界こそSDGsに積極的に取り組むべき〜対談:SDGパートナーズ・田瀬和夫さん×オーシャナ・河本雄太【前編】〜閲覧無制限

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オーシャナ・プロ
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「SDGs×ダイビングビジネス」連載開始

プロフェッショナルとして人々を海へ導き、自然を介して感動を与えるダイビングビジネス。
その未来をSDGs(エスディージーズ)を基軸に考察した時、そこにはどんな世界が待っているのでしょうか。

SDGs(エスディージーズ)とは
「Sustainable Development Goals」の略称。
2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき世界的な開発目標のこと。
17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されている。

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「SDGs×ダイビングビジネス」連載の第一回目は、SDGパートナーズ代表の田瀬和夫さんとオーシャナ代表の河本雄太の対談、前編をお送りします。

日本におけるSDGsのトップランナー・田瀬さんからみたダイビングビジネスとは?
ダイビングビジネスや自然環境保護、地方創生などをキーワードに多角的な活動を続ける河本とともに、掘り下げていきましょう。

左:田瀬さん、右:河本

左:田瀬さん、右:河本

SDGsに「海洋プラごみ問題」が
入っていない理由とは?

田瀬和夫(以下、田瀬)

さっそくですが、僕はダイビング業界こそ、SDGs(持続可能な開発目標)に積極的に取り組んで行くべきだと思うんですよ。

河本雄太(以下、河本)

あ、ちょっと待ってください(笑)。まずは、その「SDGsとは何か?」というところから話を進めたいと思っています。まだよく分からないという方も多いので……。

田瀬

わかりました(笑)。SDGsとは2015年9月に国連サミットで採択された“2030年までの国際目標”です。「2030年の世界がこんなふうだったらいいな」という理想ですね。17分野169項目に分かれています。

河本

はい。

田瀬

例えば「貧困をなくそう」「飢餓をゼロにしよう」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「安全な水とトイレを世界中に」といった感じです。その中に「海の豊かさを守ろう」という目標が入っているんですよ。

河本

そうですね。

田瀬

一方で、193カ国の合意なので入らなかったものもあります。例えばLGBT。ゲイ、レズビアンの人の権利です。

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河本

この問題は、なぜ入らなかったんですか?

田瀬

それは、国連としては問題ないけれども、イスラム教の国は同性愛を認めるというのが難しかった(編集部注:アジアや中東、アフリカでは、同性愛を法律で禁止している国があります)。

河本

そうですよね。

田瀬

ほかに高齢化の問題も入っていません。なぜかというと、世界では発展途上国で暮らす人の方が圧倒的に多いんです。すると若い人が多いため、日本みたいに高齢化が問題になっていません。あと、人工知能に関することも入っていませんね。採択当時は、まだあまり注目されていなかった。

河本

いまはものすごい勢いで注目されていますけどね。

田瀬

それから、海洋プラスチックゴミの問題も入ってません。

河本

そうなんですよね。2018年のG7では海洋プラスチック問題に取り組む「海洋プラスチック憲章」が提起されましたし、UNEP(国連環境計画)やOECD(経済協力開発機構)が報告書を出すほどの世界的な問題になっているにも関わらず……。

田瀬

SDGsには「海洋環境を守ろう」ということは書いてあるけれども、「プラスチックゴミ」という文章が入っていないんです。ですから、SDGs というのは2015年時点で合意できた国際目標ということになります。

河本

SDGsには、いま新しく起こっている問題を加えていく必要があるかもしれませんね。

田瀬

そうですね。

ダイビング業界こそ
SDGsに積極的に取り組むべき

河本

そろそろ最初のお話に戻りますが、なぜ「ダイビング業界こそが、SDGsに積極的に取り組むべき」だと思われるんですか?

田瀬

まず単純に、ダイビング業界は海に関わる仕事をしているので「海の自然を守ろう」「海の豊かさを守ろう」というのがあると思います。しかし、それだけではなくて、SDGsに取り組むことで“働きがい”が生まれるからです。

河本

働きがいというと、自分がやっている仕事が地球や世界のために役に立っているということですね。

田瀬

そうですね。ダイビング業界の人がSDGsをしっかり理解してお客さんに話していただくことで、「海の資源を守る」こともそうですし「貧困をなくそう」「飢餓をゼロにしよう」というSDGsの理想が広く伝わっていきます。さらに、ダイビング業界が儲かれば地方の経済に貢献できる。地元にお金が落ちるんです。

河本

なるほど。いまの田瀬さんのお話を聞いてパッと思い浮かんだのは、ダイビング業界で働く人は、お客様に「気候変動によって観られる魚が変わってきていますよ」とか「サンゴは簡単には育たないんですよ」「除草剤や農薬が含まれている土の流出によってサンゴがダメになってしまっていますよ」という環境問題を伝えることができるということですよね。

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田瀬

そうですね。

河本

僕、ダイビングショップの事業では、「バリアフリーダイビング」ということで、奄美大島の「ゼログラビティ」という施設を使い、障がいを持った方にもダイビングを楽しんでいただいています。それはSDGsの「すべての人に健康と福祉を」という目標にも関わってきますし、ダイビングのお客様って女性の方が多いんですけれども、これはジェンダーの問題にも関わってくるんじゃないかと……。

田瀬

はい。ただSDGsは慈善活動ではないので、社会貢献だけしていてもダメなんです。企業としては儲からなくてはいけない

社会貢献と同時に利益も追求すべき
SDGsがそのきっかけに

田瀬

社会貢献をしているけれども、同時に利益も追求していかなければ、企業としては成り立たないですよね。

河本

ダイビング業界は「海が好きだから」という気持ちだけで事業をスタートしている人がわりと多いので、儲けるという部分がおろそかになりがちです。

田瀬

ビジネスの話をすると、「単価を下げると質が下がる」ということが言えると思います。例えば、ダイビングショップが多い地域では、価格競争になって単価が下がりますよね。

河本

はい。

田瀬

もちろん、良いものを安く売るのが一番いいんですが、それだと長期的に持たないことが多いんですよ。

河本

特にダイビングはお客様の命を預かっている部分もあるので、対価と責任が釣り合わない部分が出てくる。

田瀬

だから、良いものだったら高くていいんです。最新の装備で、安全性が高く、環境に優しい。一流のスタッフがもてなしてくれる。すべてに配慮したダイビング。それだったら、多少、値段が高くても、そのダイビングショップを利用してみたいというお客さんは必ずいるはずです。

河本

僕もそう思います。

田瀬

ダイビング業界で働いている人が、クオリティの高いサービスを自信を持って提供する。すると社会貢献にもなるし、ダイビング業界も儲かるし、地方の経済も潤うようになる。僕は、SDGsがそのきっかけになると思っているんです。

〜後編に続きます〜

田瀬和夫 Kazuo Tase
「SDGパートナーズ」代表取締役CEO

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1967年生まれ。福岡県出身。東京大学入学後、1992年に外務省に入省。国連日本政府代表一等書記官、緒方貞子氏補佐官、国連広報センター長などを歴任。2014年に国連を退職し、「デロイトトーマツコンサルテイング」の執行役員に就任。2017年、SDGパートナーズを設立。

河本雄太 Yuta Kawamoto
「オーシャナ」代表

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1981年生まれ。埼玉県出身。2016年より、海とダイビングの総合WEBサイト「ocean+α」を運営する株式会社オーシャナ代表取締役を務める。ダイビングショップ経営をはじめ、自然環境保護、地方創生などをキーワードに多角的な活動を続けている。

■構成:村上隆保(湘南BBQクラブ

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