ダイビングショップがすぐにできる、海とサンゴを守る方法15選

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近年、海洋環境の保全がますます重要視されている。中でもダイバーにとって身近な存在であるサンゴは豊かな生態系を育むことで知られる一方、急速に白化や死滅が進み、生態系の変化が危ぶまれている。海をフィールドにサービスを提供するダイビングショップの皆様も海やサンゴを守るためにさまざまな取り組みをしているだろう。しかし、一方では「何かやらないといけないと思うけど、何をしたらいいのかわからない」という方もいるのでは。本記事では、ダイビングショップが実践できる具体的な海とサンゴを守る方法をご紹介していく。

サンゴに起きている問題

サンゴ礁は、地球の海洋面積の約0.2%しかないのをご存じだろうか。にもかかわらず、地球上の海洋生物の約25%の種類が生息するという生態系に重要な役割を果たしている。逆にいうと、サンゴが死滅してしまうとそれを取り巻く生態系が崩れ、食べられる魚やダイビングで見られる生き物が減ってしまう。沿岸では防波堤の役割も果たしているので、津波の被害が大きくなってしまうなど、人間への影響も計り知れない。

しかし、現在サンゴ礁は世界中から減少しており、現在も深刻な危機に直面している。原因はさまざまだが、たとえば気候変動による海水温の上昇、空気中の二酸化炭素が増えることによる海洋酸性化などが挙げられる。そのほかにも、ごみによる汚染や開発、乱獲、人がたくさん入ることによる破壊など、サンゴはさまざまな危機にさらされているのだ。

海水温の上昇が原因で白化したと思われるサンゴ(2024年7月@沖縄)

海水温の上昇が原因で白化したと思われるサンゴ(2024年7月@沖縄)

ダイビングショップが実践できるサンゴを守る方法

では、私たちには一体何ができるのか?ダイビングショップを営む中でできる、海とサンゴに与える負荷を少しでも減らす方法をここでは考えてみようと思う。

プラスチックごみの削減

プラスチックごみはサンゴだけでなくウミガメなど大きな生き物たちに直接絡みついて傷つける。マイクロプラスチックは有害化学物質を吸着する性質があり、それを食べたサンゴや生き物に悪影響を与えるだけでなく、それらを蓄積した海洋生物を私たち人間が食べることで人体にも悪影響を及ぼすことにつながってくる。海に流れ出てしまうプラスチックごみを減らすには、使用するプラスチックの量を減らすことが重要だ。

漁網が絡みついたサンゴ

漁網が絡みついたサンゴ

使い捨てでないカップでの飲み物提供

お客様に飲み物を提供する際に、使い捨てではないカップを使用すること。これにより、お客様の数だけプラスチックカップの量を減らし、お客様が購入するペットボトルの削減にもつながる。

ウォーターサーバー設置とボトルの貸し出し

ショップにウォーターサーバーを設置し、マイボトルの持参を促すことができる。ボトルを持っていない方にも、ショップから貸し出したり、販売したりすることで使い捨てプラスチックを削減できる。また、「mymizu」のようなアプリに給水スポットとして登録することで、新しいお客様の誘致につながるかもしれない。

タンクに貼るテープをキャップへ変更

満タンのタンクに貼るテープを、使い捨てでないキャップに変えるだけでも大きくプラスチックの削減につながる。

ダイビングにごみ拾いバッグを持参する

ダイビング中にごみを見つけたけど、持ち帰る手段がないからそのままにしてしまったという経験がある方も少なくないはず。ダイビングにごみ拾いバッグを持参しておくだけで、一つでも見つけたごみを海から取り除くことができる。

水中メッシュゴミ袋「オーシャンバッグ2」

海に化学物質が流れないようにする

生活排水や農地で使用する化学肥料など、さまざまな化学物質が海に流出し、サンゴに直接的なダメージを与えている。海に直接化学物質が流れないように、海で使うものについては化学物質が使用されていないものを選ぶなど工夫が必要だ。

船を点検しオイルが漏れないようにする、オイルを正しく処分する

船から漏れるエンジンオイルも有害物質も一つ。正しく点検し、オイルが漏れないようにすること、オイル交換時には正しく処分することが必要だ。

マイクロプラスチックを自動回収する船のエンジンも

サンゴに悪影響のある成分が入った日焼け止めを使用しない

すでにハワイやパラオなど多くの国で日焼け止めの使用に規制がかかり始めている。日焼け止めによく使用される成分が、サンゴに悪影響を及ぼすことが研究でわかってきたからだ。

サンゴに悪影響を及ぼす日焼け止めの成分

  • オキシベンゾン / Oxybenzone(BP3)
  • オクチノキサート / Octyl methoxycinnamate(EHMC)(別名:メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)
  • ナノ化された酸化亜鉛
  • ナノ化された酸化チタン

紫外線吸収剤であるオキシベンゾンとオクチノキサートはサンゴの白化やDNA、繁殖活動にまで影響を及ぼし、極小の「ナノ粒子」はサンゴが摂取してしまいDNAや成長に悪影響を及ぼす。そのため、これらが入っていない日焼け止めを使うことや、日焼け止めを使わなくても良いように、ラッシュガードや帽子などを使用することを推奨していこう。

【紫外線吸収剤不使用・ノンナノ・自然由来】海やサンゴに優しいおすすめ日焼け止め5選

環境に影響の少ない洗剤やシャンプーを使用する

外でシャワーを使う場合、排水整備がしっかりされておらずそのまま海に流れ出てしまうことも。器材を洗うときは水を使い、どうしても洗剤やシャンプーを使用する場合は生分解性の高いものや環境に影響の少ないものを選ぼう。

ウェットスーツにも使える環境にやさしい洗剤「All things in Nature」

ダイビング中に海の生き物や生態系に影響のある行為を避ける

多くの人が入るダイビングポイントでは、サンゴや生態系に人間の行動が直接影響を与えることになる。生態系の保全のために人が入ってはいけない期間を設けている箇所も海外には多々見られる。普段のダイビングで下記の行動に注意するとともに、お客様にブリーフィングで教えてあげることで、自分たちの案内するダイビングポイントを守ることにもつながる。

アンカーを使用しない、影響のない場所に下ろす

ダイビングポイントで大きな影響を与えている一つがアンカリングだ。サンゴのある場所にアンカーを落とすことで直接サンゴを破壊し、船が波や風で動くことでアンカーとロープを引きずり、さらに傷つけてしまう。ブイを利用したり、ドリフトスタイルで潜ったり、アンカーを下ろす際にはサンゴや他の生き物から離れたところに下ろすようにしよう。

アンカーによるサンゴの破壊は深刻だ

アンカーによるサンゴの破壊は深刻だ

魚の餌付けをしない

魚を餌付けすることで、その魚がもともと食べていたものを食べなくなり生態系が崩れてしまう。たとえば、サンゴについていた藻を食べていた場合、その藻が増えすぎて、サンゴが窒息したり光合成ができなくなったりして死んでしまう。

魚にエサを与えてはいけない5つの理由

海の生き物を触らない

サンゴをはじめ海の生き物に触ると自分が怪我をしてしまうことがあるばかりか、生き物やその住処を破壊してしまう。ダイビングをするときには中性浮力を保ち、何も触らないことを推奨しよう。お客様に中性浮力のコースを勧めてみるのも良いだろう。

CO2の排出量を減らす

気候変動の大きな原因といわれている温室効果ガス。このほとんどが人間の活動から出るものだ。気候変動による海水温の上昇を防ぐにはCO2の排出量を減らしていくことが大切だ。

照明を電球からLEDへ変更する

LEDは白熱電球に比べて同じ明るさを得るために必要な電力が少なく、その分CO2排出量はもちろん、電気代も抑えられる。また、寿命が約25,000時間から50,000時間と非常に長いため、交換頻度が少なく、ごみを減らすことも。

再生可能エネルギーの電気プランを利用する

私たち人間生活にとって欠かせない電気。ダイビングショップでログ付けをしたり、カメラやライトの充電をしたり、ダイビングショップでも多くの電気を消費しているはず。現在契約している電力会社はどのように発電しているかご存じだろうか? 発電方法や火力発電の燃料が変わるだけで、CO2の排出量は大きく変わる。CO2がなるべく少ない発電を行なっている電力会社に契約を変えるだけで、ショップでのCO2排出量を下げることができるのだ。

たとえば、ダイビングショップが日本で一番多い沖縄では「沖縄ガスニューパワー」がバイオマス発電(燃料:主にパーム椰子柄(PKS))による「CO2ゼロプラン」を提供されている。使用量に関わらず料金も抑えられ、「CO2ゼロ証明書」も発行し、店舗や窓口に掲示することでお客様へもPRができる。お財布にも環境にもやさしい電気プランなのだ。

また、新規お申込で「まだまだ!家計お助けキャンペーン」を開催しているので、この機会に身近な電気プランから沖縄貢献を検討するのはいかがだろうか。

ダイビングショップがすぐに実行できる、海とサンゴへの負荷を減らす方法を15個、紹介させていただいた。何をしていいのかわからないと思っていた方が、一つでも実行に移すためにこの記事が役に立ったら幸いだ。

※本記事の一部内容はサンゴを守るダイビング・シュノーケリングの国際基準「Green Fins」のガイドラインから作成しています。

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