日本のホエールウォッチング徹底ガイド!おすすめの時期と場所
地球最大級の哺乳類、クジラ。
一度は野生のクジラの勇壮な姿をこの目で見たいと願う方も多いのではないでしょうか?
海に囲まれた日本では、様々な種類のクジラが観察できます。
ホエールウォッチングのツアーを開催するお店も多い日本は、実はホエールウォッチング大国なんです。
今回は、そんな日本のホエールウォッチング事情をご紹介します。
種類や場所、シーズンもご紹介していますので、ぜひ旅の参考にしてくださいね。
ホエールウォッチングとは?
ホエールウォッチングは、主に船上から野生のクジラを観察するアクティビティです。
日本各地で盛んにホエールウォッチングツアーが開催されています。
とりわけアクロバティックな行動が見られるザトウクジラを観察することを指すことが多いですが、マッコウクジラやシャチ、ニタリクジラなどもホエールウォッチングの対象となっています。
一方で、野生動物であることから、100%遭遇ができるとは限らない点には注意が必要です。
近年では、野生のクジラと一緒に泳ぐホエールスイムも人気を得ています。
また、ダイビングショップがホエールウォッチングやホエールスイムのツアーを開催していることもあるため、クジラがやってくるシーズンにダイビング旅を計画する際には、ぜひ合わせて検討してみてくださいね。
ホエールウォッチングの魅力
ホエールウォッチングの最大の魅力は、普段見ることができない大きな海洋生物が見られること!
大人のザトウクジラの大きさは13〜15m。
時にこの巨体を海面上にジャンプ(ブリーチング)させます。
ちなみに、路線バスの大きさが10mほどなので……、路線バスを見かけた際は、ぜひバス以上の大きさの生き物が泳ぐ姿を想像してみてくださいね。
潮風を感じながら、大海原を悠々と泳ぐクジラを見る経験は、感動そのもの!
ぜひ、その迫力を肌で感じてみてください。
日本でのホエールウォッチングの基本
日本では、ホエールウォッチングツアーに参加して、クジラを観察するのが一般的です。
ホエールウォッチングツアーの所要時間は、約3時間で、午前と午後にそれぞれ開催されることが多いです。
クジラのプロである船長やガイドが、船からクジラを探し、案内してくれます。
料金や参加人数、送迎の有無などは船によるので、ツアー会社を探す時は自分に合うものをチョイスしましょう。
また、クジラが生息する海域では、ファンダイビングや体験ダイビング、シュノーケリング等にオプションでホエールウォッチングツアーを追加できる場合もあります。
また、ダイビングポイントの行き帰りで遭遇したり、ダイビング中に水中で遭遇する幸運に恵まれることもあるでしょう。
クジラとは?
そもそもクジラは鯨偶蹄目に属する生物の総称で、大きくヒゲクジラ類とハクジラ類の2つに分けられます。
ヒゲクジラ類は、歯がなく、内顎に生えているくじらひげ(ひげ板)でオキアミや小魚をはじめとするプランクトンを濾しとり食事をします。
対して、ハクジラは、魚やイカを歯で捕まえて食べます。
ところで、イルカもクジラの仲間ということをご存知でしょうか?
実は、クジラのうち、だいたい4m以下の大きさのものをイルカと呼び区別しています。
ヒゲクジラ類は、地球最大級のシロナガスクジラを代表に巨大な種が多く、体長5mのコセミクジラが最小なので、全てクジラ。
ハクジラ類は、大型のマッコウクジラやシャチはクジラと扱われる一方で、ハンドウイルカやカマイルカなどはその名の通りイルカと呼び分けられています。
クジラの主な行動
ホエールウォッチングの際、海で様々な行動を見せてくれるクジラたち。
その代表的な行動と種類をご紹介します。
ブロー(潮吹き)
クジラは、息継ぎのために水面に上がり、呼吸をします。
この時に見えるのがブロー(潮吹き)です。
ホエールウォッチングの際には、このブローを目印にクジラを探します。
クジラの種類により、ブローの角度や高さは異なります。
ブリーチング
海面から体を宙に踊らせジャンプするーー。
この大ジャンプのことを、ブリーチングと言います。
水しぶきと激しい音は、迫力大!
ジャンプから降りてくる時には、背中側から落ちたり、腹から落ちたりと、様々なバリエーションがあるのも魅力です。
また、行動としてはよく知られているブリーチングですが、なぜクジラがブリーチングをするのかは分かっていません。
・他のクジラへの合図なのか?
・寄生虫を落とすためか?
・ただ遊んでいる?
などと仮説はあれど、未だ決定的な理由は判明していません。
ブリーチングは、一度だけのこともあれば、何度も繰り返すこともあります。
必ず見られるものではありませんが、ホエールウォッチングに参加するなら、ぜひ見てみたい光景ですね。
テールスラップ
宙に突き出した尾ビレを海面に叩きつける行動です。
ザトウクジラやシャチが行うことが多く、何度も繰り返すことが多いです。
スパイホップ
海面から顔を出し、あたりを見る行動です。
ペックスラップ
ペックは、胸ビレのこと。
胸ビレを宙に出し、海面を叩きつける行動です。
繰り返し行われることが多いです。
代表的なクジラの種類とその時期
日本のホエールウォッチングで観察できるクジラの中から、ザトウクジラ、マッコウクジラ、シャチをピックアップしてご紹介します。
ザトウクジラ
ホエールウォッチングで最もダイナミックな姿が見られるのがザトウクジラでしょう。
ザトウクジラは、大人のオスで体長13〜15m、体重は30〜40tのヒゲクジラです。
この巨体を宙に踊らせジャンプ(ブリーチング)したり、尾ビレを海面に叩きつけたり(テールスラップ)と迫力ある姿を見せてくれます。
ザトウクジラは回遊しながら生活します。
日本を訪れるザトウクジラは、夏には餌が豊富なロシア、アラスカなどの寒い海で過ごし、冬になると繁殖や子育てのために暖かい日本近海にやってきます。
特に日本でザトウクジラが見られるのは、小笠原諸島、南西諸島(沖縄諸島、奄美群島)ですが、近年では八丈島でも見られています。
生まれたばかりの子どもクジラを連れた母クジラや求愛の歌(ソング)を歌うオスなど、様々なザトウクジラが観察されています。
マッコウクジラ
ハクジラの中では最大の種類。
マッコウクジラのオスは、16〜18mという大きさです。
また、世界中の海に生息し、性別や年齢ごとに生息海域や群れが異なります。
日本では、北海道や千葉県、和歌山県などでホエールウォッチングの対象となっています。
深海で狩りをすることが知られており、水深1000m以上潜ることができるんだとか。
人間の目の届かない深い海でダイオウイカと戦って食べているのではないかと言われています。
通年見られる可能性がありますが、水深1000mの海域まで船を進める必要があります。
シャチ
先ほど、イルカもクジラの仲間とご紹介しましたが、シャチもクジラの仲間です。
ハクジラの仲間で、オスで大きさ6〜8mほど。
黒い体に白い模様(パッチ)が映える、人気のクジラです。
水族館で飼育されているシャチは、背ビレが垂れ下がってしまうことが多いですが、野生のシャチでは、ほとんどの場合、垂れ下がっていません。
ピンと立った長い背ビレは、野生のシャチである証でしょう。
シャチのホエールウォッチングといえば、北海道の知床・羅臼が有名です。
知床半島の雄大な自然を満喫しながらシャチを探す時間は、貴重な経験になるはずです。
日本のホエールウォッチングにおすすめの場所と時期
日本では、多様な種類のクジラが観察できるホエールウォッチングがあり、それぞれ観察できる時期と場所が異なります。
代表的なものをまとめました。
【北海道】知床・羅臼のホエールウォッチング
4月下旬〜10月中旬が、北海道の知床・羅臼のホエールウォッチングのシーズン。
春〜初夏はシャチやミンククジラ、夏〜秋はマッコウクジラが観察できます。
特にシャチのホエールウォッチングがコンスタントにできる場所は貴重なため、シャチを目当てにホエールウォッチングに参加する方が多いです。
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【東京都】小笠原諸島のホエールウォッチング
小笠原諸島にザトウクジラがやって来るのは、毎年12〜5月頃。
その中でも2〜4月が、ザトウクジラのホエールウォッチングのベストシーズンです。
ボートでのホエールウォッチングが盛んに開催されているほか、高台にあるウェザーステーションに登ると陸からホエールウォッチングをすることもできます。
また、マッコウクジラは通年生息していることが確認されているものの、やや沖合でのホエールウォッチングになることから、海況により実施できる日が少ないという側面があります。
海況に恵まれた日には、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
【和歌山県】串本・那智勝浦のホエールウォッチング
和歌山県の串本・那智勝浦では、3月下旬〜9月頃(ツアー会社により異なる)にホエールウォッチングが開催されており、熊野灘を回遊しながら出産・子育てをするマッコウクジラを観察できます。
他にも、ザトウクジラやセミクジラ、ゴンドウクジラを見られることもあります。
【高知県】宇佐・大方・土佐清水のホエールウォッチング
5〜10月頃が、土佐湾のホエールウォッチングのシーズン。
そこで高確率で出会えるのがニタリクジラ。
ブローやフィーディングなどの行動を観察できる可能性が高いです。
【千葉県】銚子のホエールウォッチング
銚子沖でマッコウクジラやザトウクジラなどを観察できるシーズンは、11~3月頃。
カズハゴンドウやハナゴンドウ、コビレゴンドウなどと出会えるほか、時にシャチがやってくることも。
【鹿児島県】奄美大島・徳之島・沖永良部島のホエールウォッチング
奄美大島をはじめとする南西諸島にザトウクジラが訪れる12〜4月は、鹿児島のホエールウォッチングのシーズン。
特に観察しやすいのが、1〜3月頃です。
近年、ホエールウォッチングが盛んな奄美大島には、この冬季限定のアクティビティを求めて多くの人が集まります。
奄美大島のほか、徳之島や沖永良部島でも、ホエールウォッチングツアーが開催されています。
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また、奄美大島・徳之島・沖永良部島では、自主ルールに基づき、ホエールスイムも開催されており、盛況です。
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【沖縄県】慶良間諸島(座間味島・渡嘉敷島)
沖縄本島・久米島のホエールウォッチング
12〜4月、慶良間諸島にザトウクジラがやってきます。
慶良間諸島の中でも、特に盛んなのが座間味島。
1991年に発足された座間味村ホエールウォッチング協会が、山の上の展望台から見つけたブローを各船長に連絡。
高確率でスピーディなクジラとの出会いが期待できます。
また、渡嘉敷島でもザトウクジラのホエールウォッチングが開催されています。
また、沖縄本島各地から慶良間諸島をはじめ、伊江島などの沖縄本島近海へとクジラを観察しに行くホエールウォッチングツアーも多く開催されています。
アクセスの良い那覇発の船もあるため、旅程に合わせてチョイスできます。
また、沖縄本島周辺や久米島では、ホエールスイムも開催されています。
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ホエールウォッチングに必要な準備
ホエールウォッチングはボートやクルーザーに乗船し、クジラを観察しに行くアクティビティですが、そもそも船上という環境に慣れていない方も多いかもしれません。
ここでは、服装や持ち物についてご紹介します。
服装について
基本的に季節に応じた服装となりますが、夏は日差しが強いため紫外線対策は必須です。帽子やサングラス、長袖を準備しましょう。
冬は、陸上よりも冷えますし、時に波しぶきがかかることも。
風も強いため、陸上で過ごす服装にフリースやベストなどを一枚足した上で、防風防滴が期待できるボートコートやウインドブレーカー、ない場合はレインコートを着用するのもおすすめです。
また、船は揺れることもあるため、基本的にヒールはNG。
歩きやすい靴を準備しましょう。
携行品について
ホエールウォッチングの際は、必要に応じて下記のものを準備しましょう。
・カメラ
・双眼鏡
・飲み物
・酔い止め
・サングラス
・日焼け止め
・タオル
参加するホエールウォッチングツアーによっては、船に準備してくれている場合もあるので、事前に持ち物の確認を行いましょう。
下記に、特に気を付けたい持ち物について、ご紹介します。
カメラ
必ず持っていきたいのが、カメラ。
貴重な瞬間をぜひ記録に残しましょう。
カメラは、防水ケースに入れて持参した方がベター。
または、防水機能付きのものだと安心です。
また、ブリーチングやブローの一瞬を撮影するためには、シャッタースピードがコントロールできる一眼レフカメラやミラーレスカメラがおすすめ。
ブレてしまう場合は、動画の撮影に切り替えた方がいいでしょう。
スマートフォンで撮影する際は、くれぐれも落とさないように気をつけてくださいね。
双眼鏡
クジラを探す時や観察する時、双眼鏡があると便利です。
船上は揺れるため、双眼鏡を選ぶ際には手ブレ防止機能があるものにしましょう。
船酔い対策
船に乗ることに慣れていない方は、事前に酔い止めを服用しておくと安心です。
また、二日酔いや寝不足などの体調不良だと船酔いしやすくなってしまうため、前日のお酒は控えめにして、早く寝ることを心がけたいですね。
空腹や満腹も船酔いの原因になりやすいため、程よく食事をとって乗船しましょう。
船酔いの対処法については、下記の記事をご参照ください。
ホエールウォッチングのルールとマナー、注意事項
ホエールウォッチングツアーに参加する際は、船長の指示に従いましょう。
船の上は、揺れます。
特にライフジャケットを着用するなど、安全上の注意事項は必ず守りましょう。
また、ホエールウォッチングツアーは、各地のホエールウォッチング協会や各店のルールに従って運営されています。
クジラに近づきすぎない、騒音を出さない、水中に入らない(スイムをしない)など、様々です。
野生動物の生息域にお邪魔している意識を持つことを忘れずにホエールウォッチングに参加したいですね。
また、クジラは野生動物であるため、100%遭遇できるとは限りません。
(ツアー会社によっては、遭遇できなかった場合に全額返金保証を設けているところもあります)
そして、海況により出港できないことがある点にも注意しましょう。
まとめ
広大な大海原で、野生のクジラと出会える奇跡。
もし出港できなかったり、遭遇できなかったりしても、それも自然!とおおらかに受け止めたいですね。
ぜひこちらの記事を参考に、クジラと出会う計画を立ててみてください。
きっと忘れられない思い出ができるはずです。