そのインナー本当に寒くない?WD監修、正しいドライスーツインナーの選び方

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やさしい風が心地よく流れはじめた今日この頃。新しい季節を迎えるたびに行う衣替えは、四季が美しく映える日本ならではの文化である。

そんな環境の変化に伴い、ダイバーたちも適切なスーツやインナーを着用していることは言うまでもない。しかし、陸上とは異なり、熱が奪われやすい水中では、防寒対策は必須だ。

なかでもドライスーツは、季節に合わせたインナーを選択することで、オールシーズン快適にダイビングすることができるマストアイテム。

しかし、ドライスーツの役割を正しく理解していなかったり、インナー選びを間違えていたりすると、かえって体を冷やしてしまうこともある。筆者自身もこれまでのダイビング経験の中で、ドライスーツのインナーには頭を悩ませ失敗を繰り返してきた。

そこで本記事では、ドライスーツの正しいインナーの選び方をダイビングスーツメーカーのワールドダイブに監修していただき、ご紹介していく。

実践していただければ、寒いというストレスから解放されオールシーズンダイビングを楽しめるようになる。本記事を参考にドライスーツを着こなして、引き続き快適なダイビングを楽しんでいただきたい。

 

そもそもドライスーツってなんだっけ?

まずはドライスーツの役割について振り返ってみよう。ドライスーツとは潜水専用の防水スーツのこと。ブーツ一体型となっており、首から上と手の2ヵ所しか水に触れることがない。さらに、なるべく体を冷やさないことで疲れを低減させる役割もある。

ダイビング器材の基本講座

ドライスーツはネオプレンタイプとシェルタイプの2つの種類に分けられる。この2つのドライスーツの違いは素材で、それぞれにメリットがある。まずネオプレン素材は、その素材自体に伸縮性や保温性があるため、薄いインナーで使用することが推奨されている。一方でシェル素材の方は、素材自体に保温力がないので、厚いインナーを着用して使用するのが一般的だ。さらにシェル素材は、素材自体が水圧で潰されないため、水中での浮力変化が少なく、保温力の高い点が大きな特徴である。

ドライスーツの保温機能とインナーの関係

ドライスーツは主に次の3点が揃うことにより、保温効果が発揮される。

  • 水に濡れないこと
  • 空気の層を体温で温めること
  • 正しいインナーを着用すること

スーツと体の間に空気の層を作ってくれるインナーを着用することで保温効果を高めることができるようだ。

しかし、暖かさだけに注目しドライスーツと相性の悪いインナーを選択してしまうと、快適なダイビングの妨げになってしまう恐れがあるのでご注意を。
ここからは、まずドライスーツのインナーとして相応しくない物をピックアップしてご説明していこう。

実は体を冷やしてしまうインナーとその理由

ヒートテック

保温効果が高くインナーとして人気商品のヒートテック。寒い時期には欠かせないアイテムだが、ドライスーツのインナーとしては相性が悪い。ヒートテックは汗などの水分を吸収することで発熱するという機能を用いており、素材もナイロンやレーヨンといった汗を吸収するための素材を使っている。しかしそれでは、インナーが濡れてしまうため、寒さに追い討ちをかけているどころか、2本目のダイビング意欲まで取られてしまうのはよくある話だ。ダイビングのインナーと相性が良いのは、汗や結露を吸わず、サラッとした状態をキープしてくれることが大切だ。

綿素材の衣類

綿素材の最大のデメリットは、ナイロンやレーヨンと同様に汗をしっかりと吸収してしまう点である。水分を吸収してしまうとさらに綿素材も熱がこもりやすく、結露ができやすくなってしまうため、先ほど記述したヒートテックと同様、「冷え」の原因となってしまう。
さらに綿素材の衣類は浮力が大きいため、適性ウエイトを自分で判断できず、オーバーウエイトでダイビングをすることにもなりかねない。保温を目的に厚着をすることは、水中をか的に過ごすための対応として適切でないことがお分かりいただけるだろう。

フード付きパーカー

とくに、バックファスナータイプのドライスーツを着用している方におすすめできないのがフード付きパーカー。ドライスーツのインナーとして活躍しないフード部分はウエイトを増やしてしまう原因となる。また、バックファスナータイプのドライスーツは基本的に自分で閉めることができず、バディやインストラクターにお願いすることになるが、フードがついているとファスナーを閉めづらくなってしまう。それだけでなく、ファスナーにインナーを噛み込んでしまうとファスナー破損の原因となり、水没にもつながる恐れも。また、ファスナーを破損すると交換修理しかできないため、高い修理費用がかかってしまうので注意が必要だ。さらに、器材を背負うためダイビング中も背中に違和感があり小さなストレスを生んでしまう。ファスナーを閉めてもらう相手への思いやりや自分の快適なダイビングのためにも、フード付きは避けた方がいいだろう。

フード付きパーカーに加え、ファスナー素材が硬めのパーカーもおすすめできない。というのも深度変化に伴ったアクションとして、ウエットスーツ着用時にはBCDの給排気のみだが、ドライスーツ着用時にはBCDに加えスーツの給排気も必須となる。スーツ内への給気を怠ると、スクイズ(締め付け)により、体にあざができてしまう可能性がある。またドライスーツ初心者は浮いてしまうといった恐怖からドライスーツの中に空気を入れたがらない人が多いように思う。スクイズを考慮し、あざの原因となりそうな太めのファスナーパーカーは選択しないことをおすすめする。

ハイネック

首元を冷やさないことは防寒のおきてのようにも思えるが、ハイネックは避けた方が良さそうだ。というのもドライスーツのネック部分は折り返すことで首に密着させ、水の侵入を防ぐ役割がある。一本の髪の毛すら、ドライスーツと首の間に入ることを許さない。そんな繊細な首回りに、ハイネックタイプの衣類が入ってしまったら水没の原因になってしまう。防寒どころか、ドライスーツの役割すら果たせなくなってしまうのでご注意いただきたい。

衣類の素材に注目しよう

例にもあげたようにドライスーツのインナーは、保温性だけでなく速乾性や運動性なども重視する必要がある。運動性に関しては、自身の動きやすい服装を想像していただければ問題ないが、汗や蒸れは体を冷やす原因になってしまうため、インナー選びには衣類の素材が重要。なかでもポリエステルやポリプロピレンなどの素材は、吸汗性や速乾性に優れているため、登山用のインナーでも採用されているほどだ。登山でもダイビングと同じような機能性が重視されるため、ドライスーツのインナーとして代用することができる。

ドライスーツのおすすめインナーをタイプ別にご紹介

冒頭でも記述したが、ドライスーツはシェル素材とネオプレン素材といった2種類に大きく分けることができる。それぞれに適するインナーをご紹介していこう。

ネオプレンドライにおすすめのインナー

まずはスーツ本体にも保温効果のあるネオプレン素材のドライスーツに適したインナーから見ていく。今回ピックアップしたのは次の3つ。メインで使用できるインナーを順にセレクトしたので、季節や用途に合わせて組み合わせてみるのが良いだろう。

サーマルボディスムーサー/ワールドダイブ

ワールドダイブが手がける「サーマルボディスムーサー」は最も長く活躍してくれるメインのインナーだ。撥水性、保温性、ストレッチ性、透湿性、防風性、防水性といった6つの機能をもった三層構造の素材を採用することで、汗や蒸れで生じた不快感を解消し快適な着心地を提供する。またフロントファスナー仕様のため、脱着もスムーズに行える優れもの。水中だけでなく、ダイビング前後の陸上も快適に過ごせるように考えられたドライスーツ専用の一着。また筆者自身も長年愛用しているダイビングアイテムのひとつでもある。

アンダーウォーマー/ワールドダイブ

「アンダーウォーマー」もワールドダイブ が開発したドライスーツインナーだ。着た瞬間から暖かく感じる蓄熱素材を使用しているため、保温性は抜群。また、春や秋のシーズンにはアンダーウォーマーだけでも快適にダイビングが可能だ。こちらの商品は、次に紹介する「サーマルボディスムーサー」と併用することで、さらに保温性を高めることができる。

アウトラスト/ZERO

潜水専用スーツを手掛け、2020年には創業60周年を迎えた株式会社ZEROが、アウトラスト社の特許技術であるアウトラスト®︎機能を採用し制作したインナーウエア。体の熱さを感知して、余分な熱を吸収、蓄熱してくれるだけでなく、寒さを感知すると蓄えていた熱を放出するといった優れもの。また、袖口ループが施されていることにより、袖がまくり上がることなくスムーズに着用できる。一番薄い素材なので、水温が下がり始める時期や他のインナーと組み合わせるのが良いだろう。

上:OL-1102 ロングタッパー
下:OL-1202 ロングパンツ

シェルドライスーツにおすすめのインナー

続いて浮力変化が少なく、水中パフォーマンス力が落ちないシェルドライスーツのおすすめインナーをご紹介する。

COMFORT PRIME(コンフォート プライム)/モビーディック

出典:モビーディック

シェルドライ用のインナーに、厳しい環境で訓練する米軍のために開発された中綿素材“PRIMALOFT®”(※1) を採用しているため、暖かさや軽さ、強撥水性、超速乾性も兼ね備えている。インナー内の余分な空気を排気しやすくするためにとり付けられた両上腕部のベンチレーター機能や裾のまくれ上がりを防止するための足掛けコードなど、細部までこだわった商品。

(※1)プリマロフト®は、アメリカ国軍の要請を受けたALBANY社が開発した、羽毛に代わる画期的な超微細マイクロファイバー素材。羽毛のように軽くて暖かい保温性と柔軟性を発揮するだけでなく、羽毛にはない撥水性も発揮する。それまでにはない画期的な機能性(断熱・防寒テクノロジー)と、どんな環境でも使える高い実用性を兼ね備えた画期的な人工羽毛として誕生した。

ボディ・ヒート・ガード/ワールドダイブ

ボディ・ヒート・ガードは、シェルドライスーツを着用するダイバーのためにワールドダイブが開発した、専用のインナーウェア。 ワンピース・ツーピースともに、中綿素材には、保温力と速乾性に定評の高機能中綿素材「3M™シンサレート™(※2)」を採用している。極寒の海など過酷な環境下においても抜群の保温性と運動性で、スクイズに負けない実力を確実に発揮する。

IWシリーズ/ZERO

日本人に適合したZEROオリジナルのロングセラーインナーウエア・IWシリーズ。天然ダウンに匹敵する保温力で、肌触りも良く、結露や汗によって起こる蒸れを抑えた快適なスーツだ。IWシリーズはIW-2200、IW-3200、IW6200の三段階で展開されており、後者になるに連れ、人工中綿量が増え保温力が高まる仕様となっている。また人工中綿の繊維は細く柔らかいため、内部で偏ることがなく、洗濯機で洗うこともできる。手入れも簡単で濡れても高い保温性を保つ優秀なインナーだ。IW-4000ウォームソックスの展開もおすすめ。

※注意
今回ピックアップした3つの商品は、ネオプレンドライスーツでも着用できるが、インナーが分厚いため、ドライスーツ本体にゆとりを持たせてオーダーするのが良い。

本記事では、ドライスーツのインナー選びのコツをご紹介した。ドライスーツの役割を理解し、適したインナーと組み合わせることで保温性が高まるということがお分かりいただけたはずだ。また、選びがちな厚手のトレーナーは浮力があるため、オーバーウエイトになってしまいがち。冷えというストレスに加えて、いつもより重いウエイトを身に付けることになるため、快適なダイビングからは遠ざかってしまう。四季が美しい日本ならではの海を楽しむためにも、ドライスーツに適したインナーを選択できるダイバーにレベルアップしオールシーズンダイビングを楽しんでいただきたい。

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PROFILE
静岡県西伊豆町出身。

ドルフィントレーナー専門学校を卒業後、ダイビングインストラクターや操舵手といった海に関わる職歴を持つ。

現在は、ライターとして「地球に暮らす全ての生き物がHAPPYな未来を」と願い、記事を書く。
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