シェルドライとネオプレンの違いとは?ドライスーツのプロに、特徴や選び方を徹底解説してもらいました!
完全防水システムを採用し、水温が低い環境でのダイビングを可能にするドライスーツ。素材や構造の違いから「ネオプレンタイプドライスーツ」と「シェルタイプドライスーツ」の2つに分類することができます。
今回は、国産ダイビングスーツメーカーとしてプロダイバーからも絶大な支持を得る、ワールドダイブ株式会社の高橋信弘さんから、それぞれの違いや長所についてお話を伺いました。
ネオプレンタイプとシェルタイプのどちらを買うべきか、と迷っているダイバーの皆さん、ぜひ参考にしてください!
ドライスーツの役割とは?
ーーそもそも、ドライスーツはなぜ必要なのでしょうか?
高橋さん
皆さんご存じの通り「低水温下でのダイビングに適した防水スーツ」というのがドライスーツの大前提です。
そして、この水に身体を触れさせないこと、つまり、なるべく身体を冷やさないということが、疲れを軽減することにつながるんです。
なぜなら、寒くて震えるのは身体が熱を生み出そうとしているためで、体温を元に戻そうとかなりの体力を消費しているのです。
震えるほどの水温ではなくても、「ウエットスーツで1本潜ったあとに睡魔がくる」なんてときは、熱を作るために身体が疲れている証拠といえます。
そんな理由から、体力の消費を抑えるために、「日本では真夏以外はドライスーツで潜る」というプロやベテランダイバーも珍しくはありません。
日帰りダイビングで早起きして、往復路に車の運転をする必要がある場合は、特に体力の温存が課題になりますからね。
ーーなるほど。確かに、ドライスーツで潜ると身体が楽という感覚があります。ウエットとドライの切り替え時期の目安はあるのでしょうか?
高橋さん
弊社では、水温と気温ともに22℃以上ならウエットスーツ、どちらか一方でも22℃を切ったらドライスーツの着用を推奨しています。
伊豆半島で考えると、7月中旬~9月中旬くらいの2ヵ月以外の10カ月間はドライスーツがおすすめということになりますね。
特徴を徹底解説!その1
シェルタイプドライスーツ
ーーまずは、一般ダイバーにはあまりなじみのない、シェルタイプドライスーツの特徴から教えてください。
高橋さん
シェルタイプドライスーツ(以下:シェルドライ)の一番のメリットは、水中でスーツ自体の浮力がほとんど変化しないことです。
ネオプレンタイプドライスーツ(以下:ネオプレン)は、ウエットスーツと同様にゴムに気泡があり、スーツ自体が保温力を持っています。
ただし、水中でこの気泡は、潜降して水圧が大きくなるとつぶれ、浮上して水圧が少なくなると元に戻っていくため、スーツの浮力が大きく変化するのです。
その点、シェルドライは、素材自体が薄く気泡がないため、水中での浮力変化がほとんど生じません。
高橋さん
私自身はシェルドライを使っているんですが、浅場でピタリと中性浮力をとれる感覚は、ネオプレンでは味わえないものですよ!
ただし、シェルドライの素材は伸縮性がないため、大きめのサイズで作る必要がある点と、スクイズがきつめにかかる点を知っておかなくてはいけません。
結果として、ネオプレンよりもたくさんエアを出し入れする必要があるので、ドライスーツの操作に慣れていない方は少し戸惑うかもしれませんね。もちろん、ドライスーツの基礎スキルが整っていれば、問題なく使いこなせるはずです。
ーー水中での保温力はどうですか?
高橋さん
スーツ自体に保温力を持たないため、厚めのインナーウエア(以下:インナー)を着て調節する必要があります。水温によってインナーで保温力を調整するのはネオプレンも同じですが、その幅はかなり広いということになります。また、それによりウエイトの調整も大きく変わってきます。
冬場は水中でも陸上でも快適に過ごせても、梅雨時期などの湿度・気温が高い時期などは、陸上でちょっと暑いと感じることがあるかもしれませんね。
シェルドライは薄くて素材自体に断熱効果がないため、スーツ内の温度と水温に差が出て、スーツの内側が結露します。特に、内側の素材に吸水性がないと、びしょびしょになるくらい結露することもあります。
その点、弊社のスーツの内側にはジャージが貼ってあるため、その結露を軽減できるようになっています。
<メリット>
- 水中でスーツ自体の浮力がほとんど変化しない
- 軽くて動きやすく、持ち運びもしやすい
- 水圧による素材の収縮や膨張が少ないため、素材が傷みづらい
- 厚手のインナーを着込めるので、水中で粘るフォト派向き
- フロントファスナーの開閉が1人でできる
<デメリット>
- 素材に伸縮性がなく、スクイズがきつめにかかる
- エアを出し入れする量が多くなるので、ドライスーツの基礎スキルが必須
- スーツ自体に保温力がない
- 厚手のインナーが陸上で暑く感じることがある
- 素材が薄いため、スーツ内が結露することがある
特徴を徹底解説!その2
ネオプレンタイプドライスーツ
ーー続いて、ネオプレンタイプドライスーツの特徴としては、どのようなことが挙げられますか? こちらは一般ダイバーにもおなじみのタイプかと思いますが。
高橋さん
体型に合ったオーダーメイドの1着を作れる点が大きなメリットです。体にフィットし、素材自体に伸縮性もあるため、水中でのエアーコントロールがしやすいので、初心者からベテランダイバーまでおすすめできます。
また、生地やデザインのバリエーションが豊富なため、お気に入りのカラーでのコーディネイトや、コストを低価格に抑えたモデルを選ぶことも可能です。撥水性と耐久性に優れたソフトラジアル素材も人気ですよ。
高橋さん
さらに、素材のネオプレンゴムの中には気泡があるため、スーツ自体に保温力があるのも長所です。
インナーはシェルドライほど厚みのあるものは必要ありませんので、水温に合わせるだけでなく、陸上の気温にも合わせてインナーを調整できます。
特に梅雨時期の気温が高めで水温がまだ上がっていない時期など、調整しやすいのは魅力的です。
<メリット>
- エアーコントロールがしやすく、初心者~ベテラン向き
- カラーやデザインのバリエーションが豊富
- リーズナブルなモデルをチョイスできる
- スーツ自体に保温力があるので、薄手のインナーでも潜れる
- 多少の体型の変化なら、サイズ調整修理ができる
<デメリット>
- 水中でスーツの浮力が変化するので、こまめな浮力コントロールが必要
- 背中ファスナーの開閉にサポートが必要
- シェルドライと比較して重さがある
ズバリ!シェルドライとネオプレン
どちらを選ぶべきか!?
ーーそれぞれの特徴を伺ったところで、ズバリお伺いします……シェルドライとネオプレン、どちらを選んだらいいのでしょうか!?
高橋さん
なかなか難しい質問ですね……(笑)
一概には言えませんが、ドライでのダイビング経験があまりなくて、これから初めて購入するという方は、ネオプレンが扱いやすいと思います。
体型にフィットしたものをオーダーできるので、水中で出し入れするエアの量が少なくてすみ、エアーコントロールがしやすいですからね。
また、カラーやデザインのラインナップが豊富なので、自分だけの1着をオーダーメイドしたり、リーズナブルな価格を優先したりと、選択肢が豊富なのも長所です。
薄手のインナーで潜れて、陸上での調整も可能なので、日本の気候には非常に適していると思います。
また、着用する際にファスナーを閉めればおしまい、という手軽さも魅力的です。
ーーシェルドライ愛用者はどんなダイバーなのでしょう?
高橋さん
シェルドライは、テクニカルダイバーやベテランダイバーから支持されています。その理由は3つあります。
1つめは、素材が薄くて軽く、水中・陸上とも動きやすい点です。特にスーツ自体の浮力変化がないため、深度コントロールをしっかり取るようなダイビングには最適です。
2つめは、素材の変化がしにくい点です。ネオプレンゴムは水圧を受けて気泡が収縮と膨張を繰り返すため、毎日のように潜水を繰り返すダイバーの場合は、ゴムがヘタって潰れてしまうのです。シェルの素材は気泡がないため、水圧の変化を受けず、素材の厚みが変化しません。なのでディープダイビングや大深度潜水に非常に有効です。
3つめは、厚手のインナーを着込める点です。インナーでの調整幅が非常に広いので、着込んで低水温にも対応でき、水温が高ければインナーを減らし、ウエイトも少なくして潜れるのも魅力的です。フォト派ダイバーやさまざまな環境で潜るテクニカルダイバーには、特におすすめです。
ーーなるほど、1着目はネオプレンで、2着目はシェルドライという選択肢もありそうですね!
高橋さん
ちなみに、適正ウエイトについては、弊社のネオプレンと専用インナー“サーマルボディスムーサー”を着用した場合と、シェルドライ専用インナー“ボディ・ヒート・ガード”を着用した場合で比較して、ほとんど変わりません。
耐久性についてはシェルドライとネオプレンぞれぞれ、1年間に30本ほどドライで潜るとすれば、きちんとメンテナンスをすれば5~10年間は使い続けられます。
スーツの性能には絶対の自信
ワールドダイブのこだわり
ーー最後に、ワールドダイブさんのスーツへのこだわりを教えてください。
高橋さん
ダイビングスーツ専門メーカーとして、ウエットスーツとドライスーツの品質には絶対の自信を持っています。
スーツの製造はすべて自社工場で、熟練スタッフが手作業で行っています。
さらに、それらのすべての商品は、企画開発から製造、メンテナンスまで一貫して自社で行っています。
メンテナンスを行うことにより、スーツの傷みや故障を製品開発にフィードバックしながら、より良いスーツ作りを目指しています。メンテナンスで戻ってきた製品から、たくさんの答えやヒントが返ってくる、そう考えていますね。
特にシェルドライについては、国内で製造からメンテナンスまで一貫してできるメーカーは非常に稀です。
弊社のアルティメイトクロスという特殊なゴムをラミネートしてある生地のドライスーツで、国内製造は弊社だけです。
日本人の体型に合わせて日本の海に合ったシェルドライスーツ作りを心がけています。
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特徴を★で比較!
シェルドライvsネオプレンまとめ
ワールドダイブさんに伺ったお話を基に、シェルドライとネオプレンの特徴をオーシャナ目線でまとめました。
新しくドライスーツを買おうと思っている方も、そろそろ買い替えを検討しているなんて方も、こちらを参考に自分に合ったドライスーツを選んでください!
シェルドライ ★☆☆
ネオプレンはスーツ自体に保温力があるため、水温がそれほど低くなければ薄手のインナーで潜ることができます。シェルドライはスーツ自体に保温力がないので、インナーを厚手にして防寒します。水底で被写体をじっと狙うようなフォト派ダイバーは、インナーを何枚も着込めるシェルドライがおすすめです。
【浮力コントロールのしやすさ】
シェルドライ ★☆☆
ドライはスーツの中にエアを入れて保温するシステムのため、水中でのエアコントロール技術が必須です。初心者におすすめなのはエアを出し入れする量が少なく済むネオプレンですが、中〜上級者でドライの基礎スキルがあれば、シェルドライでも問題はありません。
【水中での動きやすさ】
シェルドライ ★★★
エアのコントロールに問題がなければ、動きやすいのは素材が薄くて軽いシェルです。適正ウエイトについては、素材が厚くインナーが薄手で済むネオプレンと、素材が薄くインナーが厚手になるシェルドライとで、それほど変わりません。
【陸上での脱ぎ着のしやすさ】
シェルドライ ★★☆
ネオプレンは背中にファスナーが施されているタイプが一般的なため、ファスナーを開閉する際にバディのサポートが必要です。シェルドライはフロントファスナーが採用されているので1人で開閉ができますが、身体にフィットさせるために腹部や足のベルトを留める作業が必要です。
【デザイン性】
シェルドライ ★★☆
ネオプレンは表生地と裏生地のバリエーションが豊富です。カッティングの自由度も高いので、ウエットのように好みの色やデザインでオーダーメイドが可能です。シェルドライはカラーやデザインが限られています。
【耐久性】
シェルドライ ★★★
レジャーダイビングの範囲なら耐久性はほぼ変わらないと考えていいでしょう。1年に30本ほどドライで潜るダイバーであれば、きちんとメンテナンスをすれば、10年間で300本くらいまで使い続けられます。潜水頻度の高いプロダイバーは、水圧による素材の傷みが少ないシェルがおすすめです。ワールドダイブの“オール・シェル・ドライスーツ”は、1.5年で約800本のダイビングに耐えた実績を持っています。
※扱い方により、ピンホールが空くのはネオプレンもシェルドライも同じなので、取り扱いにはご注意を。
【価格】
シェルドライ ★☆☆
バリエーションが豊かなネオプレンは安価なモデルも販売されています。ワールドダイブ製品での定価の目安として、ネオプレンは13〜32万円代。シェルドライは27〜36万円代。ネオプレンの専用インナーは薄手上下が1万円代、厚手上下が2万円代。シェルドライ専用インナーはワンピースとツーピース上下が3万円代です。
▶ワールドダイブのドライスーツ&インナーをチェックする
【総評】
- 初心者であれば、浮力コントロールがしやすく安価なモデルも販売されているネオプレンがおすすめ
- ドライのスキルに不安がなく、「多少高価でもいいモノを大切に使いたい」と考えるならシェルドライを選ぶのも一案
- 潜る頻度が多いベテランダイバーや長く潜るフォト派ダイバー、テクニカルダイバーには、シェルドライが重宝!
Sponsored by ワールドダイブ
「あらゆる環境で快適なダイビングライフをお届けすること」をモットーに、国内生産にこだわり、自社工場でスーツを製造している総合スーツメーカー。設計、素材、装備、そして技術のすべてにおいて、現在得られる最上のクオリティで仕上げ、その名の通り世界の海で通用するスーツを作り上げている。
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